“アラフォー”の大ベテランたちが織りなす異例のカタールW杯 選手寿命の延びがもたらした新領域

カタール・ワールドカップに出場するベテラン選手たち【写真:ロイター】
カタール・ワールドカップに出場するベテラン選手たち【写真:ロイター】

【識者コラム】ベテランたちの影響力は監督以上、単なる1人の選手を超える存在に

 選手寿命が延びている。30歳台後半でもバリバリのエースという例も珍しくなくなった。カタール・ワールドカップ(W杯)ではリオネル・メッシ(アルゼンチン代表/パリ・サンジェルマン)、ルカ・モドリッチ(クロアチア代表/レアル・マドリード)、クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル代表/マンチェスター・ユナイテッド)がエースとしてプレーするはずだ。

 Jリーグでも川崎フロンターレの家長昭博が活躍している。36歳だが得点、アシストに大車輪の働き。川崎が優勝すればほぼ確実に、そうでなくても今季のMVPに選出される可能性は高いのではないか。

 かつてサッカー選手が第一線でプレーできる年齢は30歳ぐらいが限度だった。中には50歳を越えてまでプレーしたスタンレー・マシューズのような人もいたが、例外中の例外である。スーパースターの選手寿命は比較的長く、アルフレード・ディステファノ、ヨハン・クライフ、フランツ・ベッケンバウアーなど40歳近くまでプレーした選手はいたけれども、その年齢でW杯には出ていない。

 1990年イタリアW杯で活躍したカメルーンのロジェ・ミラは当時38歳だった。ただ、この時のミラはすでに引退同然の生活を送っていて、大統領が直々に呼び戻してワールドカップメンバーに入っている。試合を決める得点でカメルーンのベスト8進出に貢献しているけれども、途中出場のスーパーサブという役どころだった。

 カタール大会でプレーするベテランたちは、ミラのように時間限定ではない。メッシもモドリッチも先発で出場するはずだ。彼らは依然として抜群の技量の持ち主であり、チームに与える影響力という点では監督以上のものがある。単なる1人の選手ではなく、フィールド内外で大きな影響力を持つ存在だ。

 40歳近い大ベテランがチームの中心で、しかもそんなチームが1つや2つでないというケースは過去のワールドカップにはなかった。選手寿命の延びがもたらした新たな領域と言えるのではないか。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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