劣勢でも冷静、負けても淡々 韓国人記者が森保ジャパンに覚えた“違和感”「衝撃だった」【現地発】

日本代表は守備面で不安を露呈【写真:ロイター】
日本代表は守備面で不安を露呈【写真:ロイター】

GKの世代交代を「メジャー大会ですべきだったのか」

 韓国のニュースエージェンシー「NEWS1」のキム・ドンヨン記者は、アジアカップの日本代表戦に通って熱心に戦いを分析していた。2月3日に行われた準々決勝のイラン戦にも足を運び、日本の敗戦(1-2)に首を振りながら「本当に残念だ。決勝で戦いたかった」と暗い顔で語りかけてきた。

 敗戦から一夜経ち、キム記者は今大会の日本について詳しい意見を教えてくれた。

「日本は依然として優れた技術でボールを保持する現代的なサッカーを披露しました。ワールドカップ(W杯)の時にしばらく放棄していた能動的でキープ率の高いサッカーを再び披露したと思います。これまで問題視されていた最前線の攻撃陣も、上田綺世の活躍で多くを解決した様子でした」

 まずは日本をそう高く評価したあとに、疑問点を口にする。

「残念なのは守備でした。鈴木彩艶は経験が少なく、ハイボールに弱かったと思います。GKは重要なポジションですが、メジャー大会で世代交代をすべきだったのかという疑問もあります。また、日本らしくなく守備でミスする場面が多く、それが失点につながる場面も多く見られました。イラン戦も守備から出た2つのミスが致命的でした」

 準々決勝では、日本が終了間際の失点で敗退した。一方の韓国は延長前半14分にソン・フンミンがフリーキック(FK)を直接決めて、オーストラリア相手に勝利を掴んだ。この大会での両者の差はどうやって生まれたと考えているのだろうか。

「韓国と日本の違いは、切実さが一番大きいと思います。韓国では、大会前から一部の日本選手がアジアカップ参加に大きな意味を置いていないというインタビューが話題になりました。一方、韓国は64年間獲得できなかった優勝のために、ソン・フンミンやイ・ガンイン、キム・ミンジェなど全員が集中しています。これは試合の終盤にもよく表れていたと思います。韓国は1点ビハインドでも最後までなんとか挽回しようとしました。それが(ともに終了間際のゴールで延長に持ち込んだ)サウジアラビア、オーストラリアとの試合でよく現れていました」

「一方、日本は試合に負けてもそれを逆転させる力や意志があまり見られなかったと思います。時間がなく、1ゴールが必要な状況でも落ち着いて冷静な姿にとても驚きました。闘志を感じることができなかったからです。またイラン戦の敗戦後、日本の選手たちが淡々と競技場を去る姿も私にとっては小さな衝撃でした」

途中離脱となった伊東純也【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
途中離脱となった伊東純也【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

伊東純也の離脱も大きく影響

 闘志を前面に出す韓国選手に対して、感情をうちに秘める日本人選手は奇異に映ったのは間違いない。そして、大会期間中に他国の記者をも驚かせた出来事が影響したのではないかという。

「大会中に出た伊東純也の報道もチームに影響を与えたと思っています。日本サッカー協会(JFA)と森保一監督の決断と発言に韓国の記者たちは大いに驚きました。このような部分もチームに影響を与えたのではないかと思います」

 大会開始前からキム記者は、韓国チームのコンディションの良さが好材料だと語っていた。果たして、韓国は念願の優勝を手に入れられるだろうか。

「韓国は64年間優勝を待っていました。そして、いい選手もいます。韓国内では『今回優勝できなければ、いつまた優勝できるのだろうか』という話もあるくらいです。もちろん、大会が始まってから何度も不振と失望的なプレーを繰り返しているため、優勝を保証することはできません。さらにヨルダン、イラン、カタールなど4強に入ったチームはすべて強敵です。また、中東ファンの応援とも戦わなければいけません。今、韓国はベンチよりも選手がピッチの上で見せる意志と瞬間的な判断などに大きな期待を寄せています」

 最後はユルゲン・クリンスマン監督への皮肉も入りながらキム記者の話は終わった。監督が大変なのは日本も韓国も変わらないようだ。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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