ファンとの絆が活力に 長谷部誠も認めるフランクフルトの守備の要が完全復活できた訳

長谷部もヒンターエッガーを評価「ブンデスのトッププレーヤー」

 ファンはずっとヒンターエッガーへ声援を送り続けた。またあの勇敢で、勇猛で、苦しい時こそチームを助けてくれるパフォーマンスが戻ってくると信じて。そして、本当に最高レベルのヒンターエッガーが戻ってきた。ここ最近はどんな試合でも、3バックのセンターで相手の攻撃をことごとく跳ね返している。完全に調子を取り戻した。

 さまざまな要因があるなかに、長谷部誠の貢献もある。ヒンターエッガーの代わりで安定感のあるプレーを見せる長谷部がいたからこそ、グラスナー監督は長谷部を起用し、ヒンターエッガーは練習や調整に時間を費やし、自分の調子を取り戻すことだけに集中することができた。

「マルティンのことは知ってるでしょ? いい選手だし、クオリティーをピッチで出せたらブンデスリーガのトッププレーヤー。ヘディングにも強いし、ゴールも決められる。まだ彼のメンタリティーやパーソナリティーを成長させることができる。彼がまたトップパフォーマンスを出してくれるのを期待してるよ」

 これは、契約延長後の記者会見でドイツ人記者にヒンターエッガーについて聞かれた時の長谷部の答えだ。愛情たっぷり。そんな周囲のサポートがあったからこそ、この復活劇は現実となったのだ。

 そして、最後の一押しをしたのは間違いなくファンだろう。コロナ対策が緩和され、少しずつファンがスタジアムへ戻ってきた。ファンの声援がヒンターエッガーをさらに強靭にする。決勝トーナメント1回戦のベティスとの第2戦ではアディショナルタイムに値千金となる決勝ゴールを決めた。身体全体で押し込んだような気迫のゴールだった。試合後、ファンの前でヒンターエッガーが泣いた。喜びの涙だ。苦しさも、やるせなさも、憤りも、すべてを乗り越えて、ヒンターエッガーは戻ってきたのだ。

 グラスナー監督はベティス戦後、「彼が今またこうしてスポットライトを浴びることができたことを本当に嬉しく思う。困難な数か月があったから。感動的なことだ。サッカーだからこそだ。マルティンは本当に、自分が持つ力のすべてを出し切ってくれた」と称賛に称賛を重ねて賛辞を尽くしたのが印象的だった。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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