Jリーグ、ルール改正で与える影響は? スローインなど時間制限…発生する「カオス」

スローインを投じる町田の林幸太郎【写真:徳原隆元】
スローインを投じる町田の林幸太郎【写真:徳原隆元】

交代やスローイン、ゴールキックにも時間制限が課されることになった

 国際サッカー評議会(IFAB)は2月28日に年次総会を開催し、2026-27競技規則の改正点を決議した。

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 そのなかには、2枚目の警告が誤っていた場合、VARが介入してできることに、イエローカードとともに退場処分を取り消すことができる、反則していたチームを間違った場合のカードを訂正できる、大会によってはCKやGKの判定、というのが盛り込まれた。

 また、2025年からはGKが保持するボールをリリースする際に設けられている8秒ルールに加え、交代やスローイン、ゴールキックにも時間制限が課されることになった。この時間制限がJリーグにどんな影響を与えるのか。2025年J1リーグの1試合平均の回数と時間はこうなっている。

FK      24.8回/16.4分
スローイン  45.0回/11.4分
ゴールキック 16.1回/ 8.1分
CK       9.6回/ 6.4分
得点からKO   2.4回/ 3.0分
PK       0.2回/ 0.6分

 現状ではアディショナルタイムを入れて1試合平均100分30秒のプレータイムのなかで、約48分がアウトオブプレータイムだ。このなかからスローイン、GKの時間が制限されたとしたらどうなるだろう。

 現在は1回あたり15.2秒かかっているスローイン、30.2秒のゴールキックがともに10秒(レフェリーはそれぞれのプレーができるようになってから5秒をカウントする)になったとすると、スローインが7.5分、ゴールキックが2.7分にまで短縮されることになり、9.3分もプレー時間が増えることになる。

 するとJ1で現状52.4分のアクチャルプレーイングタイム(APT)は「61.7分」にまで延びる。これはどんな水準かと言えば、2024/25シーズンのリーグアン(57.4分)、プレミアリーグ(57.0分)、ブンデスリーガ(56.3分)、ラ・リーガ(55.3分)、セリエA(54.8分)を凌ぐリーグになるということだ。もっともこの時間制限ルールは世界的に適用されるので、ヨーロッパ5大リーグもさらにAPTを伸ばすのは間違いないのだが。

 APTを伸ばすのにはどんなメリットがあるのか。長い時間プレーを見られるという点以外に、勝敗にも影響を与えると森保一監督は指摘する。「APTの短いチームが長いチームと対戦すると、いつもより長くプレーすることになって最後は考える力が足りなくなる」というのだ。

 2025年シーズンでもっともAPTが長かったのは柏の58分17秒、最も短かったのは京都の47分18秒。ただ、この両者の対戦が2試合とも引き分けだったこと、優勝した鹿島のAPTが16位だったことを考えると、APTの長さが勝敗に直結するとは言いがたい。

 だが注目すべきは、時間の「短縮」そのものよりも、準備時間が奪われることによる「カオス」の発生だ。スローインやゴールキックに厳格な制限が課されれば、守備ブロックを完璧に整える時間はなくなる。

 これまでは「30秒かけて陣形を整えていた」ゴールキックが10秒になれば、プレッシングに行く側と回避する側の「即興性」の勝負になる。APTが長いチームが勝つのではなく、「短くなったアウトオブプレー時間に素早く適応し、相手の隙を突くチーム」が、2026年以降のJリーグを支配することになるかもしれない。

 また、GKが保持する時間を厳密に取るようになったり、スローインやゴールキックにも時間制限が適用されるようになったりしてきた流れを考えると、今後はFKに対しても何らかの制限が課されるようになることが十分推測される。そうすればさらにAPTが伸びることだろう。そのときに備えて、今から各チームはAPTを延ばす努力を続けなければならない。

 そしてまたAPTが延びることは「Jリーグという商品のパッケージ」を劇的に変える可能性がある。たとえ特定のチームの勝率が上がらなくとも、リーグ全体のインテンシティの高さやテンポの速さという「密度」が上がることで、海外スカウトへのアピール度は増すはずだ。そして、それが放映権価値の向上など、ビジネス面での恩恵は計り知れない。

 今回の競技規則の改正をきっかけに、Jリーグが未来像をしっかりと描くことが全体の価値を高める。単なる対応だけではなく、その先に何があるかを見極めるときだ。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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