日本サッカー界が持つべき「危機感」 注目度・人気の低下傾向への対策は?【前園真聖コラム】

注目度・人気の低下傾向への対策は?【写真:徳原隆元】
注目度・人気の低下傾向への対策は?【写真:徳原隆元】

ヨーロッパで活躍している選手も万人に分かってもらうのは困難

 1996年3月、多くの注目を集めるなか、マレーシアでアトランタ五輪アジア最終予選が開催された。U-23日本代表は、当時この世代でアジア最強と呼ばれたU-23サウジアラビアを2-1と下して本大会出場を決める。日本が五輪に出場するのは1968年以来のことだった。その後、日本は連続して五輪出場を決めている。だが、果たして当時に比べると現在の予選への注目度はどうなのか。引いては日本サッカーへの人々の関心は低下していないのか。28年ぶりの五輪出場を2ゴールでたぐり寄せた元日本代表MF前園真聖氏は心配を口にする。(取材・構成=森雅史)

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 今、テレビに出る時に気を付けていることがあります。それはサッカー関連の番組ではない時、名前を挙げる選手を誰にするかということです。選手の名前を挙げても、共演者の方々からの反応が微妙な時があります。たぶんご存じないのです。

「カズさん」(元日本代表FW三浦知良/UDオリヴェイレンセ)と言えば、みんな分かってくれます。ですが、ヨーロッパで活躍している選手でも難しいことがあります。日本代表選手でも、全員知られているとは限りません。たぶん、みんなあまりサッカーを見ていないのです。日本代表戦が行われる時に見るくらいなのではないでしょうか。

 これはサッカーの世界にどっぷり入っていると見えにくいことではないかと思っています。野球も同じだと思うのですが、中継が有料放送に移行して、ライト層がスポーツに触れる機会は減っています。そのため、サッカーや野球が好きな人は有料放送でたっぷり見ることができるものの、ファンの裾野を広げるのは難しくなっているのです。

 今回のU-23日本代表も、本当ならこれまでの中で最も厳しいと言える五輪予選ですからもっと注目が集まっていいのでしょうが、現実問題として、今のところそこまでではありません。明らかにアトランタ五輪の頃とは違ってきていると思います。

 もちろんJリーグや日本サッカー協会(JFA)は現状に手をこまねいているわけではなく、いろいろな地方局のサッカー番組を支援するなどの方策を採り、かつてのようなサッカー人気を取り戻そうとしています。ただ、それでもまだ足りないくらいの「危機」ではないかと思うのです。

 その危機感をサッカー界はもっと持たなければならないでしょう。特に選手はそんな状況だと気付きにくい環境に置かれています。練習場、試合会場にはファンの人が詰めかけて、その光景だけ見ていれば、まだまだ安泰だと思えるからです。

 ですが、チケットが売れない、スタジアムが満員にならないという現実に目を向けなければいけません。僕も番組の取材という立場でサッカーの現場に行くようになり、そういう部分が見えるようになりました。

 そこでいくつか思うことがあります。例えば、僕が現役だった時代に比べると、今は取材の時間や場所などいろいろな制限が付くようになったと感じました。それは選手のコンディションをより重視するようになったからかもしれません。

 でも選手は10分、20分の取材だったらしっかり対応したほうがいいと思います。たしかに練習や試合で疲れているでしょう。ですが、そんな時間の対応だったら体調に影響はありません。それより取材対応しないことで、いろんな人に自分という選手を知ってもらう機会を失ってしまうのです。

 そうやって選手も気を付けて自分たちの知名度を上げ、さらにはサッカーの人気を高めていくことが、今求められている気がしてなりません。同じように、いろんな場面でサッカーを知ってもらうことがもっとできるのではないでしょうか。日本サッカーをよりよくしていくために、ぜひサッカー界みんなで考えていきましょう。

(前園真聖 / Maezono Masakiyo)



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前園真聖

まえぞの・まさきよ/1973年生まれ、鹿児島県出身。92年に鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。96年のアトランタ五輪では、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」などをチームのキャプテンとして演出した。その後、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)、湘南ベルマーレの国内クラブに加え、ブラジルのサントスFCとゴイアスEC、韓国の安養LGチータースと仁川ユナイテッドの海外クラブでもプレーし、2005年5月19日に現役引退を表明。セカンドキャリアでは解説者としてメディアなどで活動しながら、「ZONOサッカースクール」を主催し、普及活動を行う。09年にはラモス瑠偉監督率いるビーチサッカー日本代表に招集されて現役復帰。同年11月に開催されたUAEドバイでのワールドカップ(W杯)において、チームのベスト8に貢献した。

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