24歳元Jリーガーはなぜ消防士へ? “人命救助のスペシャリスト”への挑戦…異色の転身の舞台裏

消防学校では半年間、座学と実技を行う【写真提供:横浜市消防局訓練センター教育課】
消防学校では半年間、座学と実技を行う【写真提供:横浜市消防局訓練センター教育課】

消防士の採用試験に一発合格、消防学校で半年間の初任基礎教育

 地方公務員である消防士は、自治体ごとに採用試験を実施。1次が教養(筆記)試験と論文試験、それに合格すると2次で体力試験と面接が待ち受ける。石垣は、21年6月の採用試験で1次を一発クリアすると、7月開催の2次では、元スポーツ選手の経歴を生かして体力試験でアピールするとともに、地元である神奈川県横浜市の消防局が重視する面接でも自分の想いを伝えた。

「1次の筆記試験は国語、数学、理科、社会の大学卒業程度の問題が出るんですが、勉強はすごく大変でした(苦笑)。体力試験は握力、腕立て伏せ、上体起こし、反復横跳びなどです。面接では、元Jリーガーの経歴が珍しいこともあって、サッカーのことをメインで聞かれ、前向きな想いを伝えるのがなかなか難しかったです。サッカーを長くやっていた分、体力には自信があるというのと、部隊は基本5人1組で動くので、チームワークの大切さはサッカーで理解していることを自分なりに伝えました」

 厳しい競争試験を勝ち抜き、石垣は一回で見事に合格。元Jリーガー→消防士の稀有な転身を遂げるチャンスを勝ち獲った。

 今年4月からは横浜市消防訓練センターに入校。消防法、地方公務員法、現場で使用する資機材の諸元と取扱などを学ぶ座学と実技の半年間にわたる初任基礎教育を経て、横浜市内の消防署へと配属される。9月末の初任基礎教育修了を控え、実技の内容はよりリアルさを増しているという。

「下半身を使うことが多いサッカーに対して、消防士はロープを登ったり、上半身の筋肉も大事になります。消防学校には懸垂用の鉄棒があるので、懸垂、腕立て伏せを意識してやっています。入校したばかりの頃に15回だった懸垂は、今は20回以上まで伸びました。まだまだですけど、持久力は付いてきたかなと。ほかにも1500メートル、5000メートル、シャトルラン、インターバル走と、かなり走るので、サッカーと同じくらい体力を使っていますね(笑)。今年の入校者全136人の中で、体力は上位には入っています。

 選手時代からは体重と筋肉量も増えました。実技は、最初はホースを伸ばして巻くという初歩的なところから、8月以降は、発煙筒で煙を焚いて、建物の中に進入して要救助者を救出する、消防車両から送水し放水するといった実際の建物火災を想定した訓練になっています」

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