「監督は2つのバッグを用意しておくもの」 サッカー界を取り巻く“去り際”のスピード感

かつてベンフィカなどで監督を務めたベラ・グッドマン【写真:Getty Images】
かつてベンフィカなどで監督を務めたベラ・グッドマン【写真:Getty Images】

【識者コラム】ベラ・グッドマンが説いた3年目が「最も難しい」説

 サッカー界は人の流れがダイナミックだ。特にリーグ戦が終了したこの時期は移籍が最も活発化している。毎日、誰それが移籍したというニュースが流れてくる。シーズン中の移籍交渉は原則禁止されているので、特定の期間に集中的に人が移動していく特殊な業界ということもあるかもしれない。

 クラブの関係者によれば、この時期がやはり一番忙しいそうだ。所属選手の契約交渉があり、並行して新戦力の獲得交渉もある。選手たちはオフで練習場は閑散としているが、関係者は大忙しだ。

 1960年代にベンフィカをチャンピオンズカップ(現UEFAチャンピオンズリーグ)連覇に導いたベラ・グットマンという名監督がいた。亡くなった後、「グットマンのバッグ」がオークションにかけられていた。

「監督は2つのバッグを用意しておくものだ。1つには、これまでの経験と知識が入っている。もう1つには日用品を入れておく。いつでもクラブを去れるように」

 グットマンのいわゆる名言だが、バッグがオークションに出たのはこの言葉の影響かもしれない。

 1932年のハコア・ウィーンから始まって、1974年のFCポルトまで20クラブ以上を渡り歩いた。ほとんど1シーズンか2シーズン限りで、「3シーズン目が最も難しい」と本人も言っていた。

 ヨーロッパを制したベンフィカでも3シーズン。行く先々でタイトルを獲り、ブラジルのサンパウロでも州選手権を獲っている。ACミランを率いていた時は首位だったのに解任され、「犯罪者でもホモセクシャルでもないが解任された。さようなら」と、記者たちに捨てセリフを残して去ったのは有名なエピソードだ。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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