広島の大物助っ人は「間違いなく別格」 最前線で見せた真価…際立った“攻撃のリズム”「生き生きする」

浦和戦で移籍後初ゴールのFWアレー
判断の質の高さ。それが浦和レッズ戦のセバスティアン・アレーを表現するときの、最も正確な言葉かもしれない。
サンフレッチェ広島は、第2節の浦和戦で4得点を奪って快勝を収めた。浦和が仕掛ける前線からのハードプレスを巧みなパスワークでかわし、素晴らしい崩しからゴールを積み重ねて連勝を飾った。
この試合、2得点を奪った鈴木章斗やクラブ最年長ゴールを更新した塩谷司、攻守に存在感を放った川辺駿、中島洋太郎ら目立った選手が多かった中、ひときわ違いを生んでいたのが最前線に起用されたアレーだった。移籍後初ゴールは大きな成果だが、それ以上に際立っていたのは1つ1つのプレー選択の精度だ。
すぐに前を向くべきなのか、いったん時間を作るのか。裏のスペースを突くべきか、サイドに展開すべきか。局面ごとに求められる答えを、アレーは迷いなく選び続けていた。浦和戦後、ボランチで前線の動きを見ていた川辺が口にしたのはアレーへの称賛だった。
「懐の深さ、リーチの長さというのは、やっぱりこのリーグでは間違いなく別格だと思う。自分たちにとってはすごくいいオプションというか、周りがすごく生き生きする選手だなと。もちろん、本人にとって今日ゴールを取れたのはすごく大きいですけど、ゴールがなくても自分たちにとって必要な、重要な選手だなと感じています」
前線でボールを収める外国籍ストライカーは数多くいる。しかし川辺が強調したのは、単に体を張れるということではなく、味方が「生き生きする」という周囲への波及効果。アレーが時間を作ることで、後方からボランチやサイドバックが飛び出すスペースが生まれ、チーム全体の攻撃にリズムが作られる。
1点目のシーンも、まさにアレーの状況判断の的確さが光った。左寄りの少し落ちたところでボールを受けたアレーは、簡単にボールを離すのではなく、ターンして急がずに右サイドへと展開。そこから流れるようにボールが動き、最終的には川辺のクロスから鈴木章斗のゴールが決まった。
「(厳しくても)ファウルをもらってくれますし、自分たちが足元に来てほしいタイミングではすごく足元にくる。クロスに入ってほしいタイミングではやっぱり危険なところにいる。コンディションが上がれば、もっとパフォーマンスも上がると思うし、ゴールもたくさん取れると思う。時間は必要だと思いますけど、この2試合で見せたものも十分自分たちにとっては大きいかなと思います」
局面局面で、いまチームにとって必要な最善策を取る。そういったプレーからも、まだコンディションが100%ではない中で、伸びしろを残しながらすでにチームに欠かせない存在になりつつあることがうかがえる。アレーのサッカーに対する理解度の高さには、川辺も称賛の言葉を惜しまない。
「サッカーをすごく理解していると感じます。自分で全部やろうという気もない。やはりレベルの高いチームにいたと思うし、レベルの高い環境でやっていたからこそ、いいサポートをすれば周りを簡単に使ってくれる。そういったものによって自分も前向きでサポートに行けるし、(鈴木)章斗や(加藤)陸次樹といった周りの選手も間違いなくゴールに近づけると思う。出た中ですごくよくやってくれたと思います」
自分ですべてを完結しようとしない。そこにアレーというストライカー像が凝縮されている。個で局面を打開する能力を持ちながら、あえて周囲を使う選択が取れるからこそ周りの選手たちの推進力を引き出すことにつながっているのだ。
浦和戦での初ゴールは、一つの結果に過ぎない。真価は、ゴールという数字に表れない部分、味方のために時間を作り、正しい判断を積み重ねる姿勢にこそある。開幕から2試合、アレーが広島にもたらしているものは、すでにチームメイトの言葉が雄弁に物語っている。

林 遼平
はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。






















