元日本代表が指摘「正直、うまい選手はたくさん」 主力が海外流出…優勝から遠ざかる名門

ベレーザの宇津木瑠美「うまいだけ、惜しいねで終わるのはもったいない」
日テレ・東京ヴェルディベレーザは優勝争いの直接対決になった5月4日のWEリーグ第20節、INAC神戸レオネッサ戦に0-2で敗戦。今季初出場になったベレーザのベテランMF宇津木瑠美は、若手の多いチームに対して「勝つためには、らしくないことをしなければいけないときもある」と、プロの厳しさと心得を説いた。
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前節終了時点で、3位INACに勝ち点3差をつけて首位に立っていたベレーザは序盤からINACの素早いプレッシャーを受け、持ち前のパスワークを発揮できなかった。その中で前半19分には、空中戦の接触でINACにPKが与えられて失点。さらに前半42分には、ロングボールに対して押し上げてくる相手のプレーに耐え切れず追加点を許して敗れた。他会場で同2位の三菱重工浦和レッズレディースが敗れたことにより、勝ち点45でベレーザとINACが並び得失点差でベレーザが首位を守る形になった。
そのなかで宇津木は後半39分に交代出場のピッチに立ち、今季のリーグ戦初出場をしていた。2011年になでしこジャパンが女子ワールドカップ(W杯)に優勝した当時のメンバーで、15年の準優勝は中心選手として過ごした。その後にフランスや米国でもプレーした36歳のベテランは、「やるべきことをやってきて、そこを評価をしてもらった。家族やチームメート、サッカーをしている限り人の支えがないとできないのは身に染みている」と話した。
ベレーザは主力が次々に海外移籍したことで、能力の高さを感じさせる一方で経験の少ない若手選手が多くを占める。そして、ここまで3シーズンのWEリーグで優勝を果たしていないなかで大きなチャンスがやってきている。その優勝を争う大一番で、PKの判定もどちらとも言えるような判断だった。宇津木は試合後のチームについて「どうしても矢印を外に向けたくなってしまうもの。みんな悔しさのなかで他者への怒りで自分を抑えたいものだと分かる。その勝ちたい思いを力に変える、その力がまだないということ。そこでベテランが引っ張っていければいい」と話す。
そのうえで宇津木は「サッカーには正直、うまい選手はたくさんいる。そのうまさが勝ちにつながるか、選ばれし者になれるか、上に立てるか。それはうまさだけでは無理。プロになった時点で、それを叶える人と、そうでない人での違いがある。うまさをうまさとして見せるタイミングがあったか。うまい選手がうまさを見せられないときが一番、意味がない。自分をどう生かせるのか。プロの世界では生かしてもらうだけでは無理なので、自分のプロデュースの仕方を経験から学ばないと、うまいだけ、惜しいねで終わるのはもったいない」と話した。
ここまでの3シーズン、ベレーザは優勝争いも繰り広げながらいずれも3位で終わった。その要因に、INAC、浦和といったリーグ優勝を争う相手との直接対決に一度も勝利できていないことも挙げられるだろう。宇津木は「今年は(優勝を)形にできるかもしれない位置にいるので、ものにしたい」と話す。そして「サッカーなので勝ち負け。勝つためには、らしくないことをしなければいけないときもあるかもしれないけど、90分の中で勝つために何を選択しなければいけないかがプロの選手として求められる。それをもう一度、考えながらやれたら」と話した。
U-17女子代表や、U-20女子代表に名を連ねる才能が出場メンバーに名を連ねる名門のラスト2試合、ベテランの言葉がチームに響くか注目される。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)