イエロー18枚のアルゼンチン…決勝で主力4人出場停止 潰えた連覇「史上最低の準優勝」

1990年のW杯で西ドイツに敗れたアルゼンチン【写真:Juha Tamminen/アフロ】
1990年のW杯で西ドイツに敗れたアルゼンチン【写真:Juha Tamminen/アフロ】

ディフェンディングチャンピオンとして決勝に臨んだ1990年のアルゼンチン

 アルゼンチンの連覇なるか――。北中米ワールドカップ(W杯)がいよいよ決勝を迎える。スペインを破って連続優勝となれば、イタリア(1934、38年)、ブラジル(1958、62年)に次いで3か国目。前回は、半世紀以上も前だ。出場チーム数が増え、各国のレベルも拮抗してきた今の時代で連覇は至難の業ともいえる。

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 優勝国は次の大会で苦しむジンクスもあるなか、ブラジルの連覇以降初めてディフェンディングチャンピオンとして決勝に臨んだのが1990年イタリア大会のアルゼンチン。ボロボロの状態で決勝にたどりつき、西ドイツに完敗したMFディエゴ・マラドーナのチームは「史上最低の準優勝チーム」と揶揄された。

 チームが連覇を目指した1982年スペイン大会、W杯デビューした21歳のマラドーナは若かった。2次リーグでジーコのブラジルと対戦して敗北。感情が制御できなくなったマラドーナはラフプレーで退場処分を受けた。「神の手」と「5人抜き」などで1986年メキシコ大会を制したマラドーナにとって、1990年は「今度こそ連覇を」の大会だったのだ。

 前回覇者として開幕戦でDFステファン・タタウ主将率いるカメルーンと対戦したが、0-1でまさかの敗退。MFセルゲイ・アレイニコフ、FWオレグ・プロタソフらタレントを揃えたソビエト連邦にはDFペドロ・トログリオのゴールなどで何とか勝ったが、最終のルーマニア戦は引き分け。1次リーグ3位とギリギリで決勝トーナメントに進出した。

 1回戦の相手は優勝候補ブラジル。圧倒的な劣勢で、FWカレカ、ミューレル、MFドゥンガらのシュートがポストやバーをたたいた。運にも助けられて耐え抜いた残り10分、マラドーナが魔法のようなドリブルで相手ディフェンダー4人を引き付け、決勝点をアシスト。1チャンスでライバルを葬り去った。

 準々決勝ではドラガン・ストイコビッチ率いるユーゴスラビアと対戦。豊富なタレントをそろえた相手の猛攻を受けて劣勢にたたされたものの、最後は0-0からのPK戦で勝利。さらに、準決勝のイタリア戦ではFWサルヴァトーレ・スキラッチに先制ゴールを許しながらも何とか追いつき、またもPK戦勝ち。決勝では2大会連続で西ドイツと対戦した。

 準決勝まででイエローカード18枚、レッドカード1枚、決勝ではレギュラー4人が出場停止だった。マラドーナは西ドイツDFギド・ブッフバルトに抑え込まれ、MFピエール・リトバルスキーらに軽々と突破を許した。2人の退場者を出したこともあって試合は0-1のスコアながら西ドイツに完敗。ピッチで子どものように涙するマラドーナの姿が印象的だった。

 2度のPK戦を勝ち上がり、わずか5ゴールでの決勝進出。累積警告での出場停止が続発して、戦える状態ではなかった。これをきっかけに、現在のように大会中にイエローカードが精算されるルールができたほど。それでも、決勝まで上がってくるところにアルゼンチンの、マラドーナの執念を感じた。

 その後、1998年フランス大会でブラジルが、前回2022年カタール大会でフランスが連覇を狙って決勝まで進んでいる。しかし、ともに準優勝止まり。今回のアルゼンチンは1990年大会のときとは得点力も違うし、警告も少ない、PK戦に頼らずに勝ち進んできた。底力もありそうだ。それでも連覇が難しいことは、この半世紀の歴史が証明している。

 もう1つ、アルゼンチンを筆頭にゴールが少なく、警告が多く「史上最低」と言われた1990年大会が印象的なのは、その後に多くの選手が日本に来たから。イングランド代表のFWゲーリー・リネカー、オランダ代表のDFジェラルド・ファネンブルグ、スペイン代表のFWフリオ・サリナス、まだまだ大勢いる。マラドーナのJリーグ入りは叶わなかったが、この原稿に出てくる他の選手は全員、日本でプレーしている。

(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)



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荻島弘一

おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。

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