年代別日本代表の常連…20歳がジャイキリ演出「これは入った」 プロ相手の収穫と課題

筑波大の廣井蘭人【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
筑波大の廣井蘭人【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

筑波大学の決勝点を挙げた廣井蘭人「僕もプロになりたいと強く思いました」

 大学サッカー界きっての名門・筑波大学が天皇杯1回戦でJ2・2位のRB大宮アルディージャを相手に、敵地・NACK5スタジアムに乗り込んで1-0で勝利し、2年連続のジャイアントキリングを達成した。

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 今回、このジャイアントキリングの裏側をピッチに立った選手の物語とともに紐解いていく。第3回目は大宮戦で値千金の決勝弾をヘッドで挙げたMF廣井蘭人について。

「頭に当てた瞬間に『これは入ったな』と思いました」

 0-0で迎えた前半40分。中盤でボールを支配した筑波大において、右サイドハーフの廣井は右のハーフスペースにいた。左中盤で1年生ボランチ・矢田龍之介がボールを持ち、廣井が中に絞っていたことで空いた右サイドのスペースに走り込んだ1年生右サイドバックの布施克真に展開すると、彼は布施のプレー選択に目を凝らした。

「克真が右足で止めて、左アウトサイドに持ち替えた瞬間に、『あ、これは左足でイン巻きのクロスが来るな』と思って、よりニアサイドのゴール前のスペースに絞りました」

 斜め左前にいたFW内野航太郎にマークが集中することを見越して、スッと内側にポジション移動をした廣井の元に、イメージどおりの布施のクロスが届いた。

「あとは合わせるだけだった」とゴール左隅に落とすイメージでバックヘッド気味に首を振った。そして狙いどおりの場所に当たったボールは、イメージどおりの軌道を描いてゴール左隅に吸い込まれた。

 大宮撃破につながった一撃は、敵地・NACK5スタジアムを震撼させた。喜びを爆発させたあとは、仲間たちとともに反撃に転じてくる相手を迎え撃った。

 サイドハーフでありながら、中と外のポジショニングを巧みに使い分け、精度抜群の左足とボールコントロールを武器に、サイドで起点にもなれるし、1.5列目でゲームメーカー、プレーメーカーにもなれる。帝京長岡高時代からずば抜けた攻撃センスを持っており、筑波大でも攻撃で違いを作りだせる存在になっている。

 この試合でもその持ち味を存分に発揮した。しかし、守勢が続いた後半31分に守備を得意とするMF佐野健友と交代を告げられた。

「守備面は僕の課題。時間帯的に守備がメインになったときにどうしても交代の最初の選択肢になってしまうので、そこは今後、自分が見つめ直していかないといけないところだと思います」

 相手のレベルが上がれば上がるほど、耐え忍ばなければいけない時間が多くなる。そのなかで組織の中でいかに効果的な守備のポジショニング、プレスのタイミング、そして連続したプレッシングに行けるかが重要になる。もし彼にそれができるようになったら、タイムアップの瞬間までピッチに立てる存在になれる。彼は勝利の喜びとともに、そのこともこの試合で痛感した。

「この試合は苦しかったけど、本当に楽しかった。だからこそ、最後までピッチに立っていたかった。自分の課題を改めて突きつけられたと思っているので、そこは真摯に受け止めて練習から意識を高く持ってやっていきたいと思います」

 収穫と課題。この両方を掴めただけでも、この試合は彼にとって大きな価値のあるものとなった。

「やっぱりプロは雰囲気が全然違いますね。昨年の天皇杯の町田ゼルビア戦、僕はU-19日本代表でフランス遠征に行っていたので、結果をネットで知るだけでした。続く柏レイソル戦は後半のラスト15分に途中出場をして、延長戦まで戦い抜きましたが、日立台の雰囲気が素晴らしくて、『やっぱりフルで出たい』と強く思いました。今日経験して、当たり前ですが、大宮の選手にとってはこの雰囲気が日常で、むしろいつもより少ないと感じているくらい。それが心の底から羨ましいし、僕もプロになりたいと強く思いました」

 刺激的な時間を過ごした廣井は、次なる相手であるV・ファーレン長崎にも思いを寄せる。

「もうワクワクしかありません。考えただけでワクワクする。ピーススタジアムという素晴らしいスタジアムでサッカーをさせてもらえますし、楽しみでしかない。いい意味で自信もあるからこそ、しっかりと勝つための準備をしていきたいと思っています」

 高校1年生のときから毎年のように年代別日本代表に入り続けている男は、課題から目を逸らすことなく、努力を積み重ねて長崎の地に乗り込んでいく。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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