148cm→大型アタッカーに変貌「本当に悩んだ」 身長33センチ増も…地元で誓った「ここからです」

山梨学院の疋田将【写真:安藤隆人】
山梨学院の疋田将【写真:安藤隆人】

山梨学院の3年生FW疋田将

 夏を超えて強くなる―。

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 これから始まるリーグ後半戦、そしてその先の全国高校サッカー選手権予選などを見据えて、各チームは遠征を繰り返しながらチームと個人の強化を行っている。ここでは『成長の夏』を誓う高校生たちにスポットを当てていきたい。

 今回は8月6日から10日にかけて石川県で開催された和倉ユースサッカー大会に出場した山梨学院の3年生FW疋田将について。

 石川県小松市出身の疋田にとって、この大会には特別な思いがあった。

 小学生時代は地元の苗代スポーツ少年団SCでプレーし、ドリブルで相手を次々と交わしていくプレースタイルで、石川県トレセン、北信越トレセンに選ばれると、中学進学と同時に故郷と親元を離れてJFAアカデミー福島U-15 EASTへ。見知らぬ土地で寮生活をスタートさせた。

 当時の身長はわずか148cm。大きな期待を胸に福島へ向かったが、待っていたのは苦しい日々だった。

「中学の頃はなかなか試合に出られませんでした。親や地元の指導者の人たちに送り出してもらって行ったのに全然出られなくて、本当にきつかったです」

 身長も中学卒業時には170cmにまで伸びたことで、「ドリブルする時の目線が変わって、戸惑うことも多かった」と、足の長さ、ボールとの距離、相手との間合いなど小さな身体で染み込ませてきた感覚を、新しい身体で作り直さなければならなかった。さらに周りも身体的に成長を遂げたことで当たり負けをするようになるなど、いつしか得意のドリブルも思うように通用しなくなった。

 全体的にプレーの強度や迫力などのインパクトが足りず、ベンチで試合を見つめる時間が続く中で卒業の時を迎えた。

「本当に悔しい気持ちがあったので、『このままじゃ終われない。絶対に見返してやる』と思って高校も県外のところに行きました」

 もう一度、地元ではない環境で這い上がるために。疋田が選んだのは山梨学院高だった。

「自分に足りないのはプレー強度。フィジカルコンタクトに負けない強さだったり、空中戦で競り勝てる強さだったり、そこをここなら身につけられると思った」と、自らの課題に向き合った上で進路を決めた。

 だが、ここで思わぬ形で苦しむことになる。高校1年生から2年生にかけて、身長が急激に伸び、170cmから180cmにまで伸びた。それによりまたドリブルの際の目線が変わり、さらに180cmオーバーとなったことで、イメージと身体操作をアジャストさせる作業に戸惑った。

「フィジカルもついてきて、空中戦も自信がついてきたのですが、そこでボールを持つ感覚がまた変わってしまって…。本当にまた悩みました」

 高校2年生の序盤からAチームに入ったものの、夏にBチームへ降格してしまったことから、ずっと楽しみにしていた昨年度の和倉ユースに参加することができなかった。だが、Aチームが自分の故郷でプレーする中、疋田は別の場所でAチームに返り咲くことを心に誓って努力を重ねた。

 すると181cmまで伸びたサイズに徐々に身体操作がスムーズについてくるようになり、得意のドリブルはよりスピードとキレ、パワーと迫力がついて、破壊力を持った武器になるようになった。

「1対1になったら迷わず仕掛ける。チャンスがあったら迷わず狙う。パワーが出てきたことで、そこを意識するようになりました」

 左サイドから鋭い縦突破、カットインからのシュートなどチャンスを作り出せるようになった疋田は、念願のAチームに返り咲くと、昨年度の選手権ではラストナンバーとなる30番を背負い、途中出場だが全2試合に出場。2回戦の尚志戦では左からのグラウンダーのクロスに反応し、ペナルティーエリア内から後ろから飛んでくる難しいボールをダイレクトで左足シュート。ゴール中央に突き刺して全国初ゴールを奪った(試合は1-2の敗戦)。

 今年はレギュラーに定着。インターハイでも背番号11を託された。身長の変遷の中で苦しみながらも成長を遂げてきた。

 身体能力と自分の磨いて聞いた武器がアジャストしたこの夏、和倉ユースに不動の主軸として念願の地元への凱旋を果たすことができた。

 昨年出場できなかった悔しさを晴らすかのように、恩師などが見つめる中、彼は左サイドから何度も鋭い突破を見せ、カットインからのゴール、裏抜けからのチャンスメイクと大きな躍動を見せた。

「本当に和倉ユースでプレーできて嬉しかったです。小学生時代のコーチと話をして、アドバイスもたくさんもらえた。小学生の時は本当に心からサッカーを楽しんでやっていたので、『楽しめているか?』と聞かれて、『楽しんでやればお前の良さは出るよ』と言われた時は本当に嬉しかったですし、これからの大事な言葉になりました」

 148cmで石川県を飛び出した少年は、181cmになって地元のピッチに戻ってきた。愛する地元でさらに成長するきっかけをもらった疋田には、まだまだやらなければならないことがある。

 それはプリンス関東1部の後期で勝ち点を積み重ねて、悲願のプレミアリーグ昇格を後輩たちにもたらすことと、昨年ベスト16に終わった選手権で国立競技場まで駆け上がること。そこでもっと逞しくなった姿を見せないといけない。

「ここからです。いい刺激をもらえたので、ここからさらに成長します」

 未来へ。石川県から始まった疋田将の物語は、再び石川県から大きく動き出そうとしている―。

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

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