元JリーガーがNHKディレクター転身で番組作り 闘莉王“取材指令”で奮闘…「全く知らない世界」で感じた魅力とやりがい

担当した番組の放送が近づくと緊張するという中川直樹氏【写真:本人提供】
担当した番組の放送が近づくと緊張するという中川直樹氏【写真:本人提供】

さまざまな企画に参画「世の中に横たわるたくさんの問題に気付きました」

 名古屋放送局に5年勤務した後、東京・渋谷にある放送センター(本部)へ転勤。スポーツ情報番組部に所属し、「サンデースポーツ」と「サタデースポーツ」をメインに担当した。16年はリオデジャネイロ五輪、18年は平昌五輪とロシアW杯を当地で取材している。

 時事問題を深掘りする硬派番組の「NHKスペシャル」や硬軟のテーマを扱う「クローズアップ現代」でも時折、スポーツの話題を取り上げたように、東京ではスポーツ番組作りに専心する5年間を過ごした。

 20年から再び名古屋放送局に勤務すると、少しずつ取り扱うテーマや内容が変化していく。時々刻々の社会問題が増えてきたのだ。

「上司に何をやりたいのか聞かれたことが何度かありますが、テーマに関するこだわりはなく、とにかく何でもやりたいんです。いろんな発見があり、経験も積めますから」

中川直樹氏のお気に入りは昨夏放送されたNHKスペシャル「逆境 その先へ“最強”日本バドミントン」だ【写真:本人提供】
中川直樹氏のお気に入りは昨夏放送されたNHKスペシャル「逆境 その先へ“最強”日本バドミントン」だ【写真:本人提供】

 今年は中部7県版の「ナビゲーション」で“命を守る 南海トラフ地震臨時情報”や東海4県向けの「東海 ドまんなか!」で“拡大スペシャル ウクライナ避難民 起死回生狙う地方百貨店”を手掛けた。昨年は「クローズアップ現代+」で“守れる命が守れなくなってきた~医療崩壊危機の最前線~”や“健保が…病院経営が… 揺らぐ医療の土台”、「NHKスペシャル」では“検証 コロナ予算77兆円”の制作に参画した。

 担当した番組の放送が近づくと、決まって怖くなるそうだ。「公共放送という責任ある立場ですし、特に難しいテーマを扱う時は緊張します。サッカーのことしか知らなかった自分が、報道の仕事に携わる過程で世の中に横たわるたくさんの問題に気付きました。自分が全く知らなかった世界に触れ、それを伝えることにすごく魅力とやりがいを感じる」と浦和への加入会見時のような、みずみずしい言葉を発した。

 13年目の中堅社員とあり、NHKスペシャルやクローズアップ現代で興味深いテーマを考案し、興趣に富んだ番組制作を求められるようになった。8月9日に放送されたNHKスペシャル「混迷の世紀 第1回 ロシア発 エネルギーショック」では、次世代エネルギーとして期待される水素を扱ったテーマを担当した。

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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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