170センチの“小さな巨人” 大学リーグ最小5失点…浦和主力から刺激「僕と同じ身長」

産業能率大の中島颯太【写真:安藤隆人】
産業能率大の中島颯太【写真:安藤隆人】

産業能率大の中島颯太「宮本選手は僕と同じ身長で、大きな刺激になっています」

 4月に開幕した大学サッカーリーグ戦。プロ内定選手、これからプロを目指す選手、そして大学という新たなステージに移行した選手たちが全国各地で激闘を繰り広げる。

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 ここでは大学サッカーのステージで躍動する選手たちをピックアップしていく。今回は関東大学サッカーリーグ2部前期を首位で折り返した産業能率大の4年生CB中島颯太を紹介する。11試合でリーグ最小の5失点と強固な守備陣を束ねるリーダーの魅力とは。

 産業能率大の堅守を支える3バック。その中心に君臨するのが170センチの“小さな巨人”こと中島だ。

 明晰な頭脳を持ち、相手の狙い、味方の立ち位置と距離感の把握、ボールの動きと相手の動きの予測を駆使して、的確なコーチングと絶妙なポジショニング、そして鋭いで足のボールハントと俊敏性を生かしたカバーリングを駆使して、一気に相手の攻撃を封じていく。

「僕はサイズがあるわけではないですし、強烈な武器があるわけでもない。でも、僕の特徴は話せること。周りに意図を伝えることが得意なので、それを生かして自分が見えている世界や感じたこと、予測などを味方に伝えて、組織を動かすことでより自分が守りやすい状況を作ることを大事にしています」

 自分の特徴をさらっとこう口にするが、これはそう簡単にできることではない。彼は高川学園高校時代からずっとCBをやっていた。サイズはないが、リーダーシップとボールを奪うスキルは非常に高く、安心して最終ラインを託すことができる存在だった。

「自分がCBとして何ができるかを考えました。声を出すことを意識したら、自然と顔が上がるので、視野がどんどん広がっていく。ただ守備力を鍛えるというより、見えるものを増やしたり、見えたものをどう生かし、かつ周りに伝えたりするかを考えることが日常となっていきました」

 産業能率大に入学すると、2年時から不動のDFリーダーとなった。3バックの真ん中で両CBとダブルボランチを巧みにコントロールしながら、守備の番人となった中島は、昨年はアミノバイタルカップで関東1部の強豪を相手にその才をフルに発揮し、明治大、日本大学、日本体育大を撃破して、3位に輝く原動力となった。

 そして最高学年を迎えた今年はよりバージョンアップを見せている。プレーを見ていても、対応力が格段に向上しているのだ。具体的に言うと、両ウイングバックやトップ下の選手もコントロールしながら、まさにチーム全体で組織的に守る。そのタクト裁きは昨年よりも質がかなり高まっている。

「より見える場所が広がりました。ボールサイドだけでなく、逆サイドの遠くの状況を把握した上で、近くの選手をコントロールする。例えば前のスペースを埋めに行かせたら、全体を1つずつずらしてカバーやサポートができる状況を作り出す。ときには自分で前に出て埋めていって、そのカバーを味方にしてもらう。全体の距離感が見えるようになりました」

 だからこそ、中島が束ねる守備は決して後ろに重たくならない。ただの『数の論理』で守っているのではなく、あくまで流動的に動く相手を的確に捕まえて、奪いどころを明確にしているからこそ、意図的に奪えるし、奪ってからの攻撃の展開も早いためどの試合もゴールを決められて首位という結果を残せている。

「個人的にも行くところと行かない方がいいところの判断は前よりは良くなっていきました。例えば一つ判断が遅れてしまったときに、そのまま勢いで行ってしまうのではなく、一度止まって、そこからもう一度動き直すことができるようになったのは大きな成長だと思います。違うと思ったら止まって、次の適した判断をすることでプレーの連続性が生まれたと思います」

 納得の言葉だった。今のプレーを見ていれば、それをきちんと実行していることがわかる。今年の中島を見ていると浦和レッズのDF宮本優太を彷彿とさせる。それを本人に伝えると、笑顔を見せてこう口にした。

「宮本選手は僕と同じ身長で、J1の第一線でCBとしてあれだけ活躍されているのは大きな刺激になっています。宮本選手も本当に全体が見えていて、抜群の距離感を味方と取って、的確なコーチングで組織を動かしているし、空中戦も球際の一切引かないで戦えている。本当に参考になるし、僕もそうなりたいと思っています」

 同時に、宮本がサイドバックもやっていたことにも着眼しているという。

「プロ志望なので将来はCBだけでなく、サイドバックもやりたいと思っています。やったことがないのですが、宮本選手が元々サイドバックだったと聞いて、僕もやれるんじゃないかと思っています。サイドの方が中央より全体が見渡せるので、より相手と味方の動きが把握できる。

 ボールが逆サイドにあるときのカバーは、いつもCBとしてサイドバックに言っていることなので、CBの選手がいてほしい場所は把握できるからこそ、より的確なポジションが取れると思います。縦への推進力も苦手ではないので、やってみたい思いはあります」

 現在J2クラブの練習に参加。プロになるための努力に加え、関東2部で最小失点優勝、これから始まるアミノバイタルカップで2年連続の総理大臣杯出場を達成するべく。“小さな巨人”はその頭脳をさらに磨き続ける。

(安藤隆人 / Takahito Ando)



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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

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