堂安律、チーム内3位の好成績「すごく充実」 CL出場を懸けた最終戦へ「失うものは何もない」【現地発コラム】

フライブルクの堂安律【写真:Getty Images】
フライブルクの堂安律【写真:Getty Images】

CL出場権獲得の可能性を残す堂安所属のフライブルク、再び好転し始めた攻撃

 日本代表MF堂安律を擁するドイツ1部フライブルクは、ボルフスブルクをホームに迎えたブンデスリーガ第33節で2-0と勝利した。

 フライブルクは現在リーグ5位の好成績を残しており、UEFAヨーロッパリーグ(EL)出場圏につける一方、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場圏の4位ウニオン・ベルリンと勝ち点59で並んでいる。最終節までCL出場権獲得の可能性を残しており、目が離せないデットヒートが続いている状況だ。

 この試合で堂安は攻守にインテンシティーの高いプレーを披露。守備への貢献はすでに意識しなくても当たり前に実践できるレベルになっているし、攻撃でも確実なボールキープから的確なパスやドリブルでチャンスメイクをしていく。右サイドにとどまるだけではなく、試合の流れを見ながらトップ下の位置や左サイドにまで顔を出し、それでいてチームにおける攻守のバランスが崩れることがほとんどない。

 シーズン途中にはフライブルクの攻撃が相手に研究され、また過密日程の影響で戦術トレーニングがなかなかできずで、思うようにチャンスが作れない時期があった。ペナルティーエリア付近までは運べるが、そこから崩そうにも崩せない。

 どこに問題があったのか。クリスティアン・シュトライヒ監督は4月のバイエルン・ミュンヘン戦(0-1)後に次のように説明していた。

「理由はある。確かに自分たちはいいチームで、いい選手たちがいる。でもそれ以上の存在ではないのだ。バイエルンとは違う。チームとして素晴らしいプレーをしたら、バイエルン相手にもチャンスを作れる。でもその1つ1つのチャンスを作り出すのに、どれだけの労力とアイデアが必要か。バイエルンのように個人技でこじ開けてゴールということは極めて難しい。そして自分たちの対戦相手は5-3-2システムで、こちらが攻撃で使いたいスペースをほぼすべて消してくる。これまで自分たちが到達したことがないところで戦っているんだ」

リーグ戦で5得点6アシストの堂安、スコアポイントはチーム3位

 そんなフライブルクの攻撃が、ここ最近また好転するようになっている。EL、ドイツカップから敗退し、各選手のコンディションが上向きになり、戦術練習の時間が持てるようになったことをシュトライヒ監督は要因として挙げていた。攻撃のバリエーションが増え、それぞれの使い方が整理されている。

 堂安はそのなかで、さまざまな仕掛けでチャンスメイクに貢献していた。シュトライヒ監督は試合後、満足そうにチームパフォーマンスを褒めている。

「情熱的な試合だった。ゴールには幸運もあったが、いずれにしても素晴らしい試合だった。ファンに最高の試合を届けることができた」

 何人かの選手名を挙げながら一言ずつ褒めていたが、その中に堂安の名前もあった。

「リツは前への推進力をもたらしてくれた」

 例えば、堂安は中盤でボールをもらうと可能な限りすぐ前を向いてドリブルで運んでいく。それがスイッチとなり味方選手がスペースへ流れ込む。そんなアクションが数多く見られる。堂安のところでボールを失うことがないという信頼がそこにある。

 最終節を残して5位につけているフライブルクは、すでに5位以上が確定。CL出場圏内の4位ウニオン・ベルリンと勝ち点で並んだ形で最終節を迎える。

 堂安は今季ここまでリーグ戦32試合に出場し、29試合がスタメン。加えてELでは8試合中7試合でスタメン出場だ。本人は今季をどのように受け止めているのだろうか。

「膝の怪我もあったり、最近だとライプツィヒ戦とかスキップしちゃった1試合もあったので。そのへんは自分自身ふがいなさを感じながら過ごしてました。でもそれ以外はシーズンがすごく充実してました。数字がもっと伸びれば良かったですけど、少ないわけではないので。悪くないかなとは思います」

 堂安はリーグ戦で5得点6アシストをマーク。得点・アシストを合計するスコアポイントはチーム3位の数字となる(1位はヴィンチェンツォ・グリフォの14得点6アシスト。2位はミヒャエル・グレゴリッチの10得点6アシスト)。

最終節のフランクフルト戦へ「逆に僕たちのほうがノープレッシャーでできる」

 今季のブンデスリーガも残すところあと1試合。現地時間5月27日の最終節でフライブルクがフランクフルト(長谷部誠、鎌田大地ら所属)とのアウェー戦に勝てば、ウニオン対ブレーメンの結果いかんではCL出場権を手にすることもできる。

 だが、ここまで来たら勘定はいらない。自分たちがやるべきは最後にまた自分たちらしいサッカーで勝利を目指すことだ。

「失うものは何もないので。勝つために全力でやります。今日みたいにアグレッシブにやれればいいし、怖がらずにプレーできる。逆に僕たちのほうがノープレッシャーでできるので。チャンスなんじゃないかなと思います」(堂安)

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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