幸せな結末 アジアカップ決勝戦で見えたアジアの未来の光

1次リーグの対戦は得失点差による“油断”が勝負の分かれ目に

 

 次の表は、パスおよび攻撃の傾向を見るためのデータだ。

②

  ここでも韓国の半分以下のロングパスの比率が見て取れる。注意して見て頂きたいのはアタッキングサード、ペナルティエリアの侵入回数は韓国を圧倒しているもののスルーパスが1本もないことだ。敵陣パス比率がオーストラリア71%、韓国74%となっている。つまり韓国は守備からゲームに入り、奪ったボールを効率的に前に運んでいる。

 オーストラリアはしっかり守る韓国の守備陣の前でボールを回させられて、しびれを切らせてサイドからクロスを放り込むプレーになってしまっていた。そして最後まで1点の差を詰めることができなかった。

 

1次リーグの対戦から両国が学び考えた決勝の戦い

 

 そして迎えた決勝戦。地元で初優勝を目指すオーストラリア、55年ぶりの優勝を目指す韓国。それを見守る満員のスタジアムの観衆たち。いやが上にも勝利へのモチベーションは高まるはずだ。Duelsの数は1次リーグでの対戦時の111回を大きく上回る134回、大きく落ちたオーストラリアのパスの成功率とポゼッション率にこの試合にかける韓国の気持ちが詰まっていた。

 ③

  戦術的な変化を見てみよう。最初の試合でオーストラリアはボールを回しながらもなかなか韓国の固いブロックを崩せず最後はサイドからのクロスに頼った。その数は韓国の3倍近い24本だったが味方に繋がったのは5本、成功率は20%だった。

 右サイドバックのイヴァンフラニッチが右サイドから6本のクロスを上げて3本成功したが、それ以外は18本のクロスで2本しか成功していない。韓国の2枚のセンターバック、カク・テヒとキム・ヨングォンの空中戦とDuelsの勝率は100%だった。オーストラリアはその2枚に競り勝つのではなく外に釣り出して薄くなった中央を攻める戦い方を選んだ。

 一方、韓国の1次リーグのオーストラリア戦は守って縦に速い攻撃で相手ゴールへの最短距離を目指した。結果、クロスの数は9本だけだった。高さのあるオーストラリアのディフェンス相手にクロスは通用しないと分析していたのだろう。だが、その時の33%の成功率からサイド攻撃の有効性を見出したに違いない。それが決勝での大きなサイドチェンジと、25本と大幅に増加したオープンクロス、そして4-2-3-1から4-4-2へのシステム変更に表れている。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング