大学で得点量産も「Jで取らないと意味ない」 受けたプロの洗礼…全国で証明する「期待できる」

国士舘大の本間凜【写真:安藤隆人】
国士舘大の本間凜【写真:安藤隆人】

国士舘大の絶対的エース本間凜「J1のCBの選手たちは自由に動かしてくれない」

 9月2日から12日にかけて東北の地で行われている、大学サッカー日本一を決める第50回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント。ここではこの大会で躍動する選手に迫っていく。

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 準決勝で東海学園大を3-2で振り切り、4大会ぶりの決勝進出を決めた国士舘大。絶対的なエースストライカー・本間凜が今、眩い輝きを放っている――。

 総理大臣杯は今まさに「本間凜の大会」になろうとしている。

 川崎フロンターレ入りが内定し、大会直前にはJ1リーグデビューを含む2試合に出場した本間は、1回戦からエンジン全開だった。初戦のIPU・環太平洋大戦、0-1の1点ビハインドで迎えた後半アディショナルタイムに劇的同点弾を叩き込み、PK戦での勝利を手にすると、2回戦の大阪学院大戦でもゴールをマーク。準々決勝の桐蔭横浜大戦では圧巻のハットトリック、そして準決勝の東海学園大戦でも2ゴール。4戦連発かつ得点ランキングトップをひた走る7ゴールと、量産態勢に入っている。

 なぜ彼は今、これほどまでにゴールを重ねているのか。その答えを紐解いていくと、大会直前に経験したプロの舞台へとたどり着く。

 今季J1リーグ第3節のサンフレッチェ広島戦で後半28分にFWラザル・ロマニッチに代わり投入されてデビューを飾ると、第4節のジェフユナイテッド千葉戦では後半12分からピッチに立った。

 プレー時間は2試合合わせて約50分とアディショナルタイム。この時間でプロとしての手応えを掴んだから、大学に戻って自信を持ってプレーできているわけではない。

 むしろその逆で、この約50分間で突きつけられた厳しいプロの現実が、本間をもう一度自分自身と向き合わせ、今大会の大爆発へとつながっていたのだった。

「僕にとってあの2試合の経験は自分の人生を変えた出来事だったと受け止めています。2試合を通じて、フロンターレのファン・サポーターの皆さんが期待しているゴールという結果を得られなかったですし、正直、満足のいくプレーを見せられませんでした。中には『本間凜ってあんなもんか』と思われてしまったと思います。それが本当に悔しくて、悔しくて、ただ大学に戻るんじゃなくて、総理大臣杯で圧倒的な結果を残して、『やっぱりあいつは期待できる』と思ってもらえるようにしたいんです」

 ただ意地を見せているわけではない。彼はあの2試合で「具体的に何ができなかったのか」を冷静に分析して、自らのプレーに落とし込んでいる。

 彼が衝撃を受けたのが広島のCB荒木隼人と千葉のCB河野貴志だった。2人に共通していたのは、本間が狙ったスペースに飛び込もうとすると、「待ってました」とばかりに身体を当ててきたり、寸前でコースを消しに来たりと、巧妙に罠を仕掛けてくるプレーだった。

「チャンスとなるスペースは見えているのに、飛び込む瞬間に捕まってしまい動けないんです。荒木選手にはスペースに走ろうとした瞬間に押されて、バランスを崩してしまった。そのシーンはパスこそ来なかったのですが、自分の中ではチャンスだと思って走り込もうとしたので、正直『読まれていたんだ』と驚きました。河野選手はMF伊藤達哉選手からふんわり気味のアーリークロスが届いた時に、いつものように胸トラップをして収めようとしたら、その瞬間に寄せられて潰されて、結局ボールに触れないまま相手GKに渡ってしまった。J1のCBの選手たちは自由に動かしてくれないんだと感じました」

 自分ではスペースを見つけ、相手を外しているつもりだった。しかし実際には、相手に誘導されていた。大学では感覚的にできていたプレーが、プロでは通用しない。

「収める部分や、走るタイミング、クロスに入るタイミングなど、何もかもがこれまで自分がやってきたものがうまくいかなかった印象が残りました」

 その現実を突きつけられたからこそ、本間は大学へ戻ってから「点を取る」だけではなく、「どうやって点を取るのか」を改めて見つめ直した。相手CBは何を考えているのか。どこへ誘導しようとしているのか。その意図を読み取ったうえで、どう相手を動かし、自分が先手を取るのかを考えた。

「相手のCBをどう崩すか、どう駆け引きするかを大学でもう一度見つめ直して、成長につなげたいという気持ちでこの大会に臨めた。その部分が今回、ゴールという形で表れていると思います」

 だからこそ、準決勝の2ゴールは象徴的だった。1-1で迎えた後半34分、本間は右からクサビのパスを受けると、右ワイドに張り出した途中出場のFW村上竜規へパス。ドリブル突破を仕掛ける村上のプレーを見ながら、目の前にいる3人のDFを視野に入れ、ゴール前へダッシュ。村上がエンドライン手前で切り返すと、一度止まってCBの視野から消えてから空いた場所へ顔を出し、マイナスのクロスを右足ダイレクトでゴール左隅に蹴り込んだ。

「村上が切り返した時に相手が2人くらい食いついてくれたので、僕はマイナスの位置で待って、ボールが来たら決めるだけだった」

 駆け引きを制したのは決勝弾も同じだった。2-2で迎えた後半44分、途中出場のMF川原良介が左サイドを突破すると、左足からのクロスに対してニアへ飛び込み、ドンピシャヘッドで決勝弾を叩き込んだ。このシーン、左サイドに展開した際、中央では本間にこの試合ずっとマンマークとしてついていた東海学園大CB中地奎人の密着マークに遭っていた。

 だが、川原が左サイドで相手DFを振り切ってクロスを上げる瞬間、中地の死角に潜り込んだ本間は、飛び込む直前に中地に身体を当ててバランスを崩させてから、ニアのスペースへ加速。完全にマークを外して前に出た状態からヘディングで合わせた。

「立ち上がりから最後までずっと中地選手がマンマークをしてきて、技術のあるCBだったので、常に『どうやって外そうか』と考えながらプレーをしていました。相手にはもう1人、CB大磯竜輝選手(名古屋グランパス内定)もいたので、駆け引きは難しかったけど、常に考えながらプレーできたと思います」

 相手に動かされる側から、相手を動かす側へ。

 ほろ苦いプロでの2試合の経験が彼の意識を大きく変化させたことで、この爆発へとつながっている。ただ、本間自身はこれで何かを証明したとは思っていない。

「ファン・サポーターの人たちは『大学だけで、J1で取らないと意味がないよ』と思っていると思う。それはいい意味で自分へのプレッシャーになっています」

 まずは流通経済大との決勝戦が待っている。総理大臣杯を本当の意味で「本間凜の大会」にするために。そしてその先、川崎のサポーターに認められるストライカーになるために――。

 本間は目の前の決勝で、大学日本一とチームを勝利に導く5戦連発弾を貪欲に狙う。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

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