ファンとの絆が活力に 長谷部誠も認めるフランクフルトの守備の要が完全復活できた訳
【ドイツ発コラム】フランクフルトDFマルティン・ヒンターヘッガー復活秘話
UEFAヨーロッパリーグ(EL)は、フランクフルトファンにとってこれ以上ないお祭りだ。心の底からヨーロッパの舞台で戦えることを喜んでいる。
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準々決勝の相手が世界屈指の名門であるFCバルセロナに決まり、しかもこの試合では新型コロナウイルス対策がだいぶ緩和され、4万8000人フルでの収容が可能になったことで、チケットを巡る争奪戦が過熱。申し込みは30万件以上。転売サイトでの取引額はチケット1枚が2000ユーロ(約27万円)以上にもなったりしていた。
オリバー・グラスナー監督は、「フランクフルト、クラブ、そしてチームはこの試合にふさわしいことをしてきた。そして我々の道がここで終わりではないことを祈っている」と試合前に話していたが、その鍵を握る選手の1人がオーストリア代表CBマルティン・ヒンターエッガーだろう。
ヒンターエッガーほど、フランクフルトファンと密接な関係を築いている選手はいない。フランクフルトのシンボルとされる選手だ。
そんな彼が、今季フランクフルトに来て以来の不調に陥っていた。ボールを奪えない、ポジショニングがずれる、ボールを持つとミス。気合いを入れてやろうとすればするほど空回り。ヒンターエッガーのミスで勝ち点を落とした試合が続いた時期もあった。試合後の戦評では苦い数字が並んでいく。
そんな苦しい時に、自身のインスタグラムで正直な心境を打ち明けた。
「アドラー(鷲をシンボルとするフランクフルトの一員)であるということ。それは僕らは同じ家族の一員であり、ともに立っていることを意味する。そう、うまくいかない時でも。
今、僕のプレーパフォーマンスにがっかりしている人がいるのは知っている。正直に言って僕自身もそうだ。ずっと何とかしようとしてきている。
いくつもの理由があると思う。昨年負った足首や肩の怪我。今は恥骨にも問題がある。それに間違った決断をしてしまうこと。そして特にスタジアムにファンのみんながいないということ。
言い訳をしてはならないし、これはそれではない。でも、みんながいないと、ヒンティ(ヒンターエッガーの愛称)は半分のヒンティでしかないんだ。
これからも全力を尽くす。約束する。僕は、僕達はやり遂げれるって。僕らはだってアドラーなんだから」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。