J1・2022シーズン「外国人監督」査定 横浜FMマスカット采配を凌駕、“5つ星”評価の指揮官は?

浦和リカルド体制は、リーグ戦での期待を大きく裏切る結果に

■ネルシーニョ(柏レイソル)=★★★★(4つ星)
リーグ成績:7位
ルヴァン杯:グループステージ敗退
天皇杯:ラウンド16

 下馬評では筆者も含めて下位に予想する解説者や記者が多いなかで、前半戦で一時は優勝争いに絡む勢いだった。後半戦から終盤戦にかけ失速して7位に終わったが、接戦が多いなかで、経験豊富な指揮官の勝負強さが発揮されたこと、最優秀若手賞を獲得した細谷真大をはじめ、若い選手にチャンスを与えながら結果を出していったことは高評価できる。戦術面で考えると、おそらく井原正己コーチらスタッフの支えが大きいだろう。ただし、相手の裏を狙える展開になるとハマるが、自陣にブロックを構築された相手の攻略には手こずり、ボールの握り合いでも劣勢になる展開が多かった。来シーズンもネルシーニョ体制の継続が濃厚となるなか、悲願のACL再挑戦の権利を得るにはもう一段、強度のベースアップとオプションの強化が求められる。

■リカルド・ロドリゲス(浦和レッズ)=★★(2つ星)
リーグ成績:9位
ルヴァン杯:ベスト4
天皇杯:3回戦敗退
ACL:決勝進出

 クラブが打ち出した3年計画最終年で、明確な結果が求められた。富士フィルム・スーパー杯で川崎フロンターレを破り、ACLでのファイナル進出という勲章は付いたが、リーグ戦では期待を大きく裏切る結果となった。主力に複数のコロナ感染者が出た事情もありスタートに躓いたあと、5月あたりの戦い方が慎重になってしまったことをリカルド監督は明かしている。ただ、そこから外国人アタッカーのダヴィド・モーベルグなどの加入も後押しする形で、一時は上位争いへの期待を窺わせながら、終盤戦に再度足踏みした。2年目でビルドアップはようやく身に付いてきたが、アタッキングサードにおける攻撃バリエーションに幅を持たせられず、順位や勝ち点だけでなく、ここぞの大一番で力負けしたことも評価を下げたかもしれない。筆者の意見としてはスタッフをテコ入れして3年目にトライしてほしい気持もあるが、エビデンスをシビアに評価すれば仕方ない部分もある。

■ミハイロ・ペトロヴィッチ(北海道コンサドーレ札幌)=★★(2つ星)
リーグ成績:10位
ルヴァン杯:プレーオフステージ敗退
天皇杯:3回戦敗退
 
 ミシャに託された託されたのが上位進出であることを考えれば、高い評価はとても付けられない。もちろん素晴らしいゲームもあったが、良くも悪くもパフォーマンスの波が激しい。これは自分たちの好不調だけでなく相手との噛み合わせや対策が影響するところも大きいからだ。ミシャが求める強度は広島や浦和を率いていた当時からJリーグでもトップレベルに高い。その中で選手たちは着実に成長するが、その先の勝負どころで壁に当たりやすい。これまでコーチとして支えた四方田修平氏が横浜FCの監督に就任したことも少なからず影響していると思うが、攻撃的に行くなかでもゲームコントロールをうまく入れていかないと、ここからの成績の上積みは難しい。

■ゼ・リカルド(清水エスパルス)=★★(2つ星)
リーグ成績:17位
ルヴァン杯:グループステージ敗退
天皇杯:3回戦敗退

 前指揮官(平岡宏章監督)のもとで低迷していたチームを途中から引き受けて、守備の組織を整理しながら立ち位置を考えたビルドアップを植え付けた。夏の補強も効果を発揮する形で、一時は残留どころか一桁順位を狙える流れになりかけたが、後半アディショナルタイムに失点を繰り返して勝ち点を取りこぼし、そうこうするうちにチームのパフォーマンスが低下した。空間的な指導はハイレベルだが、試合は生き物だけに、90分の中でどうマネジメントするかでうまく噛み合わせられなかった。同じく残留争いに巻き込まれたヴィッセル神戸などに比べると、そうしたマインドを持っている選手が不足していたのかもしれない。ただ結果は結果。一度は残留圏内に乗せながら降格させてしまった監督の責任は重い。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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