192cmの大型DFが秘める「大化けする可能性」 蘇るアジア杯の起用法…米国遠征で求められる”証明”

日本代表の望月ヘンリー海輝【写真:徳原隆元】
日本代表の望月ヘンリー海輝【写真:徳原隆元】

望月ヘンリー海輝がE-1選手権に続いて代表入り

 8月28日に発表された米国遠征に臨む日本代表メンバーの中に、7月のE-1選手権に出場していたFC町田ゼルビアの望月ヘンリー海輝の名前があった。MF・FWの中でJリーガーは細谷真大と望月の2人だけだった。

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 望月は2001年9月20日生まれの23歳。ルーキーイヤーの2024年9月には日本代表に初招集されたがベンチ外が続き、やっと出番をもらえたのは7月8日のE-1選手権初戦、ホンコン・チャイナ戦の77分からだった。続く12日の中国戦でも先発すると代表初ゴールを決め、韓国戦にもフル出場。3試合を通じての出場時間は1位の稲垣祥に次ぐ2位タイ(もう1人は相馬勇紀)となった。

 実は、森保一監督は望月にずいぶん早いうちから注目していた。2024年7月、町田の黒田剛監督が森保監督と会談した際、森保監督が「望月を育ててほしい」と語っていたという。

 望月は加入当初から192センチの身長で目立っていた。初先発となった4月21日のFC東京戦、ドレシェヴィッチからのロングフィードに長いストライドを生かして追いつくと、クロスでオ・セフンのヘディングシュートをお膳立てした。

 しかし、その後の望月は定位置を確保できなかった。続く4月27日の磐田戦でも先発したものの61分で交代。やっと次の先発が回って来たのは6月15日の横浜FM戦だった。

 課題は3つあった。1つはクロスの精度。多くのクロスを供給するのだが、2024年は結局2アシストのみ。町田にはオ・セフン、ミッチェル・デューク、藤尾翔太などヘディングの得意な選手がいるのだが、決定的なパスを供給することができなかった。本人もその点を意識して、全体練習が終わったあとにずっとクロスの練習を続けていた。

 2つ目は安定感。素晴らしいプレーを見せるものの、一瞬気を抜いた場面で相手の突破を許し、ピンチに結びついてしまうこともしばしば。ことさらに失点を嫌う黒田監督は、望月を庇っていたものの、ときにメンバーから外すという決断もした。

 3つ目はアグレッシブさ。温厚で大人しい性格は、ときとしてピッチの上ではマイナスに働く。本人も「昔からその点が問題だと言われていました」と言うほどで、相手との駆け引きという点で後れをとってしまっていた。

 結局2024年は26試合に出場して2アシストのみ。そして2025年、町田が3バックを採用したことで望月は右のウイングバップにポジションを移した。シーズン当初は役割を十分に果たせず、開幕から3試合先発したあとはベンチに座ることが続いた。

 それでも再びチャンスを掴むと5月25日の京都サンガF.C.戦では、中山雄太の怪我で急きょ途中出場した直後にJリーグ初ゴールを挙げ、試合には敗れたものの復調ぶりをアピール。6月に入るとさらに調子と安定感を上げた。

 特にE-1選手権後は、右サイドの高い位置での基点になるとともに、昌子源からのサイドチェンジを収めて相手を揺さぶる役割を果たしている。攻撃参加もそれまで以上に積極的になった。今でも報道陣の前ではシャイな望月だが、少しずつ自信を付けているのは間違いない。

 今の望月は森保監督が期待していたとおりの道を歩いていると言えるだろう。また、望月は運も良かった。

 森保監督は第二次森保ジャパンのスタート時、右のセンターバックやウイングバックにはサイドバック型の選手を起用してきた。そのため、最も重宝されたのが菅原由勢だったのだ。

ところが最近は右のウイングバックにセンターバック型の選手を配置しようとしている。いざとなったときに最終ラインに下げてディフェンスを厚くできるのと同時に、背の高いセンターバック型を置くことで相手のサイドチェンジを引っかけることもできるのだ。

 望月と菅原たちのようなサイドバック型の選手を比べると、攻撃力はサイドバック型の選手のほうが上だろう。しかし現在の守備を考えたチーム作りのなかでは望月が選択される。

 それでも、これで望月がコアメンバー入りかというと、そうではないだろう。望月はまだワールドカップで対戦するレベルの相手に対して、どのレベルのプレーができるか証明していない。メキシコ戦、アメリカ戦で攻守ともに自分がどんなプレーをできるのか示さなければならない。

 そしてもしも望月が機能しなかったとしたら……。それでも森保監督は続けるのではないか。2024年1月カタールアジアカップで森保監督は鈴木彩艶を起用し続けた。決して安定感があるプレーだとは言えなかったが、監督は「試練を与えている」と言って経験の場を与えた。その辛抱強さが鈴木の成長につながっていることは間違いないだろう。

 望月の身体能力を考えると、今後もチャンスを与えることでさらに大化けする可能性は十分ある。あとはいつも励ましてくれていた長友佑都の気持ちに望月が応えられれば、W杯行きは夢ではない。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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