浦和“ヘグモ流”でスタートダッシュ失敗…4G打ち合いの展開は「大味」に過ぎない【コラム】
【カメラマンの目】ピッチ上から見たヘグモ監督率いるチームの戦いぶり
現代サッカーにおいて、チームの流れが停滞している時によく見られる光景がある。ゴール裏からカメラのファインダーを通して見るその光景は、ボールを持った選手が前線にいる味方が相手の激しいマークを受けることによって出しどころを失い、インサイドキックで横に逃げるパスを出す姿だ。
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言うまでもないがこのボール回しに攻撃への威力はない。ボールをキープしているとはいえ、次の一手に困って逃げるパスではチームの攻撃は活性化されない。
J1リーグ第4節、湘南ベルマーレ対浦和レッズの序盤で、攻撃が停滞し威力のないボール回しを強いられたのはホームチームのほうだった。これは浦和の守備陣が湘南の攻撃陣をマークして動きを封じていたことを示している。
浦和は湘南の戦い方を見るように慎重に試合を進めていった。しかし、この展開は長くは続かない。結果、試合は点の取り合いとなり4-4の引き分けに終わる。では、両チーム合わせて8ゴールを記録した試合を、壮絶な打ち合いと単純に表現することができるのかと言えば、必ずしもそうではない。試合を引き締められる選手の不在により、大味となった内容を高く評価することはできない。
そうした内容の試合において、浦和の選手のなかで目に留まったのが右ウイングのポジションを務めた前田直輝だ。試合序盤のスローペースの展開でも積極的にドリブルで湘南守備網に挑み、チームにアクセントを加えていた。
後半19分にはゴールも挙げた。その得点は3-3の同点とした状況だけでなく、ドリブルで切り込みシュートを叩き込んだ豪快さと合わせて、浦和の士気を一気に上昇させた。しかし、そのわずか2分後に殊勲の同点ゴールをマークした背番号38は、交代によってピッチを去ることになる。
前田は先発出場した前節の対北海道コンサドーレ札幌戦で、負傷交代していることからコンディションが万全ではなかったのかもしれない。選手に無理はさせられないが、試合には流れというものがある。3-3の同点ゴールが生まれた時の逆転への思いが高まった浦和の雰囲気を考えると、そのまま前田がピッチに立っていたら、また違った結果が出ていたかもしれない。
開幕から4試合で1勝2分1敗、浦和はこの先浮上できるか
ただ、浦和はチーム全体としては、選手たちの能力を存分に発揮しているとは言えない。チームを指揮する監督にはそれぞれ好みの選手がいる。そうした自分のスタイルに合致すると判断した選手を積極的に起用する。場合によっては選手起用やフォーメーションで、従来の概念に捉われず変化をつけることによって、チーム向上のヒントとなることもある。そうした明確な方向性や決断は、チームを先導する人物には必要だ。
しかし、その思いを貫き過ぎるとチームにとってマイナスとなるケースもある。サッカーには絶対の正解はない。さまざまな勝利への方法が存在するのだから、チームを預かる監督が他者と先発メンバーや選手の起用法で相違があるのはサッカーの世界では常のことだ。
ペア・マティアス・ヘグモ監督を迎えて今シーズンを戦う浦和はリーグ開幕から1勝2分1敗とスターダッシュには成功しなかった。
サッカーは練習と試合は別物だ。公式戦でしか知ることができないこともある。そのため選手起用や布陣を公式戦の場で試すこともある。
だが、公式戦で適材適所を見極める作業を続けるわけにもいかない。リーグ4試合を消化して、より良い形を模索するヘグモ監督も実戦における選手たちの特徴が見えてきたと思う。
ここからは結果を求めて、チームがより強力になる布陣や戦い方を推し進めることが指揮官としての仕事になる。
(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)