【J1全クラブ最新布陣】新生・鹿島が“ハイレベルな前線”構築 湘南の中盤は上位クラスに匹敵か

永木、米本加入の湘南、対戦相手や状況によっては2ボランチの採用も

■湘南ベルマーレ/昨季成績
J1リーグ:16位(勝ち点37/7勝16分15敗)
ルヴァン杯:プレーオフステージ敗退
天皇杯:4回戦敗退

【今オフ補強動向】
 FW瀬川祐輔(←柏レイソル)、MF米本拓司(←名古屋グランパス)というJリーグでの実績十分の選手たちが加わり、かつてキャプテンもつとめたMF永木亮太が鹿島アントラーズから7年ぶりに復帰。彼ら3人とスイス1部シオンから復帰のFW若月大和、福島ユナイテッドFCで“武者修行”してきたDF福島隼斗を除くと、高卒と大卒、アカデミーからの昇格組だ。

 米本と永木が加わった中盤の選手層は上位にも見劣りしない。確固たるベースはあるところに高卒のMF鈴木淳之介(←帝京可児高)と昇格組のMF原直生が新たなバリエーションを加えることができるか。3-1-4-2のアンカーにはMF田中聡というスペシャルなタレントを擁するが、運動量とバランスワークに優れる永木やボール奪取力の高い米本の特長を考えた時に、対戦相手や状況によっては2ボランチの採用もあるかもしれない。

 前線は瀬川をはじめFW根本凌(←鹿屋体育大)、若月に高校選手権でゴールを量産したFW鈴木章斗(←阪南大高)をどう加えていくか。特に若月は抜群のスピードで裏抜けを狙えるストライカーで、性格的にも競争を活性化できるタレントだ。

 3バックがベースとなる最終ラインは安定した従来の主力組にレンタルバックの福島や新人選手たちが挑んでいく構図だ。昇格組のDF石井大生はこれまでの湘南にいなかった大型センターバックだ。DF蓑田広大(←法政大)も即戦力だが、もともと選手層は薄くないポジションだけに、新人選手は早い段階からアピールしていく必要があるかもしれない。

■主な獲得選手
【Pos./選手名/前所属】
FW 瀬川祐輔 柏レイソル
FW 若月大和 FCシオン(スイス)
MF 米本拓司 名古屋グランパス※レンタル
MF 永木亮太 鹿島アントラーズ
DF 蓑田広大 法政大

■主な放出選手
【Pos./選手名/移籍先】
FW 石原直樹 未定
MF 齊藤未月 ガンバ大阪※レンタル
MF 名古新太郎 鹿島アントラーズ
MF 三幸秀稔 大宮アルディージャ
GK 秋元陽太 引退

【22年シーズン陣容の注目ポイント】
 昨年は最終節まで残留争いを強いられた。経験豊富な米本や永木が加わったと言っても、常識的に考えたらJ1残留が現実的な目標だろう。それでも、山口智監督はリーグ5位という明確な目標を掲げている。コロナ禍で完全非公開となったキャンプにおいて、個人の力に頼らず、コンビネーションを駆使する攻撃を構築してきたようだ。

 最後にゴールネットを揺らすのは個の力だ。スイスのシオンから復帰の若月や大学屈指のストライカーとして鳴らした根本が二桁ゴールを宣言すれば、瀬川も「キャリアハイへ到達したい」と意気込む。重鎮FWウェリントンをはじめ、経験豊富なFWタリク、シュートセンスの高いFW町野修斗、抜け出しに定評のあるFW大橋祐紀などポテンシャルを秘めた戦力は揃うが、現時点では期待値にすぎない。それでも、複数の選手が二桁、もしくは、そこへ近い得点をマークできるようであれば、守備のベースはしっかりしているチームだけにジャンプアップも可能だろう。

 もう1つの関心事はGK谷晃生がカタール・ワールドカップ(W杯)の最終メンバーに入れるかどうか。国内外のライバルがひしめくが、チームの躍進を支えた先に栄光が待っているはずだ。

河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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