身長155cm高校生ドリブラー、久保建英に気づき「改めて見ると…」 筋トレで破った壁

155センチながら存在感抜群の平本侑士【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
155センチながら存在感抜群の平本侑士【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

金沢学院大附属の平本侑士「腕をもっと使えるようになったら、俺もうまくなる」

 2大会ぶり2回目のインターハイ出場を決めた金沢学院大附属に155センチのドリブラーがいる。

【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!

「俊敏性や一瞬のスピードは得意なので、そこを生かしていこうと思っています」

 ここまでは小さい選手にありがちな謳い文句だ。しかし、彼を見ていると「その先」にチャレンジしようとしている姿勢が見えた。

 インターハイ石川県予選決勝で「3-4-2-1」の右ウィングバックでプレーするMF平本侑士は、ワイドの位置でボールを受けると、何度も鋭い仕掛けを見せた。ドリブルの特徴は低い重心を生かしたシザーズや細かいボールタッチからの一瞬のスピードで縦を千切ったり、急な方向転換でカットインして行ったりするスタイル。

 それを惜しげもなく披露する彼により目を引かれたのは、その仕掛けを繰り出してからのプレーだった。

 一瞬の駆け引きで相手の前に出ると腕で相手を押さえ込んで、その反動でより前に出たり、イーブンボールに対して先に上半身をぐっと差し入れてから、相手をブロックしながらボールを足元に置いて、そのままぐいぐいと前に行ったりする。

 相当に上半身や腕の筋力を磨き、実戦でフィジカルコンタクトを厭わないプレーを積み重ねないとできないプレー。しかも、それを失敗しようが何度も仕掛けていくメンタリティー。

 右サイドでイニシアチブを取っていくと、2-2で迎えた63分、右ワイド深くの位置で平本がボールを受けると、星稜DFがすかさず中のコースを切りに来た。次の瞬間、これまで対策を打っても仕掛けてくる自分に対する警戒心の強さを逆手に取った。

「どこに仕掛けるかを考えていたときに、FW家邉(凛太朗)が寄ってきていることが分かったので、シンプルにそこを使って、リターンをもらってカットインや、誰かがシュートを打ったこぼれを狙おうと思った」と、ハーフスペースに飛び込んできた家邉へ横パスを送ると、そのまま中央へダッシュして行った。この動きに相手の守備陣も惑わされ、家邉の突破から決勝弾が生まれた。

「警戒心の逆を取ることも意識しています」

 試合後、こう口にした彼にドリブルでの手や身体の使い方について聞いてみると、昨年ぶち当たった大きな壁から自分なりに考えて導き出した道であったことが分かった。

「中学時代から利き足の右だけではなく、左足でもボールコントロールができるようにして、シザーズの精度やフェイント、切り返してからのシュートやクロスの質を意識していました。高校に入るとシザーズからの縦突破、カットインがより武器になっていったのですが、去年トップで試合に出させてもらったのにそれが全然通用しなかったんです。

 縦に行くことができても、その後に潰されてしまったり、相手の前に入ったと思っても、体を当てられてバランスを崩してしまったり、1枚剥がした後のプレーの質が非常に悪かったんです。特に選手権ではそれを痛感して、『このままではまずい。何か工夫しなきゃ』と」

 そのとき、目が行ったのは家邉のプレーだった。ポストプレーや相手を背負ってボールキープしたり、ターンしたりすることが得意だった彼のプレーを見て、「腕をもっと使えるようになったら、俺もうまくなるんじゃないか」と気づいたのがきっかけだった。

 目の前の相手を抜くことばかり考えていた自分に気づいた彼は、そこから上半身や肩回り・腕回りを中心に筋トレをし、ドリブル練習もこれまで避けていたフィジカルコンタクトを自ら仕掛けていくなど、何度倒されても歯を食いしばって果敢に挑み続けた。

 小柄な体格を活かしたドリブルの「その先」を見出し、努力をした結果、ドリブルは進化した。剥がして、押さえ込んで前に出る。剥がして、前に出て、もう一枚剥がして前に出る。このドリブルはずっと憧れていた選手もやっているものだと、進化を遂げた彼は気づいた。

「ずっと久保建英選手が好きで、プレーを見て真似ていました。久保選手は173センチありますが、世界的に見たら小さい部類に入ります。縦突破もカットインも本当にうまくて、高校途中までは久保選手のボールタッチや体の向き、カットインから左足のクイックキックなどを参考にしていましたが、改めて見てみると、腕や上半身の使い方が抜群にうまい。今まで見えなかった細かい技術があるからこそ、今のプレーができているんだと思いました」

 憧れの選手の見方も変化し、よりサッカーの奥深さ、自分の可能性を見出すことができた。155センチのドリブラーは、自分自身に大きな期待を寄せながら、全国でも相手DFを切り裂いて右サイドで躍動を見せる。

(FOOTBALL ZONE編集部)

page 1/1

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング