ドイツ人指導者がカタールW杯の傾向分析 上位国や日本代表で際立った「番人」、攻撃で見られた「幅」

ドイツ人指導者が分析するカタールW杯とは?【写真:ロイター】
ドイツ人指導者が分析するカタールW杯とは?【写真:ロイター】

【インタビュー#1】「守備のコンパクトさ」が光ったアルゼンチンとフランス

 カタール・ワールドカップ(W杯)が終わって、約1か月が経った。サッカーへの熱狂と驚き、スポーツのあり方と人権の捉え方など、さまざまな話題がもたらされた大会だったのではないだろうか。

 落ち着いて大会を振り返るのにいい頃合いではないかと思い、親交あるドイツ人指導者クラウス・パプストと連絡を取ってみた。パプストはドイツ1部ブンデスリーガのケルンでさまざまな年代の育成指導者を歴任し、U-14までの育成統括部長を務めていた人物だ。またケルンスポーツ大学で教壇に立ち、ドイツサッカー協会が提携して発行している指導者向け月刊誌「Fussballtraining」でトレーニング内容や育成について寄稿している。第1回は「カタールW杯総括」をテーマに話を訊いた。(取材・文=中野吉之伴/全4回の1回目)

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 カタールW杯でベスト4に残った国を見ていると、チームとして規律だった守備組織の完成度が高く、守備ラインの前で攻守のバランスの舵取りに秀でた選手の存在が大きなポイントになっていた。

 アルゼンチン代表にはエンソ・フェルナンデス、フランス代表にはオーレリアン・チュアメニ、クロアチア代表にはマルセロ・ブロゾヴィッチとマテオ・コバチッチがいて、モロッコ代表にはソフィアン・アムラバトがいた。また日本代表の躍進を支えた遠藤航(シュツットガルト)という選手の存在を挙げないわけにはいかない。

「元ドイツ代表で今大会テレビ解説を務めていたペア・メルテザッカーが上手く表現していた。『ボランチには《守備ラインの番人》となる能力が必要だ』とね。相手に自由に攻撃をさせないために危険なスペースを予知して埋め、そこで攻撃を食い止められるかどうかが、チームとしての安定感に大きな影響をもたらすからだ。

 決勝に残ったアルゼンチン代表とフランス代表は特に、守備のコンパクトさ、全体的なバランスの良さが際立っていたね。ベスト4に残った国以外だと、個人的にこのポジションで印象に残ったのはオランダ代表のフランキー・デ・ヨングだ。ワールドクラスの選手だと思う。FCバルセロナでも同ポジションで起用されるべきだ。トップ下やインサイドハーフではなく、彼はボランチの選手だ」(パプスト)

 パプストが今大会の傾向として指摘したのは、中盤にバランサーのボランチとクリエイティブかつ攻撃面で力を発揮する選手による4-3-3システムを採用する国がほぼなかったという点だろう。スペイン代表ぐらいではないだろうか。

「アルゼンチンでいうと、ボランチにエンソ・フェルナンデス、そしてインサイドハーフの位置にロドリゴ・デ・パウルとアレクシス・マック・アリスターが主軸としてプレーしていた。彼らのゲームインテリジェンスレベルも高いが、ゲーム/チャンスメイカーというよりは機動力と闘争力を武器にできる選手だ」

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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