なぜ町田はJ2首位なのか 途中加入の松井蓮之が語るベテラン太田の影響力「宏介さんがいたからこそのFC町田ゼルビア」【インタビュー】

松井蓮之がチームの一体感を語った【写真:(C) FCMZ】
松井蓮之がチームの一体感を語った【写真:(C) FCMZ】

開幕前、シーズン中に選手が入れ替わるなかで一体感を作り上げたベテラン太田

 J2リーグで首位に立つFC町田ゼルビアに所属する元日本代表DF太田宏介が、今季限りで現役を引退することが10月3日に発表された。彼の最後のチームメイトとなる町田の選手は、どんな思いを持っているのか。今夏、J1川崎フロンターレから育成型期限付き移籍で加入したMF松井蓮之は、その影響力の大きさを感じている1人だ。

 プロサッカー選手になって2つ目のクラブである町田について、松井は「本当に雰囲気が良くて、チームが一体となって試合に勝ちにいくチーム」と表現する。

「個人の能力が高いチームって、少しバラバラになりがちだと思うんです。でも、町田はそうじゃなくて、個人の能力が高い選手が集まったなかで、1つのチームとして練習もそうですし、試合にも臨んでいます。1人のミスを全員でカバーするとか、そういうことはしっかり意識づけされていますし、やっていてみんなでサッカーをしているなって感じます」

 今シーズンの町田は、開幕前には19人の選手を補強。シーズン中にも松井をはじめ、DF鈴木準弥、MFバスケス・バイロン、FW藤尾翔太、さらにFWアデミウソンといった選手を補強している。それでも一体感が出ているというのは、なかなか驚異なことである。

「選手1人1人が、ベクトルを自分に向けているというか。自分もそうですが、手を抜く選手がいません。サッカーが好きというか、FC町田ゼルビアのためにサッカーをしているなというのは、すごく感じます。試合に出ている人、出ていない人関係なく、同じモチベーションでやっているからこそ、今、首位にいるんだというのは日々、感じています」

 そんなチームの雰囲気を作り上げている選手の1人が、太田だという。

「みんな言っていますけど、ベテランの太田宏介さんとか、中島裕希さんとかが、背中で引っ張ってくれる。キャプテンのマサさん(奥山政幸)もそうですし、少し年上の選手たちがチームがどうやったら良くなっていくか、そういったことを背中で見せてくれますし、何かあったら相談もすぐ聞いてくれます。それを選手間だけではなく、スタッフとも話して、スタッフとも意見交換ができるので、そういったところがチームの強みだと思います」

松井蓮之の初ゴールをアシストした太田宏介【写真:(C) FCMZ】
松井蓮之の初ゴールをアシストした太田宏介【写真:(C) FCMZ】

太田は松井のプロ初ゴールをアシスト

 松井にとって太田は、キャリアでも生涯忘れられないチームメイトの1人だろう。何せ、松井のプロ初ゴールのアシストをしたのが太田なのだ。川崎から町田に加入した松井だが、シーズン中の移籍ということもあり、なかなかコーチ陣にアピールする機会を得られなかった。

 そんななかで先発出場の機会を与えられたのが、6月7日に行われた天皇杯2回戦のツエーゲン金沢戦だった。この試合で松井は0-1で迎えた前半38分にコーナーキックの2次攻撃で太田の左足からのクロスをヘッドで合わせ、同点ゴールを記録。その後、チームは3-2と逆転勝利し、3回戦に進出した。この試合でのアピールが実り、松井はリーグ戦でも先発でプレーするようになった。

「宏介さんのことは、もちろん加入する前から知っていました。日本代表でのキャリアもありますし、FC東京で活躍していた選手なので、FC町田ゼルビアに入ることになった時に一緒にやるのが楽しみでした」

 実際にチームメイトになってからは、その人間性に大きな影響を受けているという。

「宏介さんはチームのことを一番に考えて、チームを盛り上げてくれますし、いろいろなことを経験したからこそ、いろんな話もしてくれます。常にポジティブな声掛けをしてくれますし、『なんでも楽しむことが一番だよ』って言ってくれます。本当にチームにプラスになることしかしない人というか、自分を犠牲にしてでも、チームが良くなるために行動してくれる先輩です。そういう先輩がいることは、僕自身にもいい経験になりますし、宏介さんがいたからこそのFC町田ゼルビアだと思っています」

 またプレー面でもボールを正確に蹴る技術は、年齢を重ねても衰えないことも練習から感じ取っている。

「町田はクロスからのシュートという練習を結構やるのですが、宏介さんからのクロスは本当にいいボールが上がってきて、中でシュートを打つ選手がすごく決めている印象です。何歳になっても、ああいうクロスの精度っていうのは衰えないんだなと改めて感じました」

 チームメイトたちから親しまれ、尊敬されている太田。J2を優勝してJ1に昇格するという目標を掲げているチームは、そんな太田を最高の形で送り出すつもりだ。

「先日、引退を発表されましたが、やっぱり最後に宏介さんと優勝して引退させたい。そういうところでもチームの士気は上がっています」

 今シーズン、町田の公式戦は10月8日の第38節ヴァンフォーレ甲府戦を含めても残り6試合。町田がプレーオフに回らない限りは、プロサッカー選手としての太田の姿を見られる時間も、あと540分になる。周囲から愛され、町田に大きな影響を与えた6番が迎えるであろう最高のキャリアのラストは見逃せない。

[プロフィール]
松井蓮之(まつい・れんじ)/2000年2月27日生まれ、福島県出身。矢板中央高―法政大―川崎―町田。J1通算0試合・0得点、J2通算17試合・1得点。持ち前の対人の強さ、持久力で勝負するミッドフィールダー。今年5月に育成型期限付き移籍で町田の一員となり、9月23日のJ2第36節長崎戦で待望のJリーグ初ゴールを挙げた。

(河合 拓 / Taku Kawai)



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