横浜F・マリノスはなぜ“戦力充実化”できたのか 前田大然、宮市亮の飛躍から見える「中・長期視点」補強の結実

日本代表にも選出されたFW宮市亮【写真:徳原隆元】
日本代表にも選出されたFW宮市亮【写真:徳原隆元】

ライバルチームと比較しても横浜FMの充実ぶりは一歩リードしている感

 話を今季に戻すと、宮市はウイングの貴重な駒として持ち前のスピードを生かし、ここまで3得点。爆発的なスピードと膝下の振りが速いシュートは日本人離れしている。その活躍が認められて10年ぶりの日本代表復帰を果たしたように、プレーヤーとして再び脂が乗り始めているタイミングだ。

 左利きの角田はビルドアップでボールを運ぶことに長けるセンターバック。FWディエゴ・オリヴェイラ(FC東京)やFWパトリック(ガンバ大阪)と互角に渡り合ったように力強さも兼ね備えている。今季から加入したDFエドゥアルドが負傷離脱した穴を補って余りある活躍を見せたことは記憶に新しい。

 ハイラインでハイテンポ、さらにはハイインテンシティ。横浜FMを語るうえで切っても切り離せない3つの“ハイ”は1試合限定では意味がなく、維持と継続がなければ長いリーグ戦で上位は争えない。苦しんだ序盤戦は苦しい夏場を戦う礎となり、チームに安定感をもたらしている。

 鹿島や川崎フロンターレとタイトルを争うことが予想されるが、ライバルチームと比較しても横浜FMの充実ぶりは一歩リードしている感がある。不用意な失点を重ねるシーンや、ミスから大量失点を喫した試合は、今は昔のこと。最もチャレンジングなスタイルを貫いているにもかかわらず、最も安定したパフォーマンスを見せているのは良い意味で驚きだ。

 7月下旬から8月上旬にかけての鹿島戦と川崎戦がタイトル獲得へ向けたヤマ場なのは間違いない。先々を見据えた上でこの2チームとの直接対決だけは線ではなく点で考える価値がありそうで、1試合における最大出力の値を高めるべきだろう。

 充実期を収穫期に変えられるか。現状で大きな死角は見当たらない。

(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)



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藤井雅彦

ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。

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