Jリーグ選手・審判へのSNS誹謗中傷 投稿者への法的責任は? 専門家が解説「数百万円請求」の可能性も

誹謗中傷をしてしまう“3タイプ”&SNS投稿による怖さ

 山本弁護士によれば、SNS上で誹謗中傷をしてしまう人は、大きく分けて3つに別れるという。「1つは『自分の投稿は正義だ!』という、正義感で書き込んでしまうタイプ。2つ目が怒りに任せて感情のままに書き込んでしまうタイプ。そしてもう1つがこれらの投稿を見て、便乗、野次馬的に書き込んでしまうタイプになります。また、最近ではコロナ禍により、自宅でできるSNSなどが娯楽となる割合が増えたことや、無意識かもしれませんが、自己肯定感を上げる手段として相手のことを誹謗中傷するというケースもあるのではないかと考えられています」

 また、SNS投稿による特性として挙げられるのが拡散スピードの速さ、拡散範囲の広さだ。投稿内容は瞬く間に拡散され、また、普段からサッカーに親しんでいる人のみならず、そうでない人からの投稿まで一気に寄せられる。こうした拡散力は、SNSにおける誹謗中傷の怖さの1つ。さらに、ネット上から削除されない限り半永久的に残ってしまい、被害者はいつでもそれらを閲覧できてしまう。これらの理由から、「誹謗中傷を受けた当事者の方は、とても大きな心身のダメージや、恐怖心を抱えることになります」と、山本弁護士は侵害状態の大きさや継続してしまう点への怖さも指摘した。

 近年続出しているSNS上での誹謗中傷問題に関して、Jリーグや各クラブは撲滅に力を入れるが安易に解決できるものではない。一方で、選手、スタッフ、さらには関係者への悪質性の高いSNS投稿が目立ってしまうと、サッカー界へのマイナスイメージが拡大しかねない。誹謗中傷が起きる、起きやすい環境にあるという認識が根付いてしまうと、「サッカーの競技者、ファン、さらにはスポンサーなどが、サッカー界から離れていく可能性があり、そうなれば、サッカー界の発展が阻害される可能性もあります」と、山本弁護士は見解を示した。

 サッカー界のみならず、スポーツ界全体を見回しても、SNSによる誹謗中傷問題とは切り離せない状態にある。スポーツの本質的価値は、スポーツに関わる人全員が「楽しい」と感じられる点にあること。サッカー界をはじめ、スポーツ界全体が今後、誹謗中傷問題と長く付き合っていくなかで求められることとして、山本弁護士は「自分の行為が、サッカーの価値を下げていないか、サッカーをつまらないと感じさせるものにしていないかという意識をみんなで持つことが大切だと思います。また、チーム、Jリーグ、日本サッカー協会としても、そのための取り組みをより一層進めていただくことが必要なのかもしれません」と説いていた。

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山本健太

やまもと・けんた/レイ法律事務所/スポーツ選手・指導者、著名人の権利問題、誹謗中傷問題の他、スポーツにおけるハラスメント問題を多く扱い、プロ選手・指導者に向けた研修も多数実施。スポーツ関連でメディア出演も多数。SNS上の誹謗中傷により亡くなられた木村花さんの母・木村響子さんとともに、SNS上の誹謗中傷問題に取り組む。

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