中国で体験した「日本代表バブル」 カタールW杯、森保ジャパンの躍進に何が起こっていた?

中国の街中でカタール・ワールドカップが放送される様子【写真:久保田嶺】
中国の街中でカタール・ワールドカップが放送される様子【写真:久保田嶺】

日本の快進撃に中国では「嫉妬」も

「イタリアが2度も続けてW杯に出場できないことを考えれば、日本の試合が見れることがどんなにありがたいことか。スペイン戦は初心に戻ってサッカーを楽しもう」

 これは、元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏が日本対コスタリカ戦後にツイートしたものです。私も今回のW杯を中国で見ることになり、母国がW杯に出場して応援することができる、ということへの感謝に改めて気付かされました。

 ここ中国でも街中のバーでは連日連夜W杯が放送され、ケンタッキーなどはW杯特別セットを販売し、SNSのトレンドはW杯関連ばかりなど、大いに盛り上がっています。

 しかし、「中国は中国代表チーム以外はすべてW杯に参加している」という有名な言葉があるとおり、中国大手企業はW杯のメインスポンサーをし、多くの中国サッカーファンは現地カタールまで足を運んでいますが、中国代表チームはこの20年間、W杯に出場できていません。

「とにかく“酸”です。久保田さん、この意味を知っていますか?」

 これは先日、上海で行われた日本サッカーについて討論するイベントで、中国のビジネス紙「第一財経日報」のサッカー記者、佟(トン)氏が私へ質問してきたことです。この中国語の意味は「嫉妬」であり、つまり同じ東アジアである日本がW杯で躍動する姿をとても嬉しく感じるが、強烈に嫉妬もしている、ということなります。

「売上は倍になりました。やはり三笘薫選手が一番人気です」

 最後に、こう話してくれたのは中国のネットサイトにて日本代表ユニホームを販売する高(コウ)氏です。1500円という値段からすると、おそらく彼が販売しているのは偽物の日本代表ユニホームなのですが、何はともあれ日本代表の今回の躍進により、ユニホーム売上は好調、数多くの中国人に日本代表の影響が出ていると感じます。

 大学生が食堂に集まり、日本対スペイン戦の逆転に興奮する様子や、三笘選手の中国での愛称「三球王」のトレンド入り、そして私もユニホーム姿でコンビニに入ると「ジャパン!」と中国人のお客さんに声をかけられました。まさに日本代表バブルです。

 ここ中国で初めてW杯、そして日本代表の躍進を見ることになり、中国人の日本代表に対する熱狂と尊敬、そして嫉妬を目の当たりにしました。1人の日本人として、この日本代表バブルが長く続くこと、引き続き彼らに熱狂を届けられること、そして「中国は、今回は中国代表チームもW杯に参加している」と、2026年は彼らが言えること、日本代表だけではなく中国代表バブルも中国へ到来することを強く期待しております。

(久保田嶺 / Rei Kubota)



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久保田嶺

1991年生まれ、埼玉県出身。「Rouse Shanghai Co.,Ltd.」代表。日系企業の中国インバウンド事業やマーケティング、中国サッカー選手/指導者のマネージメントを手掛ける。自身の中国SNSフォロワー数も40万人と中国サッカー界で一番有名な日本人としても活躍。日本へ中国サッカー情報を発信する。

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