新監督が強調「重みが分かっていない」 託された名門復活…タレント力は随一も「負け癖が」

秋葉新監督が率いる磐田
8月7日に幕を開ける26-27シーズン・Jリーグ。90年代から2000年代頭にかけて圧倒的な強さを誇ったジュビロ磐田は2024年以来となるJ1復帰を賭けてJ2に挑むことになる。
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2020年代突入後、2度の昇格と降格を繰り返し、2026年J2・J3百年構想リーグではまさかの32位に沈んだ名門クラブの危機感は相当なものがあるはず。今季は2025年まで隣の清水エスパルスを率いた秋葉忠宏監督を招聘。指揮官と清水、ヴィッセル神戸で共闘していた乾貴士、FC東京で実績を積み上げた野澤零温、横浜FCの主力だったユーリ・ララ、助っ人ブラジル人のイアゴ・テレス、ジョアン・ヴィクトルらを大量補強し、勝負のシーズンに挑もうとしている。
彼らはまず7月3日~14日にかけて沖縄県糸満市で第1次キャンプを実施。秋葉監督が目指す前線からアグレッシブにボールを奪いに行くゲーゲンプレッシングの基本コンセプトを叩き込んだ。
そのうえで、17日からスタートした静岡県御前崎での第2次キャンプでは攻撃の積み上げに取り組もうとしているが、J1昇格のライバルであるヴァンフォーレ甲府との19日のトレーニングマッチ(45+30分×2本)は2-4の敗戦。指揮官が「ワンプレーの重みが分かっていない。こんなチームがチャンピオンになるわけがない」と怒りをにじませる厳しい事態に直面しているのだ。
この試合では、3-4-2-1システムをベースにしつつ、可変スタイルを採ってきた相手の流動的な戦い方への戸惑いが見受けられた。
新戦力FWの太田龍之介も「相手が3枚だったんですけど、ボランチが1枚落ちてきた時、自分たちは『相手は3枚』という意識が強くて、そこへの適応にちょっと時間がかかったかなと。相手が可変でやってくる中、自分たちのプレッシングも可変でやっていかないと、この先、こうなってしまう試合も増えてくると思います」と反省の弁を口にした。
そういった課題に加え、主導権を握って攻めながら決定機を外したり、せっかく得たPKを外したりという拙攻が目立った。百年構想リーグを振り返っても、磐田の18試合の総得点は16で、J2・J3EAST-Bで最下位だったAC長野パルセイロの15に次ぐ少なさだった。
その半年間でチーム最多得点の5ゴールを挙げたグスタボ・シルバが昨季限りで退団。3ゴールを奪ったマテウス・ペイショット、2ゴールだった佐藤凌我、渡邊りょうは残っているものの、現状では明らかに得点力が足りていない。
新戦力の太田は練習試合4戦連続ゴールと前向きな印象を残しているが、それ以外のイアゴ・テレス、まだ合流したばかりのジョアン・ヴィクトルらがどこまでゴール数を伸ばせるかが今後の命運を左右する。
イアゴ・テレスは沖縄合宿のザスパ群馬戦で好印象を残し、徐々に適応が進んでいると見られるが、彼やマテウス・ペイショットを筆頭にアタッカー陣全体が開幕までに状態を引き上げ、数多くの得点を奪えるような状況に持っていくことが重要だ。
2列目アタッカー陣にしても、乾にロサンゼルス五輪代表候補の川合徳孟、昨季キャプテンを務めた角昴志郎、新加入の野澤、小原基樹など粒揃い。ボランチも金子大樹、藤原健介、井上詩音、上原力也、ユーリ・ララと実績ある面々が揃っている。
守備陣は目下、負傷者続出でやりくりに苦労はしているものの、山崎浩介、松原后などJ1でも経験値のある選手が何人かいて、メンバー的に悪くない。
そして最後尾に位置するのが、ワールドカップ(W杯)4回出場の守護神・川島永嗣となれば、タレント力はJ2随一のレベル。近年の磐田はそのアドバンテージを生かし切れなかった印象が強いだけに、秋葉監督体制で本当に勝てる集団になれるか否かが問われるところだ。
「ゴールに向かわない、相手に怖さを与えられない選手が、小手先でフットボールしたって勝てるわけない。相手が本当に恐怖を感じて、『もうこいつらにアプローチできない』とか『こいつらに寄せたらやられるな』といった(威圧感)みたいなものを全く与えられないから、負けゲームになってしまう。
そういうものを全て変えられるようにしたいですし、染みついた”負け癖”みたいなのがついていると思いますので、そういうものを取り除けるまで練習を山ほどやっていきたい。フットボールの世界はそんなに甘くないんで」と秋葉監督はチームに漂っている空気間を表現したが、J1とJ2を行き来しているうちに、「確固たる自信」が失われつつあったのかもしれない。それを取り戻すのが、名門復活への第一歩と言えるだろう。
秋葉監督は清水をJ1昇格させた経験があり、どうすればチーム全体を前向きな方向に導けるかをある程度、理解しているはず。彼がその手腕を発揮し、他の面々がしっかりと呼応し、持てる力を出し切れば、百年構想リーグのような結果にはならないだろう。
我々のように古くからいる関係者も「強い磐田」をもう一度見てみたいという思いは強い。彼らにはシーズン移行元年の26-27シーズンを名門復活を告げる節目の年にしてほしいところ。25日には清水と御前崎でテストマッチを行う予定だが、そこで甲府戦とは違った顔を見せてもらいたいところ。
8月8日のブラウブリッツ秋田との開幕戦からスタートダッシュを見せられるか否かは本当に残されたプレシーズンの準備にかかっている。ここからの1日1日を大切にしてほしいものである。
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)

元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。



















