小学生で震災経験「心に大きな傷」 被災地に絶句…重ね合わせる歌「心に響くんです」

神戸の郷家友太【写真:©VISSELKOBE】
神戸の郷家友太【写真:©VISSELKOBE】

郷家友太「ヴィッセルも神戸の街にとって、僕がベガルタに感じたような存在」

 今季、4年ぶりにヴィッセル神戸に戻ってきたプロ9年目のMF郷家友太。自力で掴み取った往復切符を自信に変えて、“リスタート”と位置付けて臨んでいる今、郷家は何を想い、何を感じながらプレーしているのか。インタビューで神戸への想い、仙台への想いを包み隠さず言葉に紡いでくれた――。(取材・文=安藤隆人/全4回の4回目)

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 試合前、勝利後に神戸サポーターが大合唱する「神戸讃歌」。1995年1月17日に起こった阪神淡路大震災で多大なる被害を受けた神戸。このとき、ヴィッセル神戸もプロクラブとしての第一歩を踏み出そうとしていた瞬間でもあった。

 練習初日に震災が起こり、存続の危機にも直面しそうになったが、そこから復興のシンボルとしても立ち上がって、今日のビッグクラブになるまで歩んできた。この歌は神戸サポーターが復興への願いと、クラブへの愛を込めて、「愛の讃歌」の歌詞を変えた形で生まれた。

「僕も小学生のときに東日本大震災を経験して、本当にものすごい光景を目の当たりにして、停電した家で何日も家族と身を寄せ合っていました。心に大きな傷が残るなかで、(2011年4月23日のJ1リーグ第7節)のフロンターレvsベガルタの試合をテレビで見ました。

 ベガルタが逆転勝利する姿を見て、心が震えたというか、画面に映る選手たちが『宮城県民の代表』として、『震災で傷ついた人たちの代表』として戦ってくれているように見えて、心の底から応援していたし、選手の1つ1つのプレーに『頑張ろうぜ』とエールをもらった気がしたんです。ヴィッセルも神戸の街にとって、僕がベガルタに感じたような存在だと思うと、この歌は本当に心に響くんです」

 高卒プロになって5年間、「神戸讃歌」はずっと聞いていた。そのときもこの歌の意味と価値は理解していたつもりだった。だが、仙台でプロサッカー選手として3月11日を3度迎え、被災地訪問などを経験したことで、4年前とは受け止め方も大きく変わった。

「仙台に戻って改めて津波の被害で骨組みだけが残された建物や更地になってしまった光景を目の当たりにして、自分がサッカー選手としてここにいる意味と価値を真剣に考えるようになりました。

 被災地にとってシンボル的な存在がヴィッセルであり、ベガルタである。震災からともにかなりの月日が経っていますが、あの出来事のことを決して風化させてはいけないという願いと、今も復興のシンボルであり続ける強い意志をあの歌から感じる。神戸讃歌自体がもう街のシンボルの1つだと思っているので、大切に歌っています」

 3月11日のACLEラウンド16第2戦のホーム・FCソウル戦。スタメン出場を果たした郷家は神戸サポーターが東日本大震災の被災地・被災者に対し、「いつも心はトモニ」という横断幕を掲げてくれた。黙祷の前にその横断幕を見て、「涙が出そうになるくらい、本当に嬉しかった」と心を震わせた。

 様々な想いを胸に郷家は神戸のピッチに立っている――。

「J1トップレベルの戦い、ACLEの戦い。どれも僕にとって刺激的で、もっともっとチームに貢献したい、自分のプレーを表現したいという気持ちが日に日に強くなっています」

 止まらない、止められない、溢れる想い。最後に郷家は本音をこうこぼした。

「僕がいなくなってからのJ1リーグ連覇。正直、羨ましいなと思いました。だからこそ、掴んだこのチャンスを絶対に逃してはいけないし、全身全霊を尽くしてタイトル獲得に貢献したい。大迫さんや武藤さん、高徳さん、井手口(陽介)さんのように苦しいときに力を発揮できる選手になって、中心選手としてタイトルとともに成長していきたいと思っています」

 肝が据わり、覚悟が固まった男は面構えが違う。プロになるまでの日々、神戸での最初の5年間、仙台での3年間、そしてリスタートの今年。すべてが濃密で意味がある。苦しくなったらいつも味方でいてくれる神戸サポーター、そして遠く仙台で背中を押してくれた仙台サポーターの表情、声を思い出して、郷家友太はさらなる奮起をして周囲の期待に応えていく――。

(安藤隆人 / Takahito Ando)



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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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