J1名古屋が“大幅チェンジ”、新戦力がいきなりハマる予感…開幕予想11人&布陣は?【コラム】

プレシーズンマッチでFC岐阜と対戦(写真は昨季のもの)【写真:Getty Images】
プレシーズンマッチでFC岐阜と対戦(写真は昨季のもの)【写真:Getty Images】

FC岐阜とのプレシーズンマッチで見えた興味深い新戦力のプレー

 ルーキー含め大量13名もの新戦力を迎え入れた2024年の名古屋グランパスは、中谷進之介(→ガンバ大阪)や森下龍矢(→レギア・ワルシャワ/ポーランド)、藤井陽也(→コルトレイク/ベルギー)ら昨季主力が移籍したインパクトもあって生まれ変わりの印象も強い。

 2月10日に行われたFC岐阜とのプレシーズンマッチに臨んだスタメン11名にも最終ラインにハ・チャンレ(←浦項スティーラース/韓国)、中盤に椎橋慧也(←柏レイソル)、両ウイングバックも山中亮輔(←セレッソ大阪)と中山克広(←清水エスパルス)の4人の新戦力が起用され、昨季とは明らかに違う姿のチームであることを再認識させた。

 試合は前半14分にセットプレーから失点し、追う展開のなかで同32分、後半8分と巻き返しての逆転勝利。その流れを生み出した理由はいくつかあれど、1つの指標として興味深いものがあったのが中山の動きだった。

 清水から移籍してきた中山は持ち前の俊足を活かして右ウイングバックのポジション争いをリードしてきた存在で、キャンプ序盤は昨夏チームに加わった久保藤次郎との日替わり起用がもっぱらだったが、ゲーム形式が入り始めたところでスピードを活かした突破力が新たなチーム戦術にはまり、以降は主力組での起用が続いてきた。

 今季の名古屋は攻撃時にシステムを可変させるビルドアップに取り組んでおり、変形の流れは“右肩上がり”。つまり右ウイングバックがウイング的に敵陣深くをえぐる形が多く、ドリブルも背後を取るランニングでも違いが出せる中山の特徴がばっちりはまった格好だ。

 だが、岐阜戦の序盤は相手の迫力のあるプレッシングにビルドアップが圧され、低い位置で停滞することが多く、いつものような中山を走らせるパスがなかなか出てこなかった。謙虚なるウインガーは「僕の動きも出し手からしたら足もとに欲しいのかなっていう動きになっちゃってたかもしれない」と反省したが、アクションの少ない攻撃の構築に、韋駄天の足は封じ込められてもいた。

 だが、途中出場の野上結貴がビルドアップを改善し、右サイドを中心に攻撃のリズムとテンポが生まれると、中山の動きも変化し、サイドで勝負する場面が増えていく。

 チームは3-4-3へと形を変えて相手の動きに対応しており、中山のオリジナルポジションは従来よりもやや低くなってはいたが、「特にそういう指示はなかったんで、そこは全然(笑)」とノーストレスで右サイドを駆け上がりチャンスに絡んでいった。

 前半32分には左サイドからの崩しが一度跳ね返されたところに飛び込み、バイタルエリア付近でボールを奪い返すと左足を迷わず振り抜き同点ゴール。「こぼれてきた瞬間に止めて左足で打つっていうイメージはあったんです。ファーストタッチがうまくいかなかったけど、ツータッチ目でうまく良いところに置けたので、イメージどおりのシュートが打てました。落ち着いてましたね、あの瞬間は」。移籍後初得点はゲームを巻き返してきたチームにさらなる勢いを与える、価値ある一撃だった。

右サイドのライバル関係は「見ていて気持ちが良い」

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「練習試合でも点が取れてなかったんで、そういったなかでは今シーズン初めて試合で結果が出せました。そこはプラスですね。かなり自信につながると思います」

 この言葉にはとある背景がある。今季名古屋の右サイドのポジション争いは、実に見ていて気持ちの良いライバル関係が築かれている。直接のライバルではあるものの、時に練習後にドリブル談議をし、ストレッチなどでも一緒になることが多く、コミュニケーションを取っている姿も頻繁に見る。

 久保は「ギブアンドテイクというか、良いところはしっかり話して、プライベートは仲良く。ただピッチでも仲良しこよしでやってるのはちょっと違うと思うので。1対1とかになったら絶対負けたくない」と笑顔で話し、中山もまた、「得点を取ってなくても、藤次郎のプレー見てるだけで、もうすげえなアイツって思います。自分もあとは結果っていうところを、もっと伴っていければいい」と互いへのリスペクトが止まらないのがこの2人なのだ。そして「自分もあとは結果というところを伴いたい」と言っていたからこそ、中山は岐阜からもぎ取ったゴールに自信を掴んだ。

 このプレシーズンマッチで中山はスタメンで62分出場1得点、久保は中山に代わって入って追加タイム合わせて約30分プレーし、持ち味のクロスから決定機を1つ生み出した。中山は出場時間の終盤に増えた1対1の仕掛けについては「ちょっとまだ(苦笑)。自分から遠くにボールが行っちゃうような感じだった」と首をかしげたが、沖縄キャンプから数えれば8日間で3試合目という疲労のピークにあった影響もあったはず。むしろその状況で試合中の急なフォーメーション変更に対処しつつ、“イコライザー”を仕留めてきた仕事っぷりはまた指揮官からの評価を高めたに違いない。

 沖縄で見た中山のプレーはもっと速く、もっと鋭く、右サイドを切り裂く魅力があった。今季の右肩上がりのシステムにおいて、“一番槍”となるポジションが彼だけに、その存在感はここから増していくだろう。穏やかな語り口と冷静な分析力でコメント力も高い、新たなる名古屋の右の翼は今後も注目しておいて損はない。

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今井雄一朗

いまい・ゆういちろう/1979年生まれ。雑誌社勤務ののち、2015年よりフリーランスに。Jリーグの名古屋グランパスや愛知を中心とした東海地方のサッカー取材をライフワークとする。現在はタグマ!にて『赤鯱新報』(名古屋グランパス応援メディア)を運営し、”現場発”の情報を元にしたコンテンツを届けている。

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