後半戦の巻き返しなるか ”残留争い”の渦中にあるJ1リーグ下位6チームの現状と課題

「最も先が見えない」清水は、ゼ・リカルド 監督招聘で挽回を期す

■15位:ジュビロ磐田(3勝6分7敗/18得点25失点)

 昨シーズンまで甲府を率いていた伊藤彰監督の1年目、しかも昇格シーズンということで、前半戦から簡単に行くわけがないと考えれば、少し甘く評価してしまいがちだが、主力の平均年齢などを考えても、このまま経験を積んでいけばチームが上向きになっていくというポジティブな見方は非常に危険だと考えている。

 戦術的にも守備時は5-4-1、攻撃時は3-4-2-1をベースとしながら可変性の高いポゼッションで相手ゴールに迫るスタイルが、J1のステージで通用していない部分が多く見られることも確かだ。ただ、伊藤監督のポリシーを考えても、残留のために明確な堅守速攻に舵を切ることはおそらくないだろうし、そうするぐらいなら監督交代に踏み切るべきだろう。

 希望の種としてはルヴァンカップで起用してきた若手選手が徐々に場慣れして、リーグ戦でも当初の主力とあまり差のないパフォーマンスを出せるようになってきたこと。中盤のMF鹿沼直生などは象徴的な1人だ。ただ、当初の主力を脅かすインパクトを出しているのは外国人FWのファビアン・ゴンザレスとリカルド・グラッサぐらい。現在の若手の成長速度では、チームを一気に浮上させる原動力にはなり難い。

 特に基本的な戦い方を変えないなかで、システムや戦術のバリエーションを効果的に使いこなせるチームになって行くには、さらなる若手の奮起に期待するしかないが、彼らと別にJ1企画でのFWやセンターバックの補強が必要かもしれない。

■16位:清水エスパルス(2勝7分7敗/15得点24失点)

 最も先が見えないチームだ。IMD直前に3連敗を喫して平岡宏章監督が契約解除となり、篠田善之ヘッドコーチが暫定監督となった。ここまでの戦いを筆者が観ていて感じたのは戦術的な発展性の乏しさだ。

 ソリッドな4-4-2は相手にいい立ち位置を取られるとプレスがハマらず、常に後手後手の守備を強いれてしまう。ボールを持つ側になっても、守備のバランスが意識にあるのか、オフの選手が相手の嫌がるところにポジションを取っていけず、ボールホルダーの選択肢が限定される。

 そうなるとMF鈴木唯人の推進力やFWサンタナのキープ力に対する依存度が強くなり、彼らに合わせてうしろが無理に押し上げると、ボールを失った時に裏返しのカウンターを受けてしまう。要するに悪循環だ。ジュビロ磐田との”静岡ダービー”のように両チームのかみ合わせでハマる試合もあるが、多くの試合で後手に回り、前線やサイドハーフの負担が無駄に大きくなってしまっていた。

 いかなる監督が来ようと、シーズン途中からボールを握って相手を圧倒するようなサッカーはできないだろう。そうなると堅守速攻のベースに、攻撃で相手のディフェンスを上回る戦術プランを選手たちに与えられる監督ということになる。

 ブラジル人のゼ・リカルド監督が就任したが、いわゆる欧州ベースの外国人監督が主流になっているなかで、この人事がどう出るのか。第1のタスクは残留圏に浮上させることだが、それで万々歳ではなく、しっかりと軸を持ったチーム作りが期待される。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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