デュッセルドルフ田中碧、2年目好調の要因は? 本人を直撃、キーワードは「フリーダム」 監督や現地ファンも賛辞「いいねぇ!」

「もちろん慣れは少なからずある」と実感、より高いレベルでやるための鍵は?

 中盤センターの選手としてボールを失うことなく、起点を作り出し、空いているスペースへと展開し、攻撃のリズムを作り出すことは必須要素だ。それに加えて、中盤でボールを落ち着かせ、インテリジェンスの高いターンで相手守備の狙いを外し、素早いパスワークで崩しの起点を作り出せる選手がいたら、チームのチャンスメイク力は大幅にアップする。田中はデュッセルドルフでそうした存在になりつつある。

 攻撃面だけではない。いや、攻撃面以上に高く評価されているのがボール奪取プロセスだ。デュッセルドルフのダニエル・トゥーン監督は「ボール奪取へのプロセスをポジティブに見ている」と褒めていたが、パダーボルン戦では何度も田中のところでボールを奪い取っていた。

 味方がボールロストした直後に相手にアプローチをしてボールを奪取し、ドリブルで攻め上がろうとする相手に対して身体を上手く寄せて奪い取ったり、背後から鋭い出足でチャージをしたりと何度も激しいデュエルでボールを制圧していくのだ。時にファール判定もあるが、大きなジェスチャーで怒りを露わにするのもいい。

 田中がボールを奪取するたびに、記者席近くのファンからは「いいねぇ!」「素晴らしいじゃないか!」「あそこは突破できないな」と賛辞の声がどんどん上がってくる。

 周囲からの高い評価に関して田中は冷静に自分を見つめている。

「そんな別に変わらないですよ。なんかよく言われるんですけど、取れる時は取れるし、取れない時は取れないんで、僕も。今は取れてるだけで。もちろん外国人に対する慣れっていうのは少なからずあると思うし、それを成長というのであれば、成長かもしれない。僕自身は常に自分と向き合いながらやっているだけなので、自分のできることっていうのを増やして、その回数を上げれば、より高いレベルでやれるんじゃないかなと思います」

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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