“10番”中島翔哉のJ復帰戦、コンディションを向上が必須か 浦和サポーターが期待するゴールゲッターとしての役割【コラム】
【カメラマンの目】横浜FM戦でJ復帰、激しい試合のなかで15分と短いプレー
試合前、バックスタンド側でウォーミングアップを行う中島翔哉をカメラのファインダーで捉える。彼の視線の先にはホームベンチ側のバックスタンドに陣取る浦和サポーターたちがいた。世界の舞台で戦ってきた中島でも、浦和サポーターの声援は目を止めるほどの迫力だったのだろう。
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8月6日のJ1リーグ第22節、上位対決となった浦和レッズ対横浜F・マリノスの試合で、新たにホームチームに加わった中島はベンチスタートだったが、そのメンバーに名を連ねた。
チャンスが回ってきたのは後半38分。満を持して登場した中島だったが、残念なことにプレー時間が短かった。ゴール裏のピッチレベルから見る限り、中島はインパクトを残せないまま浦和の背番号10番を背負った最初の試合を終えた。
何より投入された状況が好プレーを生み出す流れではなかった。試合は優勝を目指すチーム同士らしく開始から激しい攻防が展開された。局地戦でのボール奪取の戦いは迫力があり、意図したパス交換と鋭いドリブル突破で相手ゴールを目指す、両チームが持ち味を存分に出し合う内容で前半は進んだ。
しかし、夏場の厳しい条件下でのプレーでは肉体的、そして思考的にも消耗は早く訪れる。時間の経過とともに選手たちの勢いも下降線を辿っていくことになる。ゲームは徐々に激しさだけが際立ち、それが空回りするように混戦となっていった。
その状況を両チームの指揮官は選手交代によって打開を図ったが、フレッシュな選手もゲーム全体で停滞する流れに埋没していくことになる。
どの選手も戦う気持ちはある。だが、実際のプレーがその思いとは乖離し、後半はピッチに立つ多くの選手たちがパス、トラップなどの基本プレーに精度を欠き、最後はボールの蹴り合いとなって終わった。
そうした終盤に投入された中島も例外なく、混戦の流れに飲み込まれてしまった。ただ、インパクトを残せなかったのは、アディショナルタイムも含めてわずか15分と短いプレー時間や停滞していた試合の流れだけが理由ではないと思う。
浦和の課題はストライカー不在、中島の奮起が鍵になるか
実戦から離れ別メニューでの調整が続いていたなかでの試合投入という難しい状況だったとはいえ、中島の動きにはキレが感じられなかった。トラップ1つを取ってみても、しなやかさがなかったことは否定できない。
浦和のさらなる躍進のために加入した中島だが、現在のチーム状況を整理してみる。アレクサンダー・ショルツとマリウス・ホイブラーテンが中央でコンビを組み、サイドには代表経験も豊富な酒井宏樹、そしてGK西川周作が形成する守備ラインは抜群に安定している。
誰もが分かっているように浦和の課題は攻撃である。その攻撃の部分でも特に補強すべきポイントはゴールゲッターだ。
ボランチ伊藤敦樹の力強い前線への進出を含めた中盤の選手たちとサイドバック(SB)酒井のオーバーラップからゴール前へと送られる、ラストパスまでの形はできている。得点を奪えないとなれば感情を高ぶらせて、センターバック(CB)のショルツも果敢に攻撃へと参加してくる。
問題は彼らから供給されるパスを受けてゴールへの総仕上げを行うストライカーの不在である。中島の得意としているポジションはトップ下だろうが、いっそのことFWで起用してみるのも、さらなるチーム上昇への1つの手だと思う。
ただ、横浜FM戦の中島にはコンディションを向上させる必要が、かなりあるように見えた。
果たして中島は浦和攻撃陣の救世主となれるか。浦和サポーターがファンタスティックなプレーでチームを勝利へと導く中島に期待を寄せているのは間違いない。
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。