ドイツ人ベテラン記者が絶賛、日本代表MF鎌田大地の凄みとは? 「彼は戦略家」「特に驚くのが…」
【インタビュー】ドイツ紙記者シェルツァー氏、鎌田の「相手が嫌がるプレー」も高評価
ドイツの全国紙「フランクフルター・アルゲマイネ」の記者で、記者歴65年という超ベテランのハルムート・シェルツァー氏は、カタール・ワールドカップ(W杯)メンバーに選出されたドイツ1部フランクフルトのMF鎌田大地を非常に高く評価している。
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W杯へ向けたドイツ代表最終メンバー発表の記者会見の場で筆者と会ったシェルツァー氏は、「日本の記者の方か。鎌田は本当に優れた選手だ。私は彼のプレーを見るのが大好きなんだよ」と嬉しそうに話しかけてくれた。
そんなシェルツァー氏へのインタビュー第2弾。今回は日本代表としてW杯に参戦する鎌田について掘り下げて語ってもらった。(取材・文=中野吉之伴/全2回の2回目)
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――シェルツァーさんは鎌田大地という選手をどのように見ていますか?
「彼は中盤の戦略家だ。非常にオフェンシブにプレーするが、守備における取り組みもしっかりと頭の中に持っている。身体を張って守り、スライディングタックルで相手からボールを奪うというプレーも見せてくれている。
私が彼のプレーで特に驚くのが、あの冷静な狡猾さだ。何物にも動じずに冷静に決定的なプレーを披露している。相手が嫌がるようなプレーを自然として見せる。そして、そのことを正しく認知している。
ペナルティーキック(PK)の場面でもそうだ。自分のことをしっかりと信じているから、ナーバスになったりしない。彼のことを非常に素晴らしいと思っている。試合を見ていて本当にスリリングなのは、彼が見せるビルドアップからの展開だ。鎌田とマリオ・ゲッツェが同時にピッチに立っている試合では、2人のゲームメーカーがいることになるが、互いに特徴や長所を消し合わずにプレーができている」
――今季途中から鎌田選手はボランチでプレーする機会が増えていますが、状況を見てタイミング良くゴール前に顔を出すことができています。よくある選手タイプというのは「中盤でのゲームメイクを得意とする選手」か、「ゴール前で違いを生み出す選手」のどちらかになりがちでした。ただ、鎌田選手はそのどちらも高いレベルで体現しています。
「彼のプレーを既存のタスクと合わせて定義づけることはできない。プレーエリアで見たらボックス・トゥ・ボックスということになる。ペナルティーエリアからペナルティーエリアまでのエリアすべてが彼のテリトリーだ。ピッチのどこにでも顔を出す。
ボランチ、トップ下。選手を表す表現はいろいろあるが、だが今日のサッカーではそれは単なるポジションを表すものでしかない。選手の持つ能力に応じたタスク実践力が重要になるからだ。
鎌田は昔のサッカーで言えば、ゲームメーカーに属する選手だろう。私の解釈ではゲームメーカーというのは、攻撃における想像力を持っている選手のことだ。鎌田はまさにそうだし、それでいて守備やほかの役割をおろそかにすることもない。信頼できる選手だ。
昔のサッカーにおけるゲームメーカーというのはトップ下の位置でプレーすることが多かった。オランダ代表のヨハン・クライフやドイツ代表のギュンター・ネッツァーのような選手が見せてくれていたプレーだ。今、フランクフルトではマリオ・ゲッツェと一緒にプレーをしている。2人のゲームメーカーがいる。これが今、フランクフルト好調の要因の1つだ」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。