北中米W杯から帰国→スタジアム直行で12ゴール目 鹿島の逸材18歳…監督が語る可能性

鹿島の吉田湊海【写真:藤江直人】
鹿島の吉田湊海【写真:藤江直人】

鹿島の吉田湊海、鬼木達監督も高評価「先発とは言えないですけど、でも…」

 8月に開幕する2026-27シーズンへ向けて、鹿島アントラーズのホープ、FW吉田湊海(みなと)が放つ存在感が一気に高まっている。主戦場とする最前線だけでなく左右のサイドハーフでも武器と自負する攻撃力を前面に押し出し、守備でも労を惜しまずにピッチを駆け回る。今月に18歳になったばかりの高校3年生が秘める可能性を、鹿島を率いる鬼木達監督や吉田がその背中を追うFW鈴木優磨らの言葉から探った。(取材・文=藤江直人)

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 やんわりとした口調で明言を避けながらも、鬼木監督は笑っていた。キャンプでハイパフォーマンスを披露し続けた吉田湊海を、開幕戦で先発に抜擢するかどうかを問われた直後だった。

 J1リーグ連覇を狙う指揮官は「先発とは言えないですけど、でも……」とさらに言葉を紡いだ。

「間違いなくそういうところ(先発)に食い込んできている選手の一人ですし、メンタルというか、やってやろう、という気持ちがいい。クオリティーがそろっている選手ですし、そのなかでハードワークもできる」

 鬼木監督が取材に応じたのは、新シーズン開幕へ向けたキャンプを福島・Jヴィレッジで行っていた今月15日。J2のベガルタ仙台との45分×3本のトレーニングマッチを5-0で制した直後だった。

 2-0だった1本目に左サイドハーフで、3-0だった3本目にはFW徳田誉との2トップで先発フル出場した吉田は、この日がくしくも18歳の誕生日だった。丸刈り姿が初々しいホープへの賛辞はさらに続いた。

「何が特徴なのか、飛び抜けたものがあるのかと言われると、まだそこまではと思いますけど、誰が見ても期待感はありますし、シュートを打たせればどこからでも(ゴールを)入れそうな雰囲気もある。そういう選手は必要だし、どのポジションで出ても自分を出してほしい。ここまで非常にいい形で来ていると思っています」

 今年に入ってから二足ならぬ三足の草鞋を履いてきた。ひとたびピッチを離れれば鹿島学園高校の最上級生となる吉田は、昨年末に鹿島ユースの同期、DF元砂晏翔仁(もとすな・あんとに)ウデンバとともに鹿島とプロ契約を締結。そのうえでトップチームの2種登録選手となった。

 もっとも、他チームの2種登録選手とはちょっと異なる。ユースに所属したままトップチームの公式戦に出場するためではなく、トップチームで試合に絡めない週末にユースの公式戦に出場するためだ。

 実際、4月に開幕した高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ2026で、吉田は9試合に出場して得点ランキング首位の12ゴールをマーク。3年連続2桁ゴール到達という偉業をシーズン半ばで達成している。

 同リーグを欠場したのは2試合。横浜FCユースとの第7節が行われた5月10日は、横浜F・マリノスとのJ1百年構想リーグ地域リーグラウンドEASTグループ第16節で初のベンチ入りを果たし、鬼木監督に「点を取ってヒーローになって来い」と檄を受けて、後半34分から敵地・日産スタジアムのピッチに立っていた。

 川崎フロンターレU-18との第10節が行われた6月20日は、吉田はアメリカの地にいた。北中米ワールドカップ(W杯)を戦った森保ジャパンのトレーニングパートナーを務めたU-19日本代表に名を連ねた吉田は、グループステージ3試合の戦いを見届けてから現地を飛び立ち、同28日に帰国していた。

 驚かされたのは、吉田が空港からそのまま味の素スタジアムへ向かい、夕方にキックオフされたFC東京U-18との第11節でベンチ入り。後半24分から途中出場し、6分後には12ゴール目を決めている点だ。

 W杯ではひとつ年上のFWラミン・ヤマルが、スペイン代表の右ウイングとして躍動していた。間近で雰囲気を感じた日々で大きな刺激を受けたのか。鬼木監督は「それはあると思います」とうなずいた。

「湊海はもともとあんな感じですけど、何かしらの刺激を受けたと思いますし、やらなきゃいけないというか、あの年齢でも勝負していかなきゃいけないと体感的にわかったはずなので、そこはよかったのかな、と」

 トップチームで「30番」を背負う一方で、ユースでは1年時から「40番」を変えない。尊敬する人を問われて「鈴木優磨」と答えてきた吉田が、トップチームで「40番」を背負う先輩へ抱く憧憬の思いが伝わってくる。

 前出の横浜FM戦で、吉田は初めてピッチ上で鈴木と同じ時間を共有した。試合後に印象を問われた鈴木は「アイツは若いですけど、本当に賢いですよ」と称賛しながら、後輩をライバルとして認めている。

「目がいいですよね。ギラついている目が。自分も本当にウカウカしていられないと思いました」

 2トップを組んだレオ・セアラも「彼の将来はものすごく明るい」とこう語っていた。

「彼のプレースタイルがものすごく好きだし、プレーのクオリティーの高さはあらためて言う必要もない。もちろん鹿島で成功してほしいけど、彼ならばヨーロッパでも十分に通用すると思っている」

 神奈川県大和市で生まれ育ち、中学生時代にFC多摩ジュニアユースでプレーした吉田は、高校進学時に鹿島ユース入りを強く希望。常勝軍団のDNAの薫陶を色濃く受けながら成長を遂げてきた。

 プロになった吉田は、自身のストロングポイントを問われるとこんな言葉を残している。

「自分はゴールを取るのが武器だと思っています。そこをもっと磨きつつ、(鈴木)優磨くんやレオ(・セアラ)のようにチームのために常に頑張って、走って、守備もできる選手になりたい」

 高く掲げられてきた目標に、森保ジャパンのトレーニングパートナーを介して得た刺激が加わった。実際に何を手土産に帰国したのか。鬼木監督は「あいつ、全然話さないので」と苦笑しながらこう続けた。

「なので、そういう話はしていないですね。だいたい『大丈夫です』と。それしか言わないので」

 攻撃陣からFW師岡柊生とFW荒木遼太郎が移籍で抜け、FWヤン・マテウスを緊急補強した鹿島。身長172センチ・体重72キロの体に大きな可能性を秘める吉田が、補って余りある存在になるのか。MUFGスタジアムでマリノスと対峙する8月7日の開幕戦で、早ければ答えが明らかになる。

(藤江直人 / Fujie Naoto)



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藤江直人

ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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