J1序盤戦終了、今季の“優勝”争いはどうなる? 鹿島、川崎、横浜FMに“ダークホース”のチーム力分析

上位に位置する鹿島、柏、川崎、横浜FM【写真:小林 靖 & Getty Images】
上位に位置する鹿島、柏、川崎、横浜FM【写真:小林 靖 & Getty Images】

【識者コラム】今季は暫定首位の鹿島、優勝候補の川崎に横浜FMが高パフォーマンス

 Jリーグはゴールデンウィークの集中開催を1つの節目として序盤戦を終えた。そのなかでJ1はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の関係で消化試合にややバラ付きがあるが、現段階での分析しておきたい。

 鹿島アントラーズが暫定で首位を走っている。理由は大きく2つ。1つはレネ・ヴァイラー監督の合流までチームを預かった岩政大樹コーチがレネ監督の意図を汲みながら、基本的に現場の指導を一任されて、対戦相手の分析に応じたオーガナイズで勝ち点を積み重ねたこと。もう1つはレネ監督が岩政コーチからうまく引き継いで、継続するところと変えるところを整理しながらチームを良い方向に導いていることだ。

 筆者は、今年はチームのベースを作るシーズンで、結果にフォーカスするのは来シーズンというスタンスで鹿島を見ているが、同時にいかなる状況でもタイトル獲得にこだわって、結果を求めていくのが鹿島ということも理解している。レネ監督は自分の考えを押し付けるのではなく、鹿島の持つベースや選手の個性を尊重しながらアップデートさせていくタイプの監督である様だ。基本的にはゴールに矢印を引く縦志向の強いスタイルだが、そこに執着している訳ではない。対戦相手にとって事前のスカウティングは大事だが、あまり決めてかかりすぎると痛い目を見るだろう。

 開幕前で優勝候補にあがっていたのは2連覇中の川崎フロンターレを筆頭に横浜F・マリノス、タレント集団のヴィッセル神戸、リカルド ・ロドリゲス監督が2年目の浦和レッズといったところだ。川崎は過去2年より内容的に苦しみながら、なんとか勝ち点をものにする試合が多く、マリノスはパフォーマンスと結果にやや波がある。そういう意味で、ライバルにも付け入る隙はあるが、両者ともにACLをセントラル開催で戦ったことで、チームとしてタフになっている部分も見受けられる。

 浦和は開幕前に新型コロナウイルスの感染者が続出した影響か、出足につまずいてしまったところはあったが、やはりACLを通じてアレックス・シャルクなど新戦力を含めた戦力のブラッシュアップが図れたこと、引いた相手を崩すシチュエーションがJリーグよりも多く、そこにフォーカスして取り組めたことは帰国後もプラスに働くはず。ただ、右サイドバックの酒井宏樹とセンターバックの犬飼智也が長期の負傷。DF大畑歩夢やFWキャスパー・ユンカーはすでに練習復帰している様だが、戦力が揃いきらないジレンマは続いている。

 優勝を明確な目標に掲げる浦和は徐々にチームがベースアップしており、後半戦は着実に上がってくると予想している。問題はここまで取りきれなかった勝ち点のダメージだ。1試合消化の多い鹿島と14、2位の川崎とも12の差が付いており、上位チームの安定感を見ると、そうそう勝ち点を落としてくれる見込みは高くない。それでも1つ1つの勝利を積み重ねて詰めていくしかないだろう。ただ、浦和はアジア制覇を伝統的に目指しているクラブでもある。リーグ戦にフォーカスしながら、8月に行われるACLの決勝ラウンドでの躍進も注目される。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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