神戸の決勝弾、オフサイド見逃しは「副審も少し気の毒」 日本代表OBが指摘「なぜ映像がVARでないのか疑問」【見解】

栗原勇蔵氏が大迫勇也の決勝弾に見解【写真:Getty Images】
栗原勇蔵氏が大迫勇也の決勝弾に見解【写真:Getty Images】

【専門家の目|栗原勇蔵】副審に位置取りミスはあったが、VAR介入も想定した判断か

 11月12日に行われたJ1リーグ第32節の浦和レッズ対ヴィッセル神戸は神戸の劇的勝利となったが、FW大迫勇也の決勝ゴールがオフサイドだったのではないかと反響を呼んだ。元日本代表DF栗原勇蔵氏は、「結論はオフサイド」と指摘している。

 議論となっているのは、1-1で迎えた後半アディショナルタイムのシーンだ。浦和が右サイドのフリーキックを得ると、GK西川周作が前線に攻撃参加。ファーサイドを狙ったMF中島翔哉のキックに西川も競り合うが神戸GK前川黛也がキャッチすると、前川が素早く前につないでFW大迫勇也が無人のゴールへシュート。これが決まり、神戸が2-1で勝利する決勝点になった。

 競技規則の上でこのプレーは、浦和陣内にDF大畑歩夢しかいないため、オフサイドラインはハーフウェーラインになる。日本代表OBの栗原氏は、「結論はオフサイド。いろんなものが重なって、結果的に誤審のようになってしまった」と指摘した。

 スポーツチャンネル「DAZN」の判定検証番組「Jリーグジャッジリプレイ」では、中継やビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)では使用できない高い位置からピッチの大部分が映るようになっているスカウティング映像からこのプレーを検証。前川がキックした瞬間に大迫は、足が地面と接地する部分を自陣に残そうとはしているが、上半身がハーフウェーラインを越えて敵陣に入り込んでいることが明らかになっていた。

 副審は本来であれば、ハーフウェーラインの延長線上にステイしていなければいけないが、浦和ゴール方向に動いてしまっていた。栗原氏は「スカウティングビデオを見るとオフサイドだと明確に分かるけど、今のルールでは使えない。なぜ映像がVARでないのか疑問に思いました。副審は少し気の毒でしたね」と話す。

「GKが上がっていると一番うしろの人がオフサイドラインと勘違いしがちですけど、今回はハーフウェーラインがオフサイドライン。そこを先に理解しないとオフサイドの議論にならない。オフサイドラインに位置を取っていないといけないところは副審のミスですが、今はVARがある時代。自分の判断で即座に旗を挙げない(オフサイドディレイ)というのも分かる。副審としてはVARに入ってほしかったところでしょう。正直、ハーフウェーラインにいたとしても、しっかりと見れたか分からない」

 神戸戦の黒星で今季のリーグ優勝の可能性が消滅した浦和にとって厳しい判定となったのはもちろんだが、それ以上に2位の横浜F・マリノスのほうが痛手になったと栗原氏は語る。

「神戸は最低引き分けでもいいというのも理解できるし、レッズもそこで点を取らないと優勝確率ゼロになってしまうのでGKが上がる選択は理解できる。神戸GK前川黛也のいいプレー、大迫のナイスプレー、そして誤審も重なった。浦和は意識的にリスクを負って勝ちに行っている。浦和よりもやるせないのはF・マリノスのほうでしょう。F・マリノスからしたら『GK上がるなよ』『オフサイドでしょ』とダブルパンチ。神戸が引き分けていたら勝ち点で並んでいたので、F・マリノスが一番痛いと思います」

 リーグ戦も残り2試合、優勝の行方に大きな注目が集まる。

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栗原勇蔵

くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

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