J複数クラブで争奪戦勃発 すでに正式オファーも…21歳逸材が悔やんだ1年前の”まさか”

筑波大学3年生CB小川遼也「自分の甘さに悔しさしかないんです」
9月3日から大学サッカーの夏の全国大会である第49回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントが開幕する。
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昨年度の大会では準決勝で新潟医療福祉大学の前に0-0からのPK戦で敗れた筑波大学は、今季の関東大学サッカーリーグ1部で2位の好位置につけている。過去3回の優勝を誇る大学サッカーの名門が挑む夏への決意を、プロ注目選手の6人に話を聞いた。
第5回は大学屈指のCBとして多くのJクラブが激しい争奪戦を繰り広げている3年生CB小川遼也について。前回大会、守備の要であるCB諏訪間幸成の怪我でチャンスが巡り、ベスト4進出の原動力となったが、準決勝の新潟医療福祉大戦でクリーンシートを達成しながらも、PKを外して涙を飲んだ苦い思い出がある―。
「新潟医療福祉大戦のPKはまさか7人目の自分まで回ってくるとは思っていなかった。外して負けてしまった事実だけが残った大会になりました」
前回大会は小川にとって、色々な思いが詰まった大会だった。昨年、CBのポジションは福井啓太(大宮アルディージャ)と諏訪間幸成(横浜Fマリノス)という2人の大学屈指のCBがいるかなりの激戦区だった。
関東大学サッカーリーグ1部・第2節の国士舘大戦で、チームは開幕戦の4バックから3バックにシステム変更。その際に3バックの一角として、184cmのサイズと屈強なフィジカルとスピード、そして高いフットボールインテリジェンスを持つ小川が抜擢されると、諏訪間と福井と息のあった連携を見せてクリーンシートで抑えた。
この一戦を機に、周囲の信頼を掴んだ小川は主軸へとステップアップしていった。そして福井が負傷離脱、福井が復帰をすると今度は諏訪間が負傷離脱を繰り返す中で、小川は2人のどちらかが抜けた穴を完全に埋める形で、筑波大のDFリーダーとして急成長を遂げたのだった。
前回大会も諏訪間の負傷で、全試合を福井とのコンビで戦い抜いた。結果はベスト4だったが、4試合で喫した失点は初戦の九州産業大戦での1失点のみ。強固なDFラインを構築したことで、小川の評価はさらに高まり、多くのJクラブが関心を寄せる存在となった。
まさに大きなターニングポイントの1つとなった大会だったが、小川にとっては自身の活躍以上に自分のPKで優勝を逃してしまった悔しさ、PKを蹴る心の準備が出来ていなかった自分の甘さが強く残った大会となった。
「僕の中であの2人の存在はとてつもなく大きくて、まだ越えたとは思っていない存在なんです。諏訪間選手は1人で守れる範囲が自分と全然違うし、迫力、球際、何よりチームを勝たせる守備をしている選手。福井選手もフィジカルも強いし、守備センスもハイレベルな選手。僕が出場をして負けると、『CBが俺じゃなかったら、どうだったんだろう』とネガティブな気持ちを持つことも多かった。でも、その中で2人より攻撃的な部分で違いを見せられると思って、フィードやビルドアップの部分を発揮しながら、守備の部分はあの2人の守備を基準にして磨いてきました。あの2人がいたからこそ、自分も成長できたのは間違い無いので、余計に去年の総理大臣杯で見せた自分の甘さに悔しさしかないんです」
一般入試で筑波大学に進学
小川の成長の起爆剤は心の中にある反骨心にある。富山県で生まれ育ち、高校時代はカターレ富山U-18でプレーする一方で、県内トップの進学校である富山中部高に通い、筑波大学には一般入試で入ってきた。
同年代にはFW内野航太郎(ブレンビー、横浜FMユース出身)、小林俊瑛(大津高出身)、MF徳永涼(前橋育英高出身)、廣井蘭人(帝京長岡高出身)、篠田翼(昌平高出身)、DF池谷銀姿郎(横浜FCユース出身)と全国の舞台で躍動し、年代別日本代表経験もあるスター選手が顔を揃える中で、「最後まで食らいついて行こうと思った」と必死で努力を重ねって行った。
「筑波大に来て、率直にサッカーが面白いなと思えるようになりました。それまでは周りに負けたくなくて、ただガムシャラにやっていたのですが、考えてプレーすることでサッカーってこんなに奥深いのかと感じるし、考えても、考えても、どんどん新たなものが見えてくる。探究心がどんどん湧いてきて、学べば学ぶほど、プレーをすればするほど、言語化ができるようになったし、ある程度パターンや展開が頭に入ると、プレーの再現性も高まってくる。シーンに応じてプレーの引き出しを選べるようになってきている手応えはあります」
ただ量をこなすのではなく、質にこだわり、実際にピッチで起こる現象にこだわって、思考と身体をリンクさせながら努力を積み重ねてきたからこそ、今の小川がある。
「今大会は、あれから1年経ってより成長した自分を示す大会と位置付けています」
積み重ねてきたものの証明を心に誓う小川のもとには、すでに複数のJ1、J2クラブから正式オファーが届いている。その数はまだまだ増えると予想され、小川にとってリベンジの夏はJクラブのスカウトたちにとっても、『小川遼也争奪戦』にさらに火を付ける夏になりそうだ。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。



















