祖母ルーツで「国籍を取れるかも」 日本からの帰化決断…感極まった“試合後の光景”

日本サポーターの声援に応える台湾代表・松永早姫【写真:Noriko NAGANO】
日本サポーターの声援に応える台湾代表・松永早姫【写真:Noriko NAGANO】

台湾の松永早姫「名前を呼んでいただいて本当に光栄ですし、本当に嬉しい」

 憧れのなでしこジャパンとの対戦を終えると、日本サポーターからのエールを噛みしめた。世界ランク42位のチャイニーズ・タイペイは7月9日、韓国で開催されているEAFF E-1選手権で、日本に0-4で完敗。この一戦で台湾の背番号10を背負ったのは、日本で生まれ育ちながら台湾へ帰化したMF松永早姫だった。

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「憧れのなでしこジャパンの方たちと戦ってみて、自分が想像していたプレースタイルで戦ってきました。上野選手だったり愛媛時代に一緒にやっていた選手もいたので、今まで他の外国のチームと戦ってはきたんですけど、結果は負けてしまったものの、私としては懐かしいというかやりやすい感覚はありました」

 千葉県出身の29歳で、なでしこリーグのスフィーダ世田谷FCや愛媛FCレディースでもプレーした松永。昨年から台湾1部の新北航源FCへ移籍し、今年2月に台湾国籍を取得した。元同僚のFW上野真実(サンフレッチェ広島レジーナ)とはゆっくり言葉をかわす時間は無かったが、ハイタッチで健闘を称え合った。

 そして、試合後には日本のサポーターの元へと挨拶に向かった。「やっぱり日本で育ってきて、私も今まで日本のサポーターでしたし、その方たちに名前を呼んでいただいて本当に光栄ですし、本当に嬉しいです。しっかり挨拶できてよかったです」。両手を挙げて声援に応え、感無量といった表情で明かした。

 待ち望んだ舞台だったが、「すごく苦しいという気持ちが正直なところでした」と明かす。前半22分に先制を許すと、同25分には追加点。後半3分、同25分にも得点を奪われるなど守備に追われた。それでも、「苦しい思いはしましたけど、やっぱり楽しいというか嬉しい思いもありました」と試合を振り返る。

「初めから引くのではなくて、今まで自分たちが他のアジアのチームにやってきた前からのプレッシャーをやって、無理だったら引こうという監督の指示もありました。初めから諦めて引くということは私たちもしたくなくて、前から行ったんですけどそれで2失点をしてしまったので、引くという形になりました」

 自分たちのスタイルで果敢に挑んだ結果の完敗に、「悔しいですね」と本音を漏らした松永。「やっぱり台湾はまだまだ日本と同じように体格も大きくないですし、プレースタイルとしては日本を真似するべきことがたくさんあるなと感じています」。自身の日本での経験も台湾に還元し、成長を目指していく。

 帰化のきっかけは、海外挑戦への強い思いからだった。「今のなでしこジャパンの選手たちも海外を主戦場として頑張っている姿を見て、私も刺激を受けていました」。なでしこリーグで約10年プレーし、新たなチャレンジを探すなかで「おばあちゃんのルーツで国籍を取れるかもしれない」と話があったという。

「もう本当に日本語しか話せなくて、去年から台湾に来て中国語を今勉強しています。サッカーの部分はもう問題ないですけど、コミュニケーションの部分でまだ課題はあるので、引き続き中国語は頑張りたいです」

 国籍変更をして未知の環境に飛び込むという決断は、簡単ではないことは想像に難くない。それでも悪戦苦闘しながら、台湾を背負って戦っている。女子ワールドカップでは、8大会連続で予選敗退中の台湾。日本から来た松永が、台湾女子サッカーの新たな歴史を作るのか。挑戦はまだまだ始まったばかりだ。

(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)



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