“元相棒”古橋亨梧がイニエスタの背中に受けた感銘 「自分のために神戸を選んでくれたんじゃないかと思えるくらいに…」
【独占インタビュー】イニエスタとともにプレーした3年間で感じたことは?
元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタは、7月1日のJ1リーグ第19節北海道コンサドーレ札幌戦でヴィッセル神戸でのラストマッチを迎える。2018年夏にスペイン1部バルセロナから電撃加入し、約5年間のJリーグ生活を送った。「FOOTBALL ZONE」では関係者の証言から日本列島を沸かした名手の貢献や素顔に迫る特集を展開。イニエスタとともにプレーして自身も飛躍したスコットランド1部セルティックの日本代表FW古橋亨梧が、過ごした時間を振り返った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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「僕の中では宝物ですね。たくさんのことを肌で感じさせてもらって、人として、プレーヤーとして本当に尊敬している。日本に来てくれてすごく嬉しいし、一緒にプレーできて本当に幸せでした。プレーをし続けたいというふうに言っていたと思うので、新しいところでも彼らしく頑張ってほしいなというのと、僕も頑張り続けて、少しでもいい結果が彼に伝わるよう頑張りたいなと思っています」
多くのパスを受け、その“ホットライン”は相手の脅威となった。そのなかでも忘れられない一戦がある。
2021年6月23日に行われたJ1リーグ第19節横浜FC戦(5-0)。ハットトリックを達成した古橋の1点目を演出した見事なパスだ。1点リードで迎えた前半31分、イニエスタは相手の最終ラインの背後へ浮き球のパスを供給。これに抜け出した古橋が巧みなワンタッチからゴール右へ流し込み、追加点を奪った。相性の良さが証明された連係プレーだった。
「僕が駆け引きしているなかで、彼がボール持っていたところが位置的に難しかった。それでも、ボールを引いて右足に持ち替えてくれて、相手のDFの背中を通して、最後に足もとにドンピシャでくれた。一瞬で僕を見つけてくれて、瞬間的にそういうプレーをして、ジャストのボールをくれたというのは、僕が彼の立場だったら絶対にできない。僕だったら左足で蹴って、クリアされているか大きくなってゴールキックになっていたか。トラップできないボールでヘディングになって……というボールしか送れていなかったと思う。本当にすごくいいボールだった」
その技術を練習で、試合で、常に間近で見てきた。ともにプレーした時間はイニエスタが加入した2018年から古橋がセルティックに移籍するまでの3年間。最初は「こんな言い方失礼ですけど『テレビの人や』という感じだった」というが、日々を過ごし、1つ1つのテクニック、人間性を目の当たりにして多くの刺激を受けた。
「やっぱり走ればボールが出てくる。走り出すともう目の前にボールが来ているのが、何回もあった。それは、『お前はストライカーなんだから。決め切れよ』という思いが込められているパスをたくさんもらった。ストライカーとしての心構え、在り方というところをパスで教えてもらった」
「自分のために神戸を選んでくれたんじゃないか、と思えるぐらい本当に充実した3年間」
メッセージ性のあるパスで自身も成長を遂げた。「一緒にプレーするだけで伸ばしてもらえて、自信がついた。僕のキャリアに欠かせない」と及ぼした影響、存在は大きかった。
世界的な大スターでも毎日、朝から選手1人1人と握手する。キャプテンとしてチームを牽引する姿に感銘を受けた。
「こんな発言をしたら叩かれるかもしれないけど……(笑)。自分のために神戸を選んでくれたんじゃないか、僕を選んでくれたんじゃないかと思えるぐらい本当に充実した3年間で彼とプレーできて良かった。感謝しかないです」
古橋にとっては神戸時代の最高の“相棒”。そう思わせてくれるイニエスタの懐の大きさを感じつつ自身も飛躍を遂げた。イニエスタからのアシストで決めたゴール数は10。日本中でイニエスタからのパスで得点した。何度も見てきた古橋とイニエスタのホットライン。2人が作り上げたゴールは確かにJリーグの歴史の一部となった。
[プロフィール]
古橋亨梧(ふるはし・きょうご)/1995年1月20日生まれ、奈良県出身。岐阜―神戸―セルティック(スコットランド)。J1通算95試合42得点、J2通算68試合17得点、日本代表通算18試合4得点。スピードと巧みな裏への抜け出しを武器に得点を量産するストライカー。2022-23シーズンは所属2年目のセルティックで国内三冠を達成し、リーグ得点王(27ゴール)のほか、リーグやクラブの年間MVPにも輝いた。