トップ昇格叶わず→関東行き「さらに火がついた」 1本のリリース…プロ入りに必要な“気迫”

順天堂大1年MF森田将光「やっと出場できた」
ガンバ大阪ユースから関東に挑んできたアタッカーが、ついに大学サッカーデビューを迎えた。順天堂大の1年生MF森田将光は関東大学サッカーリーグ2部・第15節の東京農業大学との一戦で、3-1で迎えた後半26分に投入されると、トップ下の位置から鋭い抜け出しとポケットへの侵入でチャンスを演出。後半28分にはスルーパスに抜け出して、相手GKと1対1になったが、放ったシュートはファインセーブに遭った。
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ゴールという結果は生み出せなかったが、リードしている状況もあり、持ち味である一瞬のスピードとボールコントロールを見せるなど、今後に大きな弾みがつくデビュー戦となった。
「やっと出場することができました。アミノバイタルカップ(6月の総理大臣杯関東予選)からベンチに入れさせてもらっていたのですが、なかなか出番が来なかった。それはまだ周りからの信頼を掴み切れていなかったから。日比(威)監督からも『もっと気迫を持って戦え』と言われていて、僕に足りないものはプレー面での気迫、勢いだと捉えていました」
気迫を前面に出す。もちろん、これまで手を抜いていたわけではなく、いつも真剣にサッカーに向き合ってきた。気持ちがない、気迫がないのではなく、いかに持っている技術を強度が伴った状態で「ここぞ」というところで出せるか。
そのためには一瞬で出力を出すスプリントの強度、戦況やスペース、タイミングを見逃さない察知力と実行力が必要になってくる。森田が日比監督に求められていたのはそこだった。裏を返せば、それだけの技術とポテンシャルを持っているからこそとも言える。
「僕は高校の時から声を出すことができるキャラクターだったのですが、その反面、プレーでは目立てていなかった。だからこそ、トップ昇格も叶わなかったと思っているので、プレーの派手さではないですが、もっと重要な場面でインパクトがある前への推進力などを出していかないといけないと思っています」
奈良県からG大阪ジュニアユースに入り、ユースではサイドハーフとして2年時から主軸として日本クラブユース選手権優勝、3年時には同大会2連覇、プリンスリーグ関西1部優勝とプレミアリーグ昇格に貢献をした。
だが、トップ昇格を果たせずに大学進学となった際に、1年時にG大阪ユースの監督だった森下仁志氏が日比監督の帝京と順天堂大で1学年上の先輩だったこともあり、順天堂大のこと、どういうサッカーをするなどを教えてもらったという。
「もともとユースの先輩から『関東の方がレベルが高いぞ』と言われていて、ガンバだったり、関西だったりでは味わえないサッカーが関東では味わえると思っていました。なので、森下さんから順天堂の話を聞いて、練習参加をしたらありがたいことに誘いをもらえたので、ここでプロになれるように頑張ろうと思って決めました」
順天堂大に入るとトップ下にコンバートされたこともあり、最初は戸惑ったが、徐々に日比監督の指導と言葉を受け止めていくことで、自分が今伸ばすべきことが整理されていった。
「サイドハーフの時はずっとゲームを作るところを意識していたのですが、よりゴールに近い場所でのプレーになったからこそ、より相手ゴールを脅かすような推進力が求められるようになった。ゴールに直結するプレーの要求度は間違いなく上がったので、それをきちんと受け止めてやらないと、試合には出られないと思っています」
出場時間は20分程度だったが、ピッチに送り込まれたということは間違いなく進歩はしている証拠。常にペナルティーエリア内への侵入とシュートやラストパスをギラつきながら狙う姿勢にさらに勢いをつけた出来事があった。
今月6日、ガンバ大阪ユースに所属するDF横井佑弥、MF山本天翔、FW中積爲、當野泰生の4人のトップ昇格が内定した。
「あのリリースを見て、本当にさらに火がつきました。正直、負けている気持ちはありませんが、足りないものがあるからこそ、僕は今ここにいる。本当に負けていられないし、最終的に自分が上に行くために、今ここで全力を尽くすのみだと思っています」
続く第16節の産業能率大戦では出番はこなかったが、落ち込んでいる暇はない。覚悟を持って関東にやってきた俊敏性抜群のアタッカーは、ここから全面に剥き出していく牙を黙々と磨いている。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。



















