「W杯は誰にも保証されていない」 日本代表OBが懸念する新生“ファンタスティック5”への過度な期待感

日本代表OBが新たな攻撃ユニットに抱く懸念とは?【写真:徳原隆元】
日本代表OBが新たな攻撃ユニットに抱く懸念とは?【写真:徳原隆元】

【専門家の目|栗原勇蔵】上田、久保、三笘、堂安、旗手のユニットは見極めが必要

 森保一監督率いる日本代表は、6月15日に行われたキリンチャレンジカップのエルサルバドル代表戦で、6-0と大勝した。スタメン出場したMF久保建英(レアル・ソシエダ)、MF三笘薫(ブライトン)、MF旗手怜央(セルティック)、MF堂安律(フライブルク)、FW上田綺世(セルクル・ブルージュ)の東京五輪組が躍動し、攻撃を担うユニットとして今後も期待されるが、元日本代表DF栗原勇蔵氏は、2018年の森保ジャパン発足当初に注目を集めた堂安、MF南野拓実(ASモナコ)、MF中島翔哉(アンタルヤスポル)の“三銃士”のような状況になることに警鐘を鳴らしている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 1トップに上田、左サイドに三笘、右サイドに久保、インサイドハーフに旗手と堂安――。東京五輪に出場した5人が織り成す攻撃は、前半2分で相手が退場者を出したエルサルバドル戦のポジティブ要素の1つだった。

 試合開始わずか10秒で三笘が倒されてフリーキックを獲得。キッカーの久保がDF谷口彰悟(アル・ラーヤン)の頭に合わせる華麗なアシストをして電光石火の先制点を奪った。直後には、相手DFロナルド・ロドリゲスが退場となって得たPKで上田がA代表初ゴールを挙げて追加点。数的有利な状況で前半25分には三笘のパスを久保が左足で決めて国際Aマッチ2ゴール目を挙げた。

 前半終了間際には三笘のシュートをGKが弾き、こぼれ球に詰めていた堂安が決め切り4点目。そして後半15分、久保は相手の股を抜くパスで途中出場のMF中村敬斗(LASKリンツ)の初ゴールをお膳立てした。

 フル出場の旗手以外は後半20分までに途中交代となったが、5人が揃っていた前半45分は新たな軸として期待を抱かせるラインアップだった。

 しかし、FIFAランキング75位の相手(日本は同20位)、そして前半2分以降は「11対10」で戦っていたことも踏まえると、エルサルバドル戦だけで合格点を与えるのは時期尚早だろう。元日本代表DF栗原氏は、2018年に森保ジャパンが立ち上がった当初のことを引き合いに出しながら見解を語る。

「2018年7月に森保監督が就任して、9月にコスタリカ代表、10月にパナマ代表にそれぞれ3-0と勝利しました。当時、日本代表への期待感が高まり、南野、堂安、中島の2列目トリオが『三銃士』と騒がれましたけど、4年後のワールドカップ(W杯)でチームに貢献できたのは堂安だけでした。上田がA代表初ゴールを挙げ、エルサルバドル戦は収穫がゼロだったわけではないですが、4年前の立ち上げ時と今、どれだけ底上げされているか、(6月20日の)ペルー代表戦以降でしっかり見極めたいところです」

 栗原氏は、「森保ジャパンの当初の戦いを見て、誰もが南野のチームになると思ったはず。監督は本当に難しい仕事だと感じます」と、森保監督の置かれる立場をおもんぱかった。

「今のチームでは、久保、三笘が中心だろうとみんなが思っている。でも、3年後に状況が変わっている可能性もゼロじゃない。代表でレギュラーを守り続けるのは大変なことで、W杯行きの切符は誰にも保証されていない。だから、そういう意味では、チーム全体の底上げが必須で、ペルー戦に出場した選手には『俺もできるんだぞ』と示してほしいです」

 森保ジャパン第2次政権での熾烈なサバイバルは、まだ始まったばかりだ。

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栗原勇蔵

くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

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