逸材1年生が見つけた新たな武器 ドリブル出せずも…参考にした一流の”オフの動き”「全員に共通」

決勝点を決めた武南の渡邉柊羽【写真:安藤隆人】
決勝点を決めた武南の渡邉柊羽【写真:安藤隆人】

優勝を決める一撃を沈めた武南・渡邉柊羽

 高円宮杯プレミアリーグは鹿島アントラーズユースの優勝で、第104回全国高校サッカー選手権大会は神村学園の初優勝で幕を閉じた。

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 2025年シーズンを終え、各クラブユース、高体連のチームは新チームをスタートさせ、新たな戦いに向けて準備を進めている。4月のリーグ本格開幕を前に虎視眈々と上を目指すチーム、選手にスポットを当てていきたい。

 今回は2月15日に武南の優勝で幕を閉じた埼玉県高校サッカー新人戦から。高校サッカーファンの間ではお馴染みの白と薄紫の『武南カラー』のユニフォームが、新人戦で埼玉県の頂点に立った。聖望学園との決勝戦で優勝を決める一撃を沈めたのは1年生FW渡邉柊羽。彼の名前は覚えてもらって損はない―。

 0-0で迎えた延長前半4分、右サイドを突破したFW角啓汰に対し、中央で渡邉はプルアウェイの動きを入れてCBの視野から一度消えて、そのままゴール前のスペースへ走り込んだ。そこに角からのクロスが届くと、体ごとゴールに雪崩れ込む形で決勝弾を押し込んだ。

「最高のボールがゴール前に来たので、もう飛び込むだけでした。相手CBの見えない位置から入っていくことはいつも意識をしていて、ちょうどうまくマークを外すことができたし、スペースもあったのでここしかないと思いました」

 後半16分に「点を取ってこい」と送り出された1年生ストライカーの活躍は、内野慎一郎監督を始め武南スタッフに取っても価値のあるものだった。実は試合前日に仲村浩信コーチが「渡邉は相手を外す動きがうまい。決勝に出たら結果を出すことを期待している」と呟いていたように、期待値の高い1年生は見事に最高の形で応えた。

 この決勝弾に凝縮されているように、彼はオフ・ザ・ボールの動きが非常にうまい。このシーン以外にも一度相手の視野から外れて飛び込んでくるプレーに、聖望学園DF陣はかなり手を焼いていた。

 トップ下で投入されたこともあって、彼はボールが動いている際にわざと相手の視野に 一度入ってから外す動きをするし、背後を狙うフリをして落ちてボールを受けて周りに展開をしたり、ターンをしてドリブルを仕掛けたりする。

 この多彩な動きを見せる一方で渡邉の武器はドリブル。積極的に仕掛けて相手を剥がす力を持っているが、それを無闇に出さずに相手をオフの動きとワンタッチプレーで翻弄させてから『ここぞ』という場面で繰り出してくるからこそ、相手にとって厄介極まりない。

「出し手の状況だったり、相手のセンターバックの目線だったりを特に意識して見ています。中学からFWになったのですが、FWだとどうしても後ろ向きにボールを受けることが多くて、あまり得意のドリブルを発揮できる場面が少ないんです。でも、そこで強引にドリブルをしても点は取れないので、とにかく点を取ることを重要視して『いかにシュートまで持っていけるか』を考えてプレーしていたんです。そうしたら僕の得点パターンが裏抜けからのゴールが多いと感じたので、そこから自分のもう1つの武器は裏抜けだと認識するようになりました」

 与えられたポジションに適応しようと創意工夫した結果、彼はもう1つの武器を見つけることができた。さらにその武器をより進化させようと取り組んだのが、映像を多く見るという行動だった。

「大好きなハーランドやレヴァンドフスキのプレーを中心にいろいろなFWのプレー動画はよく見ました。たくさん見ていくと、一流のFWはもちろんシュート、ドリブル、ターンとかもうまいんですけど、全員に共通しているのがオフ・ザ・ボールの動きがうまいことだと気づきました。そこからはFWのボールが来るまでの動きと目線を注視するようになって、動画を止めながら解説をしてくれる動画もあるので、それを見てボールと人が動く中でどこを見ているのかに注目しました」

 一流のストライカーはボールが来る前にしっかりと首を振って、自らが一番欲しいポイントをわざと空けてから、一気に加速して飛び込んでいく。だからこそ、ボールが届いたときにはすでに勝負は決まっていたり、ワンタッチで局面を制していたりする。

 自分もそうなりたいと思い、普段の練習から相手を外す動き、受けたいポイントを自分で作り出して、相手の死角から飛び込んでいくプレーを意識した。

「もう1つ、一流選手は相手をよく観察しています。マッチアップするCBでも、突っ込んでくるCB、間合いを空けてくるCB、相手を見て寄せてくるCBといろいろタイプが異なるので、常に対峙するCBはどのタイプかを見るようになりました。聖望学園で言うと、僕がトップ下の位置に戻ってもあまり食いついて来なかったので、後ろからボールを受けたらターンできる時間があると思って前を向いてプレーするようにしましたし、ゴールシーンも背後から飛び出せばフリーになると思っていました」

 知的探究心と好奇心を持ち、与えられたポジションで役割をきっちりとこなしながら自分の色を出そうとする。その姿勢があるからこそ、スタッフからも信頼を置かれるのだろう。

「武南は昔こそ全国常連校でトップクラスの結果を残していましたが、そこから少し落ちてしまっている印象を持っている人はいると思います。でも、僕の中では昨年からどんどんチーム力は上がっている感覚を持っているので、この調子でさらに上がっていって全国で結果を残したいです」

 巧妙な駆け引きで打ち勝つスタイルで味方を勇気づけ、相手を凌駕する。175cmの万能型アタッカーは自分の能力を伸ばす術を知っているからこそ、ここからさらなる成長が期待できる。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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