天皇杯の勝敗を分けた“GKの差” 柏の守護神が実感「止められてしまったのがすべて」

柏の松本健太【写真:徳原隆元】
柏の松本健太【写真:徳原隆元】

両チーム10人目のキッカーをGKが務めた

 天皇杯決勝が12月9日に行われ、柏レイソルはPK戦の末に川崎フロンターレに敗れ、2012年度以来の優勝を逃した。0-0で迎えたPK戦では両チーム9人が蹴っても決着がつかず。フィールドプレーヤーに負傷者が1人出ていたため、両チーム10人目のキッカーをGKが務めることになった。

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 先攻の川崎GKチョン・ソンリョンが決めたのに対し、柏のGK松本健太がゴール左に蹴ったボールはGKチョン・ソンリョンに阻まれ、この瞬間に勝敗が決することとなった。延長までの120分間、川崎を無失点に抑えただけでなく、PK戦でも元フランス代表FWバフェティンビ・ゴミスとDF登里享平のシュートをストップした松本は本来のゴールを守るという仕事をやり遂げて、ヒーローになるはずだった。しかし、2度のリードを生かせず、最後は松本自身がPKを止められてチームにタイトルをもたらせなかった。

 試合後、ミックスゾーンで取材に応じた松本は「この試合は忘れられないというか、忘れちゃいけないし、自分にとって忘れられない、すごい試合になった。この天皇杯でのこういうダメージは、また来年以降に天皇杯を優勝することでしか消化することはできないと思う。リーグ戦も今年は不甲斐ない結果(17位)に終わりましたし、来年以降、1人のサッカー選手として、もっとレベルアップして、もっと隙のない選手になっていかないといけない」と、反省を述べる。

 続けて「強い気持ちを持って。もちろんショックはありますけど、もう下を向いている暇もないと思うんで。もう下を向くだけ向いたので、ここからはしっかり前を向いて、上を向いて、自分がもっと良い選手になれるように、日々、努力をしていければいいかなと思います」と、この日の悔しさをバネに成長を誓った。

 松本はゴール左に向かってシュートを蹴ったが、「カップ戦前にPKの練習をします。GKの方だけじゃなくて、僕も蹴る方の練習はしていたなかで、今日止められた方に蹴ることはあらかじめ僕のなかで決めていました。練習通りに蹴りましたが、チョン・ソンリョン選手に上手く読まれて、止められてしまったのがすべてかなと思います」と、この場面を振り返った。

決勝舞台での手応えと、勝敗を分けた両チームの差

 悔しさもあった一方で、決勝という舞台で自身のパフォーマンスを発揮できたという手応えも得られた。PK戦、松本は先述の2本のシュートに加え、古巣対戦となっていたMF瀬川祐輔のシュートも一度は止めていた。キックの前にゴールラインを越えていたということで蹴り直しとなり、2本目のシュートを瀬川に決められたが、10本中3本のシュートを止めていた。それができた背景には、分析があったという。

「川崎さんに関しては、ACLだったり、天皇杯でもPK戦があったので、スカウティングのデータがほかのチームよりも多くありました。そのデータをもとに、ライン上で駆け引きして、止めたシーンに関しては上手く止められたと思います。最初の瀬川くんの(シュート)を(前に)出ちゃったのは残念ですが、自分としては良い駆け引きができたから1本目止めることができたと思うので。そういうデータはありました」

 PK戦は、川崎のサポーターが陣取るサイドのゴール前で行われたが、逆サイドの柏のサポーターからの声も、松本には届いていたという。

「チームとしても本当に久しぶりのタイトルの懸かった試合で、サポーターもアップで入る時から気持ちが入っていましたし、試合120分間、それにPK戦も川崎さんの方でやりましたが、僕のところにまでちゃんと声は届いていました。そういった最後の終わった後の挨拶も、ショックで見ることはできませんでしたが、いろんな人が声をかけてくれました。リーグ戦も苦しかったですし、最後にタイトルを取るというプレゼントを渡すことができなくて、悔しい気持ちでいっぱいですけど、本当にそんななかでもああやって最後まで僕ら選手を支えてくれたことには、感謝しかありません。来シーズン以降、しっかりタイトルを争いができるチームを、またイチから作り上げていき、来年以降は今日の川崎さんが喜んでいたように、ああいう喜びを分かち合えたらいいなと思います」

 決勝という舞台で、シュートを決められて悔しい思いをしたGKは数多いだろうが、シュートを決められなくて涙を流したGKは、極めて珍しいだろう。この日の両チームにあった差を問われ、「最終的にPKで、僕が最後まで止めきることができなくて、最後にチョン・ソンリョン選手が僕のシュートを止めた。その差に限ると思います」と、敗戦の責任を受け止めた松本は、きっと来シーズン、さらに頼もしい守護神として柏のゴール前に君臨するはずだ。

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