輝かしい実績も出番なし 欧州、強豪クラブの練習参加も…突き付けられた現実「自分でも納得」

昌平の1年生MF押江颯人【写真:安藤隆人】
昌平の1年生MF押江颯人【写真:安藤隆人】

昌平の1年生MF押江颯人

 高円宮杯プレミアリーグは鹿島アントラーズユースの優勝で、第104回全国高校サッカー選手権大会は神村学園の初優勝で幕を閉じた。

【PR】ABEMA de DAZN、2/6開幕『明治安田Jリーグ百年構想リーグ』全試合生配信!毎節厳選6試合は無料!

 2025年シーズンを終え、各クラブユース、高体連のチームは新チームをスタートさせ、新たな戦いに向けて準備を進めている。4月のリーグ本格開幕を前に虎視淡々と上を目指すチーム、選手にスポットを当てていきたい。

 今回は2月15日に武南の優勝で幕を閉じた埼玉県高校サッカー新人戦から。セカンドチーム主体で臨んだ昌平は準決勝で聖望学園に0-2で敗れたが、やはりタレントは豊富だった。その中の1人、レフティーの1年生MF押江颯人をピックアップする。

 左利きの独特のリズムを刻むドリブルは見ている者を惹きつける。聖望学園戦では後半から投入されると、サイドで左足の繊細なボールタッチで相手を牽制し、急加速から相手の間隙を突いたり、ひとり剥がしてから走り込んだ味方に正確なパスをつけたりするなど、攻撃にアクセントを加えた。

 だが、前述した通り試合は0-2の敗戦。試合後、押江は「この新人戦はトータルで1点しか取れませんでした。僕がAチームに入るためには、こういうところで点を取らなきゃいけなかったのに、この試合でも点に絡めなかったというのは大きな反省点です」と唇を噛んだ。

 中学時代、押江は昌平の下部組織にあたるFC LAVIDAの10番を背負った。2024年1月にはDMMが主催するU-14JVCカップで優秀選手に輝き、シント=トロイデンの練習に参加。その年の日本クラブユースサッカー選手権(U-15)で3ゴールを挙げてチームをベスト8に導くと、昨年はメキシコの強豪クラブであるUANLティグレスの練習に参加。ジュニアユース世代のオールスター戦と言われるメニコンカップにも出場して1ゴールを挙げた。さらに7月にはU-15日本代表に選出されてウズベキスタン遠征を経験。

 ここまで見ると、かなり輝かしい道に見えるが、昌平では激しいポジション争いに打ち勝つことができていない。昨年はプレミアリーグEASTに登録こそされるが、同い年でラヴィーダ出身のFW立野京弥、MF松本太佑、DF笠原慶多が着々と出番を掴んでいく中で、1度も出番は来なかった。

「シンプルに僕の実力不足だと思っています」と答える彼に、何が足りないのかを聞くとこちらに目を向けてこう口にした。

「インテリジェンスの面で不足を感じています。具体的に言うと、パスを出した後の次のプレーだったり、3人目の関わりだったり、まだオフの部分で周りの状況を把握する力が足りないからこそ、連携面で信頼を得られていないのだと思っています。使われないことに対しては、周りにそれができるいい選手がたくさんいるので、自分でも納得しています」

 もちろん指をくわえて見ているわけではない。練習から「常にリアリティを追求しています」と語るように、相手がいることを想定してドリブル練習をしたり、パスを出して動き直してからもう一度パスを受けて仕掛けたり、ワンタッチで相手を交わすプレーにトライするなど、課題に真剣に向き合いながら努力を重ねている。

 聖望学園戦でもベンチにいた前半にピッチの展開を真剣に見つめて、自分が出場をしたら何をすべきかを考えていた。

「相手のDFラインのコントロールのスピードを見て遅い部分を感じたので、隣にいたFW白須(裕基)くんはめちゃくちゃ足が速いので、『もし一緒に出たら、裏のスペースに必ずボールを出すから走り込んで欲しい』と伝えました」

 このすり合わせは後半17分に形になった。サイドでボールを受けた押江は顔を上げて相手が引きつけられた瞬間に、裏にできたスペースにDFの頭を超す浮き球のスルーパスを送り込む。タイミングよく抜け出した白須の足元にピタリと届いた。シュートは絶妙なタイミングで飛び出してきた聖望学園GK竹川凌平のビッグセーブに阻まれるが、完全に相手を崩した瞬間だった。

「もっとやらないとライバルには追いつけないと思います。昨年は山口豪太(湘南ベルマーレ)さんや長璃喜(川崎フロンターレ)さん、京弥、笠原のプレーを見ていて、チームが苦しい時に決めたり、助けるようなプレーを見せたりするし、たとえ短い時間でも能力をフルに発揮して結果を出しているので、『やっぱり年代別日本代表に選ばれる選手とはこういう選手なんだな』と感じました。それで自分に置き換えてみると、『やっぱり僕はまだまだ甘いな』と思うんです。それが悔しいし、彼らよりやらないといけないと思っています」

 しっかりと自己評価をして、他者から学ぶ意欲を持った選手は伸びる。それ以上に押江が持つ左足の技術と感覚、アジリティーはかなり魅力だ。これらを兼ね揃えているのなら、この1年でさらなる成長を遂げ、より周りを惹きつけるようなプレーを見せてくれるようになるのではないかと期待値も上がる。

「今年はまずAチームに絡んで、その先にある年代別代表、プレミア、S1リーグ、インターハイ、選手権と全部に関わって、どこであろうと僕のゴールで勝ちたい。『俺に任せろ』という気持ちを持って、ここから這い上がっていきたいです」

 コツコツが勝つコツ。黙々と才能を磨き続けるレフティーから目を逸らしてはいけない。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

page 1/1

安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング