後半戦の巻き返しなるか ”残留争い”の渦中にあるJ1リーグ下位6チームの現状と課題

最下位・神戸は目先の結果に捉われない先を見据えた戦いを

■17位:湘南ベルマーレ(3勝4分9敗/13得点23失点)

 現在の”ボトム6”では最もチームとしてのバランスが取れているように見える。いい戦いをしながらも勝ち切れない、勝ち点3のゲームを3にできないのは湘南の課題だが、序盤戦はそれが顕著に出てしまった。大きな要因は前線の点取り屋を確立できていなかったことだ。

 しかし、ここに来てFW町野修斗が”領域展開”しており、神戸戦(2-1)、川崎フロンターレ戦(4-0)と立て続けに2得点。一躍エースに名乗りをあげた。フィニッシュに自信が付くと、そこにどう持って行くかチームとして明確になってくる。いまだ1得点の瀬川祐輔や大橋祐紀、ウェリントンらほかのFW陣にも相乗効果が出てくるはずだ。もう1人、ルヴァンカップで結果を出しているFW池田昌生がリーグ戦でスタメンのチャンスをもらい、それに応える形で中盤のアクセント役になっている。

 IMD前のセレッソ大阪戦は前半の早い時間帯と後半アディショナルタイムに失点して0-2の敗戦を喫したが、流れは悪くなかった。もともとボールに関わる強度は上位に迫るものがあるだけに、生命線であるハードワークを夏場にどう維持しながら、際の勝負をものにしていけるか。また若手の勢いも大事だが、苦しい時にMF米本拓司、MF永木亮太など経験豊富な選手を獲得した意味が出てくると残留、さらに上まで行く足掛かりになりそうだ。

■18位:ヴィッセル神戸(2勝5分9敗/14得点22失点)

 開幕前は優勝候補に挙げる声もあったが、筆者はそこには疑問があった。やはり三浦淳宏前監督は優れたセレクターではあったが、戦術的な設計が明確ではなく、攻守の端々で出てくるラグを選手の能力や経験値で埋めていた部分は昨年から見られたからだ。

 その要だったDFトーマス・フェルマーレンが現役引退、MFアンドレス・イニエスタが長期欠場となるとパフォーマンスの落下は否めず、またMFセルジ・サンペールの舵取りに頼るところも大きいので、彼の欠場も大きく響いてしまう。そうしたところを埋めるためにDF槙野智章やMF扇原貴宏を獲得したのだろうが、戦術プランが明確ではない新天地で明確なアイデンティティーを出すのは難しい。

 ただ、そうは言ってもリーグ戦12試合まで未勝利が続き、最下位に低迷するとは予想できなかった。FW大迫勇也の不調、FW武藤嘉紀の離脱など、ここまで主力に想定外のことがあると苦しい。ACL直前にミゲル・アンヘル・ロティーナ新監督が引き継いだが、周知の通り戦術を緻密に組み上げていくタイプの監督で、応急処置には向いていない。

 それでもチームに戦術プランができることはポジティブな要素であり、チームを作りながら結果も出して行くという難易度の高いミッションを監督スタッフと選手が共有して、一丸になっていけばシーズン最後まで残留争いをする戦力ではない。ただ、結果がどうなるにしても1年足らずで監督を交代するようなことはしないで、2年、3年で完成させて行くビジョンをクラブで描いてほしい。

 神戸のような規模のクラブがJ2で戦うというのは大変なニュースになってしまうが、そこから返り咲いて翌年J1でタイトル争いに加わったり、さらにタイトル獲得を成し遂げた事例はいくつもある。もちろん今シーズンしっかり残留を決めて、来年の飛躍に持っていければベストだが、そこも目先の結果でジタバタしないプランニングが終盤戦での浮上につながると見ている。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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