日本代表MFが示す基準「サボったりしたら」 欧州強豪で絶好調も“不動心”「魅せようとかじゃなくて」

好調のフライブルクを牽引する鈴木唯人
鈴木唯人、後藤啓介、山本理仁、長田澪が所属するフライブルクは、今季4節を終えた段階で3勝1分の3位と好スタートを切っている。ファンや識者からは「CL出場争いに絡んでくる」と称賛の声が集まるなか、選手、監督・コーチ、スタッフはみな謙虚さを見失ってはいない。
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5-0で快勝した第3節ボルシアMG戦後にも、鈴木唯人に浮かれた様子はまるでなかった。
「少しでもみんながやるべきことをやらなかったり、とか、ちょっとサボったりしたら、結果もすぐに変わってしまうと思うので。やることを続けていかないといけないのかなと思っています」
ハードワークをする。規律正しくプレーする。チーム戦術のタスクを忠実に遂行する。攻守の切り替えを速くする。裏のスペースを積極的に狙う。セカンドボールを自分たちのものにする。
言葉だけを並べれば、特別なことには聞こえない。おそらく、どのクラブの選手や監督に聞いても、似たような答えが返ってくるだろう。
だが、重要なのは「何をするか」だけではないのだ。
どれだけのインテンシティでやるのか。具体的にどこのスペースを、どのように使うのか。どこを、どのように守るのか。そのために誰がどこまで走らなければならないのか。「競り合いに強く」とは、実際にどんな結果を導くために、どんなアプローチでやらなければならないのか。
そこまでが明確になっているからこそ、一人ひとりのプレーがチームとしてつながっていく。フライブルクの強さは、個々の選手が頑張っていることだけではない。「やるべきこと」の基準が共有され、それを高いレベルで繰り返していることにある。
鈴木は、そんな環境を実際にピッチの中からどう感じているのか。
「そうですね。みんな、もちろんミスをすることもありますし、うまくいかないこともあります。でも、その都度、その都度、次のプレーに対してポジティブにやろうというのは、プレシーズンから監督にすごく言われていることです。頑張ることをベースにして、ボール保持のところでも、みんながちゃんとサポートしに行く。そして、みんなが隠れずにプレーする。そういうことを続けている結果が、ボール保持にもつながっているし、チャンスメイクにもつながっているのかなと思います」
誰かに依存するのではなく、互いの力を引き出しあいながら、チームとして戦う。そこにフライブルクの強さがある。この「やることをやる」というスタンダードレベルがフライブルクはすごく高いし、今季はそれがさらに高いレベルで安定しているように感じられる。
数字を見ても、それは表れている。
フライブルクは今季、ここまでリーグで最も得点者が多いクラブとなっている。リーグ戦では鈴木が4ゴール、クロアチア代表FWイゴール・マタノビッチが3ゴールと、2人とも得点源と言える活躍を見せている一方で、カップ戦とカンファレンスリーグ・プレーオフの2試合を含めれば、ここまでの公式戦7試合で実に11選手がゴールネットを揺らしている。
GKの長田澪も、現在のフライブルクについてこう話していたのが印象的だ。
「フライブルクというクラブのシステムが今うまくいっているなという感じがします。戦術面でも、スタッフの部分でも、選手の試合への準備でも、個人個人のパフォーマンスでも、今すごくうまくいっている状態だと思います」
そのクオリティは、続く第4節フランクフルト戦でも随所に見られた。相手に先行を許しながらも、最終的には2-2。開幕からの無敗を維持し、3勝1分という好スタートを切った。
「もちろん今日も勝ちたかったですけど、この4試合、この7試合ですかね、毎試合いい戦いができているかというとそういうわけではない。自分たちがミスした後だったり、うまくいかないときのリアクションがとても、こういう結果につながっているのかなと思います。今日も前半は何とも言えない感じでしたけど、後半は切り替えて。監督からも口酸っぱく、『次のアクション大事だぞ』というのは言われているので、それをみんなが表現できたかと思います」
鈴木の言葉を象徴したのが、後半開始直後の同点ゴールだった。1-2で迎えた後半、鈴木が見事なダイレクトボレーシュートを決める。チームに流れを引き戻す一撃だった。
「1-2で負けている状態で折り返しましたけど、チームが求められているマッチプランを遂行すれば必ずチャンスはくるというのはずっと思っていたので。シュートシーンは最近ずっとひたすらシュート練習をしているので、特別何も考えずに練習通りうまく決められたかなと思います」
今季のフライブルクは、ドルトムント、バイエルンに次ぐ3位という位置で代表週間を迎えた。鈴木自身もリーグ戦4ゴールと結果を残している。ただ、本人の視線は常に先にある。ワールドカップを終えて次の代表活動に入ることになっても、そこに気負いはない。焦りもない。
「ここでやっていることと変わらないです。いいプレーとか魅せようとかじゃなくて、シンプルに戦っている姿を見せられたらいいなと思うし、そうしたら自ずと自分の良さが出てくるのかなと思うので。切り替えて準備してやりたいと思います」
環境が人を育てる。鈴木が語っていた「やることを続ける」という言葉には、現在のフライブルクが好調を維持している理由と、そこで成長を続ける鈴木の今が重なっているのだ。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。






















