15人退団の浦和は“少数精鋭”で乗り切る? 若い世代が台頭なるか…必要な曺貴裁スタイルの浸透

新たなスタートを切った浦和レッズ【写真:元川悦子】
新たなスタートを切った浦和レッズ【写真:元川悦子】

曺貴裁監督を新たに招聘した浦和

 2026年J1百年構想リーグの間にマチェイ・スコルジャ監督の契約解除、田中達也暫定監督(現U-21監督)就任という混乱が起きた浦和レッズ。その大会を12位という不本意な結果で終え、新たなスタートを切るべく、クラブOBの曺貴裁監督を招聘し、勝負の26-27シーズンに向かっている。

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 その浦和に関しては、今オフ期間に15人もの退団選手が出たことが大きな話題となった。30代の中島翔哉、牲川歩見(磐田)、関根貴大(シドニーFC)、イサーク・キーセ・テリン、柴戸海が相次いでチームを離れ、主力級だった松尾佑介(町田)、荻原拓也(ルーヴェン)、石原広教(FC東京)も移籍。特にサイドバック(SB)の人材流出が顕著なようにも映る。

 ただ、浦和の場合、2025年にFIFAクラブワールドカップ(FCWC)があって、通常より多めの陣容を揃えていた。そこで結果が出ず、百年構想リーグでもAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を獲得できなかったため、新シーズンは国内タイトルのみ。となれば、自ずと戦力を精査し、整理しなければならなかったのは確かだ。

 現在の登録人数が27人というのは少ない印象も拭えないが、「30人程度いれば、十分戦える」という考え方もある模様。ここから8月にかけて数人の補強が進むとは見られるが、基本的には「少数精鋭で戦っていく」という意向なのだろう。

 田中達也監督率いるU-21チームも本格始動し、そこで伸びてきた人材をトップに引き上げることも可能なはず。いずれにしても、今季の浦和は若い世代の成長が強く求められる状況なのだ。

 こうした中、7月17日のFC琉球戦で2026年1月入団の肥田野蓮司がゴールを奪い、さらに21日の藤枝MYFC戦でFC今治から加入した19歳・笹修大も得点を挙げたのは朗報と言っていい。肥田野はプロ入り後半年ながら「自分がチームを引っ張っていく」という意識を鮮明にしている。

 4-5で苦杯を喫した琉球戦の後、肥田野は「個人のクオリティだったり、やる気次第でチーム完成度は変わる。今回はそれを出せなかったですし、プロとしてないことをしてしまったと思います」と真正面から反省の弁を口にした。百年構想リーグの間もこういった発言はよく聞かれたが、彼はルーキーイヤーにも関わらず「自分が浦和を勝たせられる存在にならなければいけない」という強い自覚を持ってプレーしている。それはパッションを重視する曺監督にとっても心強い要素と言えるのではないか。

 その肥田野も含め若手には期待したいが、ガンバ大阪から完全移籍してきた南野遥海も見逃せない存在。百年構想リーグでは7ゴールを挙げ、ACL2のファイナル・アルナスル戦で後半から出場し、クリスティアーノ・ロナウド擁する強敵に真っ向からぶつかった経験値を持つ22歳のアタッカーというのは、日本国内を探してもそうそういない。

 ガンバとしても新シーズンはエース級の働きを期待していたはずだが、本人は「自分としては何かを変えたかった」と変化の必要性を感じ、あえて日本一のビッグクラブに赴くことを決めたという。その覚悟と決意は浦和の若手世代に大きな刺激を与えるはずだ。

 今の南野は4-3-3のインサイドハーフに挑戦中。これまでは最前線がメインだったため、まだやるべきことを全て整理できているわけではないようだ。それでも「ボールを引き出してチャンスメークするところは自分自身、もう少しやらなければいけないところ」と成長ポイントを明確にして、沖縄キャンプに取り組んでいる。そのガツガツした姿勢は浦和生え抜きの早川隼平、和田武士らにも好影響を及ぼすのではないか。ここからの彼らの変化も注視していきたい。

 一方、冒頭で少し触れたSBに目を向けると、即戦力の林幸多郎がFC町田ゼルビアから加入。昨季までの主軸の1人である長沼洋一とともに左右のサイドを担うことになりそうだ。彼らは計算できる人材で、チーム作りを進めやすいが、万が一の事態が起きた時、バックアップが手薄という課題もある。

 その穴を埋めるのは左右のSBをこなせる万能型の片山瑛一、センターバック(CB)兼務のダニーロ・ボザ、工藤孝太らになりそうだが、工藤に関してはまだ戸惑いがある様子だった。そういった面々を育てながら、選手層を厚くしていくことが、曺監督に託された1つのテーマ。若手育成には定評がある指揮官の手腕が楽しみだ。

 ボランチも柴戸の退団でやはり手薄になってしまっている。ただ、サミュエル・グスタフソン、安居海渡、植木楓の3枚は確実にアンカーをこなせる。インサイドハーフもマテウス・サヴィオ、渡邊凌磨、南野、笹、早川、和田など興味深い選手が揃っている。

 百年構想リーグ途中まで指揮を執っていたスコルジャ監督は手堅い選手起用が目立ち、若い選手になかなかチャンスを与えなかったが、曺監督は自ずから成長途上のタレントを抜擢せざるを得なくなる。もちろんそこにはリスクもあるし、すぐに大躍進できるとも限らないが、可能性は大いにある。そういうフレッシュな浦和を見られることをむしろ前向きに捉えてもいいのではないか。

 得点を担う最前線のところは小森飛絢が絶好調。今季は彼がエース級としてブレイクしそうな予感がある。彼を軸として両ワイドにオナイウ阿道、肥田野、金子拓郎、水沼宏太らが陣取ることになりそうで、コンビネーションに磨きがかかればゴール数も伸びていくだろう。

 百年構想リーグの浦和はEAST・18試合の最多得点者が4点の肥田野で、3点の小森と渡邊がそこに続く形だった。が、それでは明らかに数字が足りない。今季は得点王争いをする選手が出てこないと上位浮上は難しい。その有力候補が小森なのは確かだが、オナイウや肥田野、南野、それ以外のアタッカー陣にもより得点意識を鮮明にしてほしい。

 いずれにしても、新シーズンまで開幕まで2週間あまり。今週26日には沖縄キャンプを打ち上げて、地元に戻ってくる。その時点で浦和が曺監督の色にどこまで染まっているかが大いに気になる。本当の勝負はここからだ。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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