堂安律が捉える森保ジャパンのポジション争い「もちろん悔しい」 “葛藤”乗り越え導き出したアンサー【コラム】

日本代表の堂安律【写真:高橋学】
日本代表の堂安律【写真:高橋学】

10月シリーズはコンディション不良だった堂安が復帰

 日本代表MF堂安律は11月15日、2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選の初戦となるミャンマー戦に向けて取材に対応した。10月シリーズは親知らずの痛みのため、コンディションが整わずに選外だった。復帰となった堂安は、所属クラブのドイツ1部フライブルクで徐々に調子を上げて合流。好調な森保ジャパンでの競争や自身の立ち位置について素直に話した。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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 堂安はいつでも自分の思うまま、心の動くままにプレーし、行動してきた。だからこそ今日本の10番を付けている。2018年ロシア・ワールドカップ(W杯)のメンバー発表の日にインタビューした際、2年後に予定されていた「東京五輪で10番を背負うこと」を目標として口に出していた。そして行く行くは日本代表の10番を付けることも宣言した。自分の思うことを周囲に正直に話し、体現してきたのが堂安だ。

 だからこそ、堂安の話す言葉は信じられる。9月、森保ジャパンはドイツ代表とトルコ代表と対戦した。ドイツ戦では途中出場だった堂安は、トルコ戦で先発するも前半に受けたチャージで痛めた影響もありハーフタイムに交代。2試合通しての出場時間という意味では、アクシデントもあるなかでなかなか確保できなかった。

 右ウイングのライバルは伊東純也で、森保ジャパンにとって欠かせない存在となっている。久保建英も10月シリーズの際に「トップ下のほうがいいと思いますけどね。右に伊東選手がいるほうが相手からしたら脅威なのかなと。右で勝負したい気持ちがなくはないけど、勿体ないかな」と話すなど、伊東の存在は大きい。

 そのなかで自身はやはり悔しさを実感していた。

「もちろん悔しいですよ。もちろん、ストレス溜まっています。スタメンじゃなければ、イライラしますし。ただ誰のせいでもない。全部自分のせいなので。自分に焦点を合わせながらやっています。割り切ってと言ったら丸くなってるように聞こえがちですけど、自分のことを素直になりながら、感情は常にあえて表に出すようにはしています」

 9月のチュニジア戦前日と試合後の取材エリアで堂安は対応をしなかった。この日その理由を「感情をそのまま出しちゃうタイプなので」と笑ったが、その当時は自分自身と葛藤していたと想像つく。選外となった10月は2試合ともテレビで観戦。その10月シリーズで日本代表の10番は不在だった。堂安へのメッセージだったのだろう。

「特に代表の方と話したわけではないですけど、もちろんテレビ上で見ていて、(10番の不在は)目で見えるものなので、ひしひしとメッセージは自分の中で受け取ったつもり。いろいろ考えや思いは自分中で10月整理をしましたけど、元に戻って、やることは変わらない。毎回言っていますけど敵は常に自分で、同じポジションの選手もでもないし、もちろん対戦相手のミャンマーとかいろいろありますけど、常に自分に焦点を合わせながらやれれば。そうすると、自分の理想の選手になっていけると思う。それは言い聞かせています」

 ベクトルを自分に向けてもう1度気合いを入れなおした10月。コンディションも挙がり、10月21日のブンデスリーガ第8節ボーフム戦で今季初ゴールを記録。26日のUEFAヨーロッパリーグ(EL)グループステージ第3節バチュカ・トポラ戦でアシストをマークし、11月9日のEL第4節バチュカ・トポラ戦でも得点した。コンディション、調子ともに上昇傾向にある。

「代表前は試合にも出たり出なかったりで、かなりコンディション的にも良くなかった。10月の代表戦後ぐらいから少しずつコンディションも上がってきて、プラス結果も少しずつ出るようになってきた。いい調整で少しずつ風向きが変わってきてるかなと思いながら。ただ、自分の経験で、こういう時期が一番大事というのは自分が一番知っている。ネガティブにならず、どう克服してやろうか、と思いながら。楽しみながら過ごしていました」

堂安を成長させ続けるのは「チャレンジ精神」

 堂安にはそのチャレンジ精神がある。常にベクトルが自分に向いているという堂安だが、2017年のU-20W杯の際に当時15歳だったMF久保建英に注目が集まっていると、「終わった時には堂安の大会だったと言わせてみせる」と自身にハッパをかけた。プレッシャーをかけて乗り越えなければいけない壁を設定し、必ずそれを越えてきた。

「こっち(チャレンジャー)が自分の性に合っているかな。自分は今までチャレンジ精神を持ってやってきましたし、1度でも自分が天才と思ってキャリアを歩んできた覚えがない。あとは自分が調子悪い時とか、不調の時でも『なんか堂安やってくれるんじゃないか』とみんなが思ってくれていると勝手に自分で思っている。だからこそ、そういう期待は持たせる選手になりたいと思いますし、魅力ある選手になりたいと思います」

 いよいよ始まるW杯予選。前回も経験する予選だけに、もうただの“若手”ではない。アジアに対するイメージも固まっている。

「前回(2019年9月の)はアウェーの時はかなり苦戦しましたけど、特に立ち上がり、非常に大事になってくる。自分の経験上、こういう相手に引かれてボールを持てる分あまりリスクを冒さずに仕掛けないで、ボールをずっと握っちゃう傾向にあって、気が付けば45分経っている……みたいな。サポーターとか周りが『ミャンマー相手にこうなっちゃっている』という雰囲気になって、ストレスが溜まる……というのが経験上ある。最初の立ち上がり10分ぐらいからロングボールが必要だと思ったら蹴っていいと思うし、事故を起こしてくれる相手でもあると思うので、そういう事故を自分たちから起こさせに行くアクション、必然的に起こさせるようなプレーは大事かなと思う」

 それも自身の立ち位置を理解し、整理できているからだ。

「こうやって自分の経験上という話をできるのも今まで経験したからだと思うし、ただフレッシュさを忘れたら自分の良さもなくなるので、いい意味でエゴイストさはなくさずに自分の良さを生かしながら、経験も還元していけたらなと思います」

 熾烈なポジション争いを勝ち抜く覚悟を示した堂安は、アジア予選で必ず結果を出してくれるはずだ。

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